住宅取得等資金の贈与税の非課税制度、知っていますか?(1)

住宅取得等資金の贈与税の非課税制度は、ご存じでしょうか?

平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など(直系尊属)からの贈与によって、居住用の自宅の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」とします。)の支払いのための金銭(以下「住宅取得等資金」とします。)を取得した場合に、一定の要件を満たせば、一定の非課税限度額まで贈与税が非課税となる制度です。

 

詳細は以下の国税庁のHPでご確認ください。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/pdf/jutaku27-310630.pdf

 

「No.4508直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4508.htm

 

さて、この非課税制度について特に私が注目しているポイントをあげていきます。

 

一つ目は、この非課税制度を使った後さらに、通常の暦年課税の場合には贈与税の基礎控除 (110万円)を、また相続時精算課税制度を利用している場合には特別控除(2500 万円)をすることができる点です。

 

「消費税8%」の新築等の場合、現在であれば、通常の暦年課税においては、最大1200万円(省エネ等住宅の場合)+110万円(基礎控除)=1310万円まで贈与税が非課税となり、相続時精算課税制度を利用する場合には、最大1200万円(省エネ等住宅の場合)+2500万円(特別控除)=3700万円まで贈与税が非課税となります。

 

「消費税10%」の新築等の場合、通常の暦年課税においては、最大3000万円(省エネ等住宅の場合)+110万円(基礎控除)=3110万円まで贈与税が非課税となり、相続時精算課税制度を利用する場合には、最大3000万円(省エネ等住宅の場合)+2500万円(特別控除)=5500万円まで贈与税が非課税となります。

 

なお、相続時精算課税には特例があり、平成33年12月31日までに、父母又は祖父母から、自分の居住用の自宅の住宅取得等資金について贈与を受けた場合で、一定の要件を満たせば、贈与者がその贈与年の1月1日に60歳未満である場合であっても相続時精算課税を選択することができることになっています(通常の相続時精算課税制度では、贈与年の1月1日において贈与者が60歳以上であることが必要です。)。

 「No.4503相続時精算課税選択の特例」

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4503.htm

 

次回に続きます。

税務署に対する再調査の請求は省いて直接審査請求をした方がよいのか否か

平成28年4月1日以降にされた税務署長の納税者に対する処分に関する不服申立てについて、以下の内容の国税通則法改正が同日施行されています(実際には色々な改正がされていますが、この記事に必要な部分のみを抜粋しています)。

 

・以前の税務署に対する「異議申立て」が「再調査の請求」という名称になった。

・納税者は不服申立てを国税不服審判所長に対する審査請求から始めても良いこととなり(直接審査請求)、処分をした税務所長に対する不服申立て(再調査の請求)をしなくても良いことになった。

 

※以前は、税務署長の納税者に対する処分に関して取消などを求める不服申立てについては、原則的には税務所長に対する異議申立(今の再調査の請求)から始めなければならない制度(異議申立前置主義、※例外的な場合に直接審査請求が認められていた。)がとられていた。

 

さて、この改正の影響で、国税庁のHP「平成28年度における再調査の請求の概要」、「平成28年度における審査請求の概要」によれば、平成28年度における再調査の請求の件数は前年度と比べて47.5%もの減少となっており、他方で、国税不服審判所への審査請求の件数をみると、平成28年度は前年度より18.6%の増加となっております。

しかも、平成27年度は、審査請求事件のうち「直審」(直接審査請求された事件)が368件、うち「二審」(異議申立てまたは再調査の請求を経た事件)が1730件だったのに対し、平成28年度は、「直審」が1473件と前年の約4倍に達し、「二審」が1015件と減少した結果、「直審」は審査請求事件全体の約17.5%から59.2%にまで上昇していることが分かります。

この点からすると、上記の改正の影響が大きく出ていることが分かります。

 

それでは、税務署に対する再調査の請求は省略した方がよいのでしょうか。

 

実は、個人的な方針としては、むしろ逆で、改正後も再調査の請求をするのを基本としています。

純粋な法令解釈のみが争いとなっており、処分をした税務署長に対して見直しを求めても、結論が変わるわけがないというような場合には直接審査請求をすると思いますが、それ以外の場合は再調査の請求からスタートするのを原則とする、ということになります。

 

さて、このように考える理由は色々ありますが、大雑把にいえば、審査請求までに十分な準備期間がほしいこと、税務署長から議決書をもらうことで、相手方となる税務署・国の処分をした詳しい理由、論拠や証拠を審査請求前に予め知って対策を練ることができること、再調査の請求は結論が出るまでに通常それほど時間がかからないことなどです。

 

税務署の処分に不満があって、再調査の請求や審査請求をするかどうか悩んでいる方は、ぜひ当事務所にご相談ください!

意外と知らない!扶養義務者間での生活費・教育費の贈与は要件を満たせば贈与税非課税

平成25年4月から始まった教育資金贈与の非課税制度をご存じの方は、多いと思います。

この教育資金贈与の非課税制度は、平成31年3月31日までの間に、30歳未満の受贈者が祖父母などの直系尊属から贈与等によって受け取った金銭を、一定の教育資金に充てるため、定められた手続きにしたがって教育資金口座の開設等をした場合には、1,500万円までは、一定の手続きを取ることによって贈与税が非課税となる制度です。

詳細は、国税庁のページをご覧ください。

教育資金の内容に制限がある他、手続きが色々と必要になります。

 

ところで皆さん、そもそもこの非課税制度の導入以前から、「扶養義務者間で生活費・教育費を目的として贈与された財産のうち、通常必要と認められるもの」については、相続税法21条の3第1項2号によって贈与税の非課税財産とされていることをご存じでしょうか。

 

【相続税法】

第21条の3 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。

二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの

 

ここでいう扶養義務者とは、配偶者と民法877条で定める扶養義務者たる親族をさします(相続税法1条2の1号)。民法877条では、直系血族及び兄弟姉妹、3親等内の親族で家庭裁判所の審判を受けた者を互いに扶養する義務がある者と定めており、相続税法基本通達1の2-1では「三親等内の親族で生計を一にする者」も該当することとしています。

 

なお、非課税の贈与財産は、基礎控除額の110万円に含める必要もありませんし、上記の教育資金贈与の非課税制度のような厳格な手続きの定めもありません。

 

ただし、国税庁では、相続税法基本通達に以下のような内容の定めを置いています。

 

・21の3-3 「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用をいい、治療費、養育費その他これらに準ずるものを含む。

 

・21の3-4 「教育費」とは、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限らない。

 

・21の3-5 生贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいう。生活費等の名義で取得した財産でも、これを預貯金した場合や、株式の買入代金や家屋の買入代金に充てたような場合には、「通常必要と認められるもの」以外のものとする。

 

・21の3-6 「通常必要と認められるもの」は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいう。

 

・21の3-7 財産の果実だけを生活費又は教育費に充てるために財産の名義変更があったような場合には、その名義変更の時にその利益を受ける者が当該財産を贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(平15課資2-1改正)

 

これらの定めのうち、特に21の3-5については要注意です。

法律で定められている「通常必要と認められるもの」という文言を必要以上に厳格に解釈しているように思われ、もしこの通達の定めを機械的に適用すると、例えば、祖父母からA口座に振り込まれた教育費等をそのまま放置し(あるいは別の物の購入代金に充て)、実際にはB口座から教育費等を支出していた場合、贈与税が課税されてしまうおそれがあることになります。全体としては祖父母が教育費を支出したのと同じことなのですが・・・。

この点について、税務署から課税されたり、無用な争いが生じたりしないようにするためには、必要な都度、必要な額を口座に祖父母などから振り込んでもらい、その口座から直接教育費等の支払いに充てる(口座から引き落とすか、口座から振り込む)のが最も安全ということになります。

 

扶養義務者間の生活費・教育費目的での贈与財産について、要件を満たせば贈与税が非課税になることを知らなかった方も多いのではないかと思います。

例えば、私立の学費や大学の学費は毎年ある程度の額になりますので、祖父母から孫に毎年学費を贈与をすることで、祖父母の相続税対策にもなる(兼ねられる)というようなケースでは、積極的に活用を検討してみるとよいかもしれません。

気になった方は専門家に相談してみられてはいかがでしょうか。

続きを読む

使用人兼務役員制度のメリットとは

前々回、使用人兼役員に関する記事を書きましたが、改めて使用人兼務役員制度のメリットや注意点について書きました。

 

通常、法人の役員給与は、定期同額給与(一定額の月給など)、事前確定届出給与(事前に税務署に届け出たボーナスなど)などでなければ、支払っても法人の損金になりません。

 

ですが、「使用人兼務役員」は、役員であっても使用人としての側面があるため、使用人分給与の支給額を期中に増減したり、事前に届け出をせずに使用人としての賞与を支払っても、法人の損金に算入することができます。

 

ただし、使用人分と役員分は明確に区分し、書面化しておく必要があります。

また、使用人分給与は他の使用人との給料のバランスにも配慮する必要があります。

さらに、使用人分の賞与は他の従業員と同時期にしなくてはなりません。

以上の点に注意して下さい。

 

その他にも、「使用人兼務役員」は、役員なのに雇用保険や中退共に加入できることがメリットとしてあげられます。

 

もっとも、法令上、代表取締役副社長、専務、常務その他これらに準ずる役員や、業務執行社員などは使用人兼務役員にはなれないこと(※1)にはご注意下さい。
(※1)No.5205 役員のうち使用人兼務役員になれない人

 

以上のように、使用人兼務役員制度にはメリットがあるので、社会保険の手続きや税務上の要件に注意しながら、有効活用してみられてはいかがでしょうか。

続きを読む

被相続人が固定資産税の数倍の金額を支払っていても使用貸借であるとした裁決

今回は、平成29年1月17日裁決の紹介です。

この裁決は、土地上に建物を有していた被相続人が、その土地の所有者に地代として支払っていた金銭(以下「本件金員」とします。)の額が、その土地の固定資産税等年税額を超えていたものの、被相続人がこの土地上に借地権を有していたとは認めることはできないとして、税務署長の処分を全部取り消したという納税者完全勝訴の裁決です。

 

審判所は、以下のような判断をしました。

・被相続人が昭和56年に本件土地の使用収益を開始した当時は、使用貸借契約に基づくものであったと認められ、平成2年に請求人が本件土地を相続により取得した後、被相続人から請求人に対する本件金員の支払いが開始されたのが平成6年であるから、請求人は平成2年に被相続人の土地に関する使用貸借契約の貸主の地位を承継したものといえる

・本件金員の支払開始に当たり、請求人と被相続人との間で契約書が作成されたなどの事情は見当たらず、証拠を見ても本件金員の支払開始の経緯、動機、本件金員の算定根拠が明らかではないこと、被相続人と請求人は親子であり、本件金員の支払が開始された当時、請求人が未成年者であったことを併せ考慮すると、本件金員の支払が開始されたことをもって、賃貸借契約に変更されたとみることはできない

・本件相続開始時においては、本件金員の年額が、本件土地の固定資産税等年税額の約〇倍であったものの、このような事情のみでは、本件金員が、本件土地の使用収益の対価であると認めるに足りず、被相続人による本件土地の使用収益は使用貸借契約に基づくものであったと認めるのが相当であり、被相続人が本件土地上に借地権を有していたとは認めることはできない。

 

 

さて、元国税審判官の弁護士としては、納税者勝訴事案が増えることは良いことだと思っていますが、本件では、審判所はなかなか思い切った判断をしたように思います。

たしかに、金銭の支払いがされていても土地使用の対価とまで認められなければ、有償の賃貸借契約ではなく無償の使用貸借契約であるというのが法律論なのですが、本件では固定資産税年額の数倍が支払われていたわけですので、なかなか難しい判断だったのではないかなと思います。

過去に遡った事実認定や法律論を重視したところをみると、弁護士が国税審判官(任期付公務員)として関わった事案なのかな?などと憶測しました。

 

いずれにせよ、税務署長(国)はこの裁決を不服として裁判を起こすことができないため、本件はこれで確定となります。

士業法人の社員を使用人兼務役員として損金処理をすると否認されるかもしれません

「使用人兼務役員」は、役員であっても使用人としての側面があるため、使用人給与の支給額を期中に増減したり、届け出をせずに使用人としての賞与を支払っても、法人の損金に算入されるため、使用人兼務役員の制度は法人にとって税務上のメリットがある便利なものといえます。

 

最近では、税理士法人、弁護士法人、司法書士法人など多くの士業で法人化ができるようになっていますが、このような士業法人の社員(一般の会社でいう役員に相当します。)の全部又は一部について、「使用人兼務役員」に該当するとして、その報酬の一部を使用人分給与として損金処理すると、税務署から否認されるおそれがあります。

 

今回ご紹介する東京地方裁判所の平成29年1月18日判決は、この点に関する判決です。

 

この判決の事案は、特許業務法人である原告が、社員3名に支給した給与のうち歩合給について、税務署長から、社員らが役員に該当し、かつ、「使用人としての職務を有する役員」(以下「使用人兼務役員」)に該当せず、また歩合給は法人税法第34条1項各号の給与のいずれにも該当しないから、損金の額に算入できないとして法人税の各更正処分等を受けたため、処分の取消しを求めて争っていたものでした。

 

裁判所は、概ね以下のような判断をしました。

 

・弁理士法によれば、特許業務法人の社員は、全ての社員が業務執行をする権利を有し、義務を負うとされ、また、各社員は連帯してその弁済の責めに任ずるとされることや、業務執行の対象には経営に係る業務を含むことから、本件社員らは、具体的な職務の内容にかかわらず、役員に該当する。

 

・業務執行役員と特許業務法人との関係には民法の委任の規定が準用され、両者は一般には雇用契約等に基づく使用人と事業主との関係に立つものではないから、役員が従事する具体的な職務の中に使用人である弁理士が行う職務と同種の職務が含まれている場合であっても、それは使用人としての立場で従事するものではないと一般的・類型的に評価し得るものであり、特許業務法人の社員は、一般には使用人兼務役員に該当せず、本件社員らは使用人兼務役員に該当しない。

 

裁判所は以上のような判断をしましたが、そもそも、一般の会社でも、法令上、代表取締役副社長、専務、常務その他これらに準ずる役員や、業務執行社員などは使用人兼務役員にはなれないこと(※1)や、このような士業法人における社員の権利・責任の大きさなどからすると、この結論はやむを得ないといえるでしょう。

 (※1)「No.5205 役員のうち使用人兼務役員になれない人

 

また、国税庁は以前から、税理士法人の社員について、使用人兼務役員への該当性を全面的に否定しています(※2)。

(※2)「税理士法人の社員に係る使用人兼務役員への該当性

 このなかで、国税庁は、税理士法人においては、「①社員はすべて業務を執行する権利を有し、義務を負うとされており、この社員の業務を執行する権限は、定款によっても制限することはできないこと。」、「税理士法人の社員は、その権利義務について合名会社の社員と同様とされていますが、合名会社の社員と異なり、業務を執行する権限を定款で制限できないこととされていますので、税理士法人の社員はすべて、法人税法施行令第71条第1項第3号において使用人兼務役員になれない役員として明示されている合名会社の業務を執行する社員と同様に、業務執行を行うこととなります。」、などと記載しており、定款における業務執行権の制限の有無に着目していることが分かります。

 

士業法人の中には、たとえば、弁護士法人に関して、弁護士法第30条の12が「弁護士法人の社員は、定款で別段の定めがある場合を除き、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。」と定め、第30条の13《法人の代表》が、「1 弁護士法人の業務を執行する社員は、各自弁護士法人を代表する。2 前項の規定は、定款又は総社員の同意によつて、業務を執行する社員中特に弁護士法人を代表すべき社員を定めることを妨げない。」と定めているように、定款で業務執行権(や代表権)を制限することができる士業法人もあります。

 

以上によりますと、まず、定款で業務執行権を制限できないとされている種類の士業法人においては、社員全員について使用人兼務役員として税務処理をする余地はなく、次に、定款で業務執行権を制限できるとされている種類の士業法人においても、定款で業務執行権が制限されている社員以外の業務執行社員は、使用人兼務役員として税務処理をすることはできない、と考えておいた方がよいかと思います。

 

士業法人の方々、ご注意を!

 

 

続きを読む

平成28年の税務訴訟での納税者側の勝訴割合は4.5%となっています

国税庁発表の「平成28年度における訴訟の概要」によると、平成28年の税務訴訟での納税者側の勝訴割合(一部勝訴も含む。)は4.5%となっており、過去の数値(平成25年度7.3%、平成26年度6.8%、平成27年度8.4%)と比べても低調に留まっているといわざるをえないでしょう。

 

しかし、他方で、国税庁発表の「平成28年度における審査請求の概要」によると、訴訟前の審査請求の段階での納税者側の主張が認められた割合(一部認容も含む。)は12.3%となっており、過去3年(平成25年度7.7%、平成26年度8.0%、平成27年度8.0%)よりもかなり高くなっているということができます。

 

このように両者をみると、単純に納税者側の主張が認められづらい状況にあるということはできないですし、むしろ審査請求の早い段階で納税者救済が実現しているのであれば、より納税者にとってはありがたいところではないかと思います(しかも審査請求は費用が無料ですし。)。

このような状況が続くのかは分かりませんが、こういった数値は、納税者がどこまで頑張るべきかを考える上で参考になるかもしれませんね。

 

続きを読む

平成27年1月以降の相続税の申告件数が以前の1.8倍に増えています!

相続発生件数(死亡件数)のうちで、実際に相続税の申告をしている件数が、どれくらいの割合かご存じでしょうか?

 

平成27年1月1日以後に相続または遺贈によって取得する財産に関する相続税については、基礎控除額(相続財産の価格から差し引く金額。基礎控除後の価格に対して課税されます。)が、「5000万円+1000万円×法定相続人の数」から「3,000万円+600万円×法定相続人の数」へと、従来の6割に大幅減少となったため、相続税の申告が必要となる件数、申告件数が大幅に増加するといわれてきました。

この点は、以前のブログ記事もごらんください。

平成27年から相続税の発生件数が1.5倍に!相続税対策はすんでますか?

 

さて、国税庁発表の「平成27年分の相続税の申告状況について」をみると、基礎控除額が大幅減少となる前後の変化がよく分かります。

これによれば、相続発生件数のうちで、相続税の申告をしている件数の割合(課税割合)は、平成26年・4.4%から平成27年・8%へと、3.6%の大幅増加になっています。

被相続人の数でみても、前年5万6000人から10万3000人の大台へと大幅に増えています。

当初1.5倍程度の増加と予想されていたところ1.8倍に及ぶ増加だったわけですから、予想以上の申告件数の増加だったことになります。

 

また、納付税額は、申告件数が増えたため全体では30%以上の増加となっていますが、規模の小さな相続を新たに課税対象とした結果、1件当たりの税額は71.1%と減少する結果となっています。

 

なお、相続財産のうち、預貯金の割合が目立って高まる結果となっていますが、これは、今回新たに課税対象となった方、つまり富裕層というほどではないがある程度の財産を持っている人々は、自宅以外の不動産や金融資産よりも預金を中心に財産を構成しているためだと推測されます。

 

今後も相続税については似たような状況が続くと思われますので、以前より格段に多くのご家庭で、生前からの相続対策を考えて実施しておいた方が良いことになるでしょう。

相続対策について相談したい方は、下のボタンをクリックして相談の予約をしてください!

続きを読む

節税目的の養子縁組でも有効ですが税務上は否認されるかもしれません

今回は、もっぱら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、その養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできないとした最高裁判決(平成29年1月31日第三小法廷判決)のご紹介と注意点を記載しました。

続きを読む

加算税について取扱いが厳しくなる改正がされています!

加算税は、税金の申告が適正にされなかった場合に納税者に課されるものです。その種類や内容についてはこちらの財務省のページをごらんください。

さて、来年(平成29年1月1日)以後に法定申告期限が到来する国税について、新たに改正された加算税制度が適用されます。

改正点は以下の2点です。

続きを読む

通達にしたがって申告をしたのであれば、加算税は課されない!

本日は、最高裁第二小法廷平成27年6月12日判決のご紹介です。

この判決は、匿名組合契約に基づいて組合員が受ける利益の所得税法上の所得区分について判断基準を示し、この点に関する現在の通達の内容が正しいものと認めるとともに、この事案で組合員が得ていた所得は雑所得であると判断したものです。

ですが、今回注目すべきは、この匿名組合員が組合事業による損失を(雑所得ではなく)不動産所得に関するものとして所得税の申告をしたことについて、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるので過少申告加算税の処分は違法であるとして、この処分を取り消した点です。

この事案においては、匿名組合員の申告はもともとは通達にしたがって申告をしていたものであったが、平成17年の通達改正により、以後の匿名組合員の申告が結果的に通達に反するものとなってしまったという事情があります。

この判決は、その点を踏まえて、以下のように判断をしたのです。

 

『以上のような事情の下においては、本件各申告のうち平成17年通達改正の前に旧通達に従ってされた平成15年分及び同16年分の各申告において、Aが、本件リース事業につき生じた損失のうち本件匿名組合契約に基づく同人への損失の分配として計上された金額を不動産所得に係る損失に該当するものとして申告し、他の各種所得との損益通算により上記の金額を税額の計算の基礎としていなかったことについて、真にAの責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお同人に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというのが相当であるから、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるものというべきである。』

 

納税者が、税務官庁が自ら示していた通達にしたがった申告をしたにもかかわらず、結果として税務官庁から加算税を課されてしまうことがあるとすれば、(たとえその通達が適正な内容でなかったとしても)納税者にとって理不尽といわざるを得ないので、通達にしたがって申告をしたのであれば加算税は課されないとした今回の最高裁の判断は一般人の常識に合うものだと思いますし、今後の参考にもなります。

 

※なお、最高裁が過去に似た判断を示したものとして、最高裁第三小法廷平成18年10月24日判決があります。    

続きを読む

競馬所得に関する高裁の納税者逆転勝訴判決! 東京高裁H28.4.21判決

以前、こちらのブログでふれた、競馬所得に関する東京地方裁判所平成27年5月14日判決の事案で、納税者逆転勝訴の控訴審判決(東京高等裁判所平成28年4月21日判決)が出ていますので、本日はその紹介です。

まず、前提として、「競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得(税務署側主張)なのか、雑所得(納税者側主張)なのか」、「外れ馬券の購入代金が必要経費に該当する(納税者側主張)のか、該当しない(税務署側主張)のか」、といった点が争点となり、この件の当たり馬券の払戻金は雑所得に当たり、外れ馬券の購入代金も必要経費として控除することができるとした最高裁判所第三小法廷平成27年3月10日判決(刑事事件の判決)をおさえる必要があります。

今回の東京高裁の控訴審判決のもととなる東京地裁の1審判決では、本件競馬所得が一時所得に該当し、外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除できないとして、納税者敗訴となっていました。

 

今回の高裁判決は、

 

・本件競馬所得が、所得税法34条1項にいう「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に該当するのであれば、一時所得ではなく雑所得に区分される

 

・「営利を目的とする継統的行為から生じた所得」であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当であり、馬券の的中による払戻金に係る所得の本来的な性質が一時的、偶発的な所得であるとの一事から「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」には当たらないと解釈すべきではないものと解される(前記最高裁判決参照)

 

・控訴人は、期待回収率が100%を超える馬券を有効に選別し得る独自のノウハウに基づいて長期間にわたり多数回かつ頻繁に当該選別に係る馬券の網羅的な購入をして100%を超える回収率を実現することにより多額の利益を恒常的に上げていたものであり、このような一連の馬券の購入は一体の経済活動の実態を有するということができる

 

・別件最高裁判決に係る別件当事者が馬券を自動的に購入するソフトを使用する際に用いた独自の条件設定と計算式も、期待回収率が100%を超える馬券を有効に選別し得る独自のノウハウといい得るものであり、控訴人と別件当事者の馬券の購入方法に本質的な違いはないものと認められる

 

・したがって、本件競馬所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として、一時所得ではなく雑所得に該当する

 

・本件においては、控訴人の馬券の購入の実態は、前記のとおりの大量的かつ網羅的な購入であって、個々の馬券の購入に分解して観察すべきものではなく、外れ馬券を含む一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するのであるから、的中馬券の購入代金の費用のみならず、外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が、的中馬券の払戻金という収入に対応するものとして、同法37条1項の必要経費に当たると解するのが相当である(前記最高裁判決参照)

 

などとして、税務署長の処分をいずれも違法な処分として取り消したため、納税者逆転勝訴判決となっています。

 

今回の東京高裁判決については、1審の地裁判決と事実認定や法律上の要件へのあてはめに差が出たため、異なる結果となったものと考えられます。

今後も、競馬所得に関する裁判がどの程度続くのかは良く分かりませんが、おおまかな判断基準はこれまでの裁判例で出てきているので、あとは主に、事実認定、当てはめの勝負になってくるということがいえるのではないかと思います。

続きを読む

事業承継に伴う株価対策について(第1回)

所有財産の中に、上場していない同族会社の株式が含まれている会社のオーナーやその相続人にとって、その株式の評価額がいくらになるのかは、相続(相続税)の関係上、非常に重要な問題となることが多くあります。

中小企業、同族会社の非公開株式は、第三者への売却もままならず、換金が容易ではないうえ、実際には手放せないケースも多いにもかかわらず、会社の収益・財務状況によっては非常に多額の評価額がついてしまい、相続税が多額になったり、株式を集中的に相続せざるを得ない会社後継者が現金など株式以外の財産を十分に相続できないという事態が発生してしまうことが多々あるからです。

そこで、相続対策の一環としての非公開株式の株価対策(評価額低下のための方法)にどのようなものがあるのか、次回以降、簡単にご紹介していきたいと思います。

 

今回は、その前提として、まず相続税の世界で、株式評価がどのような方法で行われているのか、簡単にご説明しておきましょう。

非公開株式の相続税実務における評価方法は、相続税の財産評価基本通達(178以降)に詳しく定められています。これは通達ですので、この通達に従った評価額が絶対的に正しいというわけではありませんが、通達に従った評価額であれば税務署からは否認されなくなるため、実務上の基準となっているわけです。

この通達にしたがいますと、株式の評価は、類似業種比準価額方式、純資産価額方式、これらの併用方式、配当還元価額方式のいずれかによることになりますが、一般の事業会社において、株価対策が必要となるような、株主の中で支配的な地位にある株主の株式については、通常、およそ以下のような基準で評価されることになります。

続きを読む

マンションの管理組合も納税をしなければいけないのか?

少し前に報道がされていましたが、マンションの管理組合が携帯電話の基地局設置や駐車場の第三者への貸出しなどで得た収入について税務申告をせず、後で税務署から申告漏れの指摘をされるケースが未だに多いようです。管理組合のメンバーが専門家ではなく、納税や申告をしなければならないことについて気づかないため発生するケースが多いようです。

この点に関して、国税庁のホームページでは、「マンション管理組合が携帯電話基地局の設置場所を貸し付けた場合の収益事業判定」、「マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について(照会)」、「マンション管理組合の課税関係」などが参考になります。

 

マンションの管理組合は、「(公益)法人」である場合と、法人ではない「人格のない社団等」である場合がありますが、法人税法においては、いずれの管理組合も同じ扱いになり、両者とも収益事業による所得については法人税が課されることになります。収益事業以外による所得については法人税が課されない点も両者に変わりありません。

ここでいう「収益事業」とは、「政令で定める事業で継続して事業場を設けて営まれるもの」を指しますが、その「政令」(法人税法施行令第5条)では、不動産貸付業、駐車場業を含めてかなり幅広く収益事業の範囲が定められています。

そのため、例えば、マンションの駐車場がマンション居住者専用であれば収益事業に含まれませんが、居住者以外の第三者に有料で貸し付けている場合は収益事業に当たり、その収入は法人税の課税対象となります。

 

また、消費税についても同じような結果となり、居住者以外の第三者に有料で貸し付けている場合の収入は消費税の課税対象となります(ただし、基準期間の1年間の収入が1000万円以下であれば、納税義務は免除されます。)。

 

したがいまして、マンションの管理組合でも、上記のような場合には、法人税(や消費税)の申告や納税をしなければなりません。なお、管理組合が(公益)法人である場合には、収益事業をしていない場合でも、住民税は均等割りについては申告、納付をしなければならないのが原則です(減免がある自治体もあります)。

 

申告漏れがあった場合の加算税等のさらなる負担を考えると、ぜひとも申告漏れがないようにしたいですね!

続きを読む

税務調査の結果説明に違法があっても課税処分の取消事由とならないとする裁決

本日は、調査結果の納税者に対する説明に欠陥があったとしても、原処分の取消事由とはならないとした国税不服審判所の平成27年5月26日裁決をご紹介します。国税不服審判所はこの件で、従来よりも一歩踏み込んだ解釈やあてはめを行っているのではないかと思われます。

今回の裁決は、法令解釈として、税務調査の手続に単なる違法があるだけでは課税処分の取消事由とはならないが、国税通則法は、更正処分、決定処分、再更正処分等について、いずれも「調査により」行う旨規定しているから、課税処分が何らの調査なしに行われたような場合には、課税処分の取消事由となるものと解される(と従来どおりの解釈を示したうえで)、他方で、証拠収集手続自体に重大な違法がないのであれば、課税処分を調査により行うという要件は満たされているといえるから、仮に、証拠収集手続に影響を及ぼさない他の手続に重大な違法があったとしても、課税処分の取消事由となるものではないと解される、と(従来よりも一歩踏み込んだ判断を)しています。

そして、納税者は、今回の調査において、納税者に対する国税通則法所定の調査結果の説明が行われていないことは違法である旨主張するが、証拠収集手続に違法があるとは認められない本件においては、証拠収集手続に影響を及ぼさない手続である調査結果の説明に仮に瑕疵があったとしても、今回の課税処分の取消事由とはなり得ない旨の判断をしています。

 

この裁決の判断によれば、調査結果の説明という手続きについては、証拠収集手続に影響を及ぼさないものであり、仮に重大な違法があったとしても(全く説明がなかった場合も含まれるのではないかと思われます)、その調査をもとになされた課税処分は取り消されることはあり得ないことになります。

調査結果の説明という手続きは、納税者の権利保護のために国税通則法の改正によって設けられた制度ですが、その説明がきちんとされずになされた課税処分が取り消されるのかという点について、いずれ消極的な判断がなされるだろうと考え、以前にもそのようなブログ記事を書いておりましたが、私が思っていた以上に明確な(極端な?)法令解釈、あてはめがなされたな、というのが正直な感想ですね。

続きを読む

金地金が相続財産に含まれないとした審判所の裁決

本日は、相続税の処分を受けた納税者側の主張が認められ、処分が全部取消された国税不服審判所の平成27年5月8日裁決のご紹介です。

この裁決の詳細は、審判所のHPに記載のとおりです。

この事案で、国はおよそ、本件の被相続人が金地金(きんじがね)を取得した以後、①相続開始日の3年前頃は被相続人が多数の金地金を保有していたこと、②金地金の取扱業者等に対する売却の事実がないこと、③相続人等への金地金の贈与の事実がないことから、被相続人が金地金を売却した可能性が著しく低く、かつ、被相続人が金地金の贈与をした事実はないと推認されるから、相続開始日において、被相続人又は審査請求人の管理下には金地金が存在した、したがって金地金は相続財産である、というような主張をしていました。

 

しかしながら、審判所は、上記①から③までの事情は、相続開始日に金地金が被相続人の相続財産として存在したと認めるには十分とはいえず、他に原処分庁の主張事実を認めるに足りる証拠はないから、金地金は、請求人が取得した相続財産であるとは認められないとの判断をしたのです。

 

私も、過去にあるものが故人の財産として保有していたというだけでは、その後財産から外れたり、形を変えている可能性が多分にあり、これを完全に排除できないかぎり相続財産と認定することはできないだろうと思います。また、相続財産であると認めるためには、あくまで相続開始時に故人の財産として現存していたことを相当程度直接的に推認させる証拠がなければならないのではないかと思います。

今回の審判所の裁決の判断は、とても簡潔ですが、明瞭なもので、かつ経験則にも沿ったものだと思います。

続きを読む

会社が役員に債務免除をする場合に源泉徴収をしなければならないのか?

今回は、平成27年10月8日最高裁第一小法廷判決のご紹介です。

 

この件は,平成19年にある青果荷受組合が理事長に対する48億円あまりの債務を免除したところ、税務署長がこの債務免除による経済的利益は理事長に対する賞与に該当するとして、源泉所得税18億円余りの納税告知処分などを組合に行ったのに対して、組合がその取消しを求めて争ったというものです。

最高裁は、理事長の債務免除益が同人に対する「給与等」(所得税法28条)に該当しないから組合に源泉徴収義務はないとした広島高裁の判決(納税者勝訴判決)を覆し、再び広島高裁に事件を差し戻す判決をしました。 

この広島高裁の判決については、このブログでも以前ご紹介し、結論的には合理的な判断であるように思われると記載しておりましたが、この度、最高裁は、「所得税法28条1項にいう給与所得は、・・・雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供した労務又は役務の対価として受ける給付をいう」、「同項にいう賞与又は賞与の性質を有する給与とは、上記の給付のうち功労への報償等の観点をも考慮して臨時的に付与される給付であって,その給付には金銭のみならず金銭以外の物や経済的な利益も含まれる」とし、「本件債務免除益は、・・・雇用契約に類する原因に基づき提供した役務の対価として、被上告人から功労への報償等の観点をも考慮して臨時的に付与された給付とみるのが相当である。したがって、本件債務免除益は、所得税法28条1項にいう賞与又は賞与の性質を有する給与に該当する」として、「給与所得」や「賞与」の文言に関するこれまでの判例どおりの判断を行い、債務免除益が「給与等」に該当するものとして、広島高裁の判決を覆しております。

 

もっとも、最高裁も、「本件債務免除当時にAが資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であったなど本件債務免除益を同人の給与所得における収入金額に算入しないものとすべき事情が認められるなど、本件各処分が取り消されるべきものであるか否かにつき更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。」と言っていますので、本件の債務免除益は所得税法28条の「賞与又は賞与の性質を有する給与」には該当するけれども、「債務免除当時にAが資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であったなどの収入金額に算入しない事情」があるとなれば、そもそも所得税法36条の収入金額がないとして本件の処分が取り消されえることを前提として、高裁に差し戻しをしているといえます。なお、この部分の最高裁の判断は、同様の定めである所得税法基本通達36-17や、その後平成26年4月1日に施行・新設された同趣旨の所得税法44条の2の存在を強く意識したものといえます。

 

広島高裁としては、「債務免除当時にAが資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であった」ことなども考慮して、実質的に「給与等」に該当しないと判断をしたつもりだったかと思いますが、最高裁は、これまでの所得税法28条の「給与等」「賞与」に関する判例・実務の考え方に加えて、所得税法36条の収入金額に関する通達での例外的取扱い、さらには所得税法44条2の新設といった経緯もあるため、これらの整合性を取るため、本件では、「給与」「賞与」に該当するとしつつ、収入金額に算入しないものとするみちを後に確保することによって、整合性と妥当な結論を導こうとしたのではないかと考えられます。

続きを読む

遺言書があっても、それと異なる内容の遺産分割をすることができます

遺言書がある場合、法定相続人や受遺者らが話し合い、遺言書と異なる内容で遺産分割協議をすることができるのでしょうか。また、相続税以外に贈与税までかかったりしないのでしょうか?

一般的には、自分の権利を譲渡したり放棄することは自由であるため(私的自治の原則)、法定相続人や遺贈を受けた者(受遺者)らが全員同意するのであれば、(遺言にしたがって取得する権利を放棄した上で)改めて遺言書と異なる内容の遺産分割をすることも可能です。税務上も、遺言書による相続とは別の贈与、譲渡、交換などがあったものと認定して、相続税に加えて贈与税や所得税がかけられる可能性は低いといわれています。

ただし、以下のとおり、遺言執行者がいる場合には、状況が若干異なり、税務上も注意が必要となります。

遺言書で指定された遺言執行者が就任し、または家庭裁判所に遺言執行者が選任されると、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権利義務が遺言執行者に帰属します(民法1012条)。また、『遺言執行者がある場合』(※遺言書で執行者として指定を受けた者が「就任を承諾する前」もこれに含まれますが、「就任を承諾しなかった場合」はこれに含まれません。)には、相続人は、相続財産の処分その他遺言執行を妨げる行為ができないとされていますので(民法1013条)。そのため、遺言執行者がいる場合には、相続人らは遺言書と異なる内容の遺産分割協議はできないのではないか(無効となるのではないか)、という点が問題となります。

 

ですが、以下のような場合には有効となると考えられております。

①遺言執行者が遺言書と異なる内容の遺産分割協議について同意、追認した場合

遺言執行者は、遺言書の内容をそのまま実現できない場合やそれが適当でない場合には、遺言の趣旨を害さない範囲で相続人らと協議し、修正した内容で執行することもできるため、遺言執行者が同意、追認した場合には、その遺産分割協議も有効とされています。

②遺言の内容が特定の財産の遺贈(特定遺贈)である場合

特定遺贈については受遺者がいつでも放棄できるので、受遺者の遺贈放棄によって、遺言執行者において特定遺贈の執行ができなくなり、遺贈の対象となった財産は相続人らが共有する遺産に復帰し、改めて相続人らの遺産分割協議の対象となるため、遺言書と異なる内容の遺産分割協議をしているように見えても、遺言執行者の権限を妨げることにならず、有効となります。

(また、以上のような場合でなくとも、そもそも個人間での交換や贈与は当然自由なので、遺言執行者の同意、追認なしに遺産分割協議をしても、③遺言の内容を事後的に変更したものとして、その遺産分割協議が有効になる余地がある、ともいわれているようですが、この点は明確ではありません。)

 

税金面では、以下のように考えられるのではないかと思います。

①の場合、遺言執行者がいない場合(の「遺言書と異なる内容の遺産分割」)と状況があまり異ならないので、相続税に加えて贈与税や所得税がかけられる可能性は高くはないと思われます。

②の場合には、遺贈の放棄後、相続人らの遺産分割協議によって相続人らは遺産を取得したことになるので、相続税以外に贈与税や(譲渡)所得税が課される可能性は低いと思われます。

その他の場合には、税務署が、遺言執行者がいる限り遺言と異なる内容の遺産分割協議はできないので、それは「遺産分割協議」ではなく、遺言による相続後に「別個の交換、贈与」がなされたものと理解して、相続税に加えて、贈与税や所得税がかけられる可能性が理論上あることは否めないのではないかと思われます。税務署には、どのような結果で遺産が分割されることになったとしても、相続税の総額がきちんと支払われるなら厳密な法律論はあえて気にしない、それに加えて贈与税や所得税を重ねてかけたりはしない、という実務感覚があるように思いますが、上記のような課税の可能性が理論上はあることに一応ご注意を!

続きを読む

信用不安のある会社の株式の譲渡時期にご注意を

一般的に、個人が所有する純粋な資産(非事業用資産)に損失(家事損失といいます。)が発生した場合であっても、所得税の計算上、家事損失を、個人の収入から必要経費として控除することができないため、(雑損控除の点を除けば)所得税の額を安くおさえることができるわけではありません。

では、破綻等により価値の下がった株式を第三者に低額で譲渡して、譲渡損失が発生したものとし、他の株式の譲渡収入等と通算することによって、全体的な所得税の額を低く抑えることができるのでしょうか?

今回ご紹介するのは、その点に関する東京地裁平成27年3月12日判決です。

この件は、平成22年9月に破綻した銀行の取締役兼代表執行役であった原告が、同年10月20日に、保有していた同銀行の株式3100株を1株1円で税理士に譲渡し、譲渡所得の金額の計算上損失が生じたとして平成22年分の所得税の確定申告をしたところ、税務署長から更正処分を受け、これを争った事案です。

 大まかに言うと、東京地裁は、

  1. 所得税法33条1項の規定する譲渡所得の基因となる「資産」には、一般にその経済的価値が認められて取引の対象とされ、増加益が生じるような全ての資産が含まれるが、増加益を生じ得ないもの、すなわち、社会生活上もはや取引される可能性が全くないような無価値なものについては、同項の規定する「資産」には当たらないものと解するのが相当である。
  2. 株式は、株主の①利益配当請求権等の「自益権」や②株主総会における議決権等の「共益権」を基礎として、一般に経済的価値が認められて取引の対象とされ、増加益の生ずるような性質のものとして、譲渡所得の基因となる「資産」に当たる。
  3. 株式譲渡の時点で一般的に①自益権及び②共益権を現実に行使し得る余地を失っていた場合には、後に権利を現実に行使し得るようになる蓋然性があるなどの特段の事情が認められない限り、株式としての経済的価値を喪失し、増加益を生ずるような性質を有する譲渡所得の基因となる「資産」には該当しないものと解するのが相当である。
  4. 本件では、①同銀行が本件株式譲渡の前後を通じて極めて多額の債務超過状態に陥っており、配当等を行う余地はなかったことからすると、同銀行の株主は、本件株式譲渡の時点において、自益権を現実に行使し得る余地はなく、また、②金融整理管財人による管理を命ずる処分がされた時点において、株主は共益権を現実に行使し得る余地を失っており、後にこれらの権利を現実に行使しうるような蓋然性もなかったから、本件株式は、譲渡所得の基因となる「資産」には該当しない

というような判断をしました。

 

もともと「資産」であったものが、後にある時点から「資産」ではなくなってしまい、譲渡損失の計上ができなくなってしまう(~他の株式の譲渡益等と通算することができなくなる)、という点に違和感を覚える方もいらっしゃるかと思いますが、譲渡所得に関する今回の判決の考え方は比較的一般的なものだと考えられます。千葉地裁平成18年9月19日(東京高裁平成18年912月27日、最高裁平成20年5月30日)判決でも、同じような判断がされております。

たしかに、一般的に資産に関して発生した家事損失については、所得税の計算上、個人の収入から必要経費として控除することができない(※この前提自体に是非はあると思いますが。)はずなのに、第三者に低額で譲渡してしまえば、譲渡損失の計上によって所得税の額を全体的に抑えることができる、というのは奇妙な結論のようにも思われます。

したがいまして、今回の判決の考え方、結論は相当なのだろうと思います。

 

そうすると、信用不安のある会社の株式については、その譲渡時期、つまり自益権・共益権が現実的に行使できる可能性があるうちに株式を譲渡できるかどうかが、大変重要であり、自益権・共益権が現実的に行使できる可能性がなくなった後に譲渡をしても、譲渡損失は計上できない、ということを押さえておく必要があると思われます。


皆さんも信用不安のある会社の株式については、早めの売却処分を検討してみてはいかがでしょうか。

続きを読む

相続、事業承継セミナーの講師をします!

10/14,10/28の2日間にわたって、南納税協会主催の相続、事業承継セミナーの講師をつとめさせて頂きます!

場所は大阪社会福祉会館です。


計6時間の長時間ではありますが、私と相続税などの資産税が専門の税理士(国税OBの方です)の二人でやらせて頂くので、なんとか飽きずに聞いて頂けるかと思います。


14日分はレジュメの作成も何とか終了しました。28日分も今から作成しないと! 

続きを読む

個人が会社に物を高く買ってもらうと、一時所得が発生することがあります

今日は、東京高裁平成26年5月19日判決のご紹介です。

この判決の事案は、以下のようなものです。納税者(個人)は、上場のA社株式を、B社に対して、平成21年3月に一部を、11月に残りを、いずれも1株当たり550円で売却し、株式の譲渡代金全額を譲渡所得として申告をしました(ある意味では普通のことですね。)。

ところが、税務署長は、譲渡代金とA社株式の市場の終値(3月譲渡時290円、11月譲渡時426円)を基に算出した評価額との差額合計約3億3000万(B社が終値よりも高く買い取っていた部分)は、B社から納税者に贈与されたものなので、納税者の一時所得に該当する(譲渡所得ではない)として納税者に更正処分をしたのです。

補足ですが、一般に、個人が法人から受けた贈与については、一時所得に当たると理解されており(贈与税は個人が個人から贈与を受けた場合にのみ課されます。)、上場株式の終値(時価)と実際の売買単価との差額部分については、贈与があったものと評価されるので、差額部分が一時所得になる、という理屈です。

 

結論としては、高裁も地裁と同じく納税者側敗訴の判断となっていますが、私が改めて思ったのは、本来、物やサービスの値段は当事者間の交渉で決定してよいのであって、そうして決まった金額は全て物やサービスの対価といえるはずですので、必要以上に税務署が今回のような課税をすることは避けるべきではないか、ということです。

ただ、この件については、(1)純粋な第三者間の取引ではなく(納税者はB社の実質的なオーナーのようです。)譲渡代金が合理的に決定されたか疑問があることや、(2)取引の対象が上場株式で、時価の明確な指針となる金額があり、売買単価との差額もかなりあったことで、今回のような課税処分、ひいては地裁・高裁の判断がされたものだと思いますので、今回の判決の内容について違和感があるわけではありません。

 

個人としては会社に高く買い取ってもらえるのはうれしいことでしょうが、代金が時価よりも高いと、一時所得が発生したとして多額の税金を納めないといけない場合がある、ということは覚えておいた方が良いかもしれません。

続きを読む

競馬所得に関する後続の別件の判決! 東京地裁H27.5.14

本日は、東京地方裁判所平成27年5月14日判決のご紹介です。


さて、「当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得か雑所得か」、「外れ馬券の購入代金が必要経費に該当するか否か」が刑事事件及び民事事件で問題となり、最高裁が刑事事件についてH27.3.10に判決を出したのは、記憶に新しいところだと思います。今回の東京地裁の判決もこの最高裁の事案と争点はほぼ同じですが、全く別の当事者の事案に関するものです。

先例である最高裁H27.3.10判決は、馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定等に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして、当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げるなどしていた本件事実関係の下では、払戻金は所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たり、外れ馬券の購入代金は,雑所得である当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができる、などと判断をしていました。

今回の東京地裁の判決は、この最高裁の事案と争点こそほぼ同じですが、要約すると以下のとおり認定、判断しており、結論も棄却(納税者の主張が認められない)、と最高裁の事案とは異なった結果となっている点が注目されます。

 

(東京地裁の判決の骨子)

  • 原告は、数年間にわたり、各節当たり数百万円から数千万円の馬券を継続的に購入していたところ、多いときには1億円を超えており、平成17年から平成22年までの総額は約72億円、払戻金の総額は約78億円、総額5億円超の利益を得ていた。
  • 原告は具体的な馬券の購入を裏付ける資料を保存していないため、原告が陳述する方法で馬券を購入していたかについては、客観的な証拠がなく、認めることができない。
  • 原告の主張によれば、原告はコンピュータソフトを使用して自動的に馬券を購入していたわけではなく、規模の点を別にすれば、その馬券購入態様は、一般的な競馬愛好家による馬券購入の態様と質的に大きな差があるものとは認められない。
  • 競馬は公営賭博で、そもそも馬券購入は営利を目的とする行為とはなり難い性質のものであるところ、原告が数年間にわたって各節に継続して相当多額の馬券を購入し、結果的に多額の利益を得ていたことのみをもって直ちに、本件競馬所得が営利を目的とする継続的行為から生じた所得(※雑所得)に該当するものと認めることはできない。
  • 以上のとおりであるか、本件競馬所得は、一時所得に該当する。

 

 

予想されていたことではありますが、競馬所得の事件については、事案の事実関係によってやはり結論が大きく異なってくるということがいえるでしょう。また、かえって最高裁H27.3.10判決の事案は非常に特殊な事件であったこともよく分かると思います。

続きを読む

「説明不足理由に課税を取り消し」東京国税不服審判所の裁決

東京国税不服審判所(平成26年11月18日裁決)が、相続財産の申告漏れを指摘して国税局が行った課税について、「課税理由を説明しておらず、違法だとして、約2億5千万円の追徴課税を取り消していたことが分かった」、「説明不足が原因で課税が取り消されるのは極めて異例だ」との新聞報道が先月あったのですが、皆さんご承知でしょうか。

課税理由の説明については、(1)不利益処分をする際に納税者にその理由を書面にて提示しなければならないという「理由付記」(なお、平成23年の国税通則法改正によって不利益処分一般に理由付記が求められるようになりました。)と、(2)調査の終了時に、調査の担当者は、更正決定等をすべきと認める場合には、納税者に調査結果の内容(金額及びその理由)を説明しなければならないという「調査結果の内容説明」(平成23年の国税通則法改正によって新設された国税通則法74条の11・2項)、の2つの制度があります。

前者の「理由付記」については、書面でなされ、裁判実務上、これを欠くと違法な処分として取り消されることとなっておりました。実際、これまでに理由付記を欠いた処分が取り消された裁判例、裁決例はいくつかあります。

他方、後者の「調査結果の内容説明」については、必ずしも書面でなされるとは限らず、むしろ税務署側は原則として口頭での説明としており、また、これを欠いた場合に裁判で処分が違法として取り消されるのか、それとも単なる手続的違法であって処分が取り消されることはないとされるのか、あるいはごく例外的な場合に限って処分が取り消されることになるのか、がまだ明確ではないという状況にあると思われます。なお、この点については、以前「税務調査終了時の調査結果の内容の説明が不足だったら処分は違法になるのか?」という関連記事を書いております。

 

詳しい内容は裁決の内容を見れていないのでよく分かりませんし、今回の報道では、この事案が上記の「理由付記」が問題となったものなのか、「調査結果の内容説明」も問題となったものなのかなどが必ずしも明確ではないですが、いずれにせよ、今回の裁決で課税の処分が取り消されたとしても、国税局は再度理由を説明した上で改めて課税の処分を打ち直せば良いということになってしまうのではないかと考えられます。

結局のところ、この裁決は、上記のような国税通則法の平成23年改正の趣旨を踏まえて、審判所が課税の現場に向けて改めて警鐘を鳴らしたところに意味があるのではないかと思います。

続きを読む

限定承認、本当にしますか? まずは法律と税金の専門家にご相談を。

親は財産をある程度残してくれているけど、財産を上回る借金があるかもしれないとか、多額の保証債務があるが将来支払いを請求されるかどうかは分からないというような場合なら、限定承認をすれば良い、そんなアドバイスを聞いたことはありませんか?

もちろん、まちがったアドバイスというわけではありますが、実際に限定承認するかどうかは一度よく考えてからの方が良いかもしれません。限定承認には注意すべき点がいくつもあり、一般の方がイメージする手続きと異なっていたり、専門家の手助けなしに実行するのが簡単ではない場合があるからです。

 

以下は、代表的な注意点です。

  • そもそも共同相続人全員の共同でないと限定承認の申請はできません。
  • 限定承認は、熟慮期間内(相続の開始があったことを知った時から3か月以内、期間の伸長は可能)に財産目録を提出して申出をしなければなりません。
  • 債権者等には相続財産から(債権額の割合に応じて)弁済をしなければならず、本来ならば弁済期がまだ先の債権についても弁済をしなければならなくなります。なお、条件付きや存続期間の不確定な債権については裁判所の専任した鑑定人の評価額によります。
  • 弁済のために相続財産を売却する必要がある場合には原則として競売手続きをしなければなりません(裁判所の選任した鑑定人の評価額を支払えば競売を避けることはできます)!
  • 債権者への誤った弁済などによって相続財産が不足することになり、他の債権者等に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負います!
  • 限定承認の場合には、相続税(※相続財産が基礎控除額以上の場合にかかります。)以外にも、所得税法上、被相続人が相続人に対して遺産を譲渡したものとみなされることになっており、(譲渡)所得税がかかります!
     なお、この所得税の納付義務は、相続税の計算上、債務として相続財産の額から控除ができますので、一定額の相続税が減少することになります。
  • 上記の所得税は、亡くなった被相続人の税金であり、相続人は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をして納付をしなければならないことになっています。通常、死後はとてもバタバタしているものですが、速やかに税理士と相談を開始する必要があることになります!

 

以上のように、限定承認はおいそれと利用をすすめられる制度ではありませんので、皆さん、限定承認を利用するかどうかは、法律・税金の専門家に相談の上で、よく検討しから判断してください。

 

さて、自分では最後まできちんと限定承認の手続きをする自信はないけれど、やはり限定承認をしたいので、専門家に協力してほしいという方は、こちらからご連絡をどうぞ。


続きを読む

大阪弁護士会で「国税事件のイロハ」と題する研修の講師をつとめました

さる平成27年3月12日、大阪弁護士会で「国税事件のイロハ」と題する弁護士向けの研修(2時間)の講師を、国税不服審判所で同僚だった弁護士と一緒につとめてきました。ある意味マニアックなテーマなのですが、私の予想よりも多くの方々にご参加頂きました。参加して頂いた先生方、ありがとうございました。

内容は、国税事件についての基本的なこと(不服申立の流れ、審査請求事件の進め方など)をご説明し、次に納税者が勝訴したごく最近のものを中心に裁判例・裁決を3つ(理由付記、寄附金、重加算税)ほどざっくり紹介し、最後は国税通則法の最近の改正についてご紹介するといったものです。

さて、こういった研修は準備が大変なので普段は積極的に行っておりませんが(今回は元同僚からのお声がけということもあってお手伝いさせて頂きました。)、基本的なところの整理になるので、よいものですね(一年に一度くらいが丁度良いかもしれません)。

続きを読む

ただ単に登記を遅らせても固定資産税は免れない!

今回は固定資産税に関するH26.9.25の最高裁判決のご紹介です。

本来、固定資産税は、所有者に課されるべきものですが、課税上の技術的な理由から、地方税法は、登記簿や補充課税台帳に賦課期日(固定資産税の場合は各年の1月1日です。)現在の所有者として登記・登録されている者を納税義務者として課税するしくみを取っています。本件は、登記をするのを遅らせたら固定資産税は課されないのかどうかが問題になった事案です。

事実関係としては、本件の被上告人がH21.12に家屋を新築し、H22.10に被上告人を所有者とし、「H21.12.7新築」を登記原因とする表題登記がなされ、H22.12に被上告人に対して「平成22年度」の固定資産税の賦課処分がされた、というものです。

つまり、H22年分の固定資産税の賦課期日であるH22.1.1には被上告人は所有者として登記されていなかったにもかかわらず、被上告人は、平成22年分の固定資産税を課されたわけです。


被上告人はH22.1.1には所有者として登記されていなかったから、平成22年分の固定資産税の納税義務者ではないとして争ったのですが、最高裁は、地方税法等が登記・登録の時期について特に定めをおいていないことから、登記・登録は賦課期日の時点においてされていることを要するものではないなどとし、賦課期日の時点において登記・登録がされていなくとも、処分のときまでに賦課期日現在の所有者として登記・登録されている者は、その賦課期日の年度の固定資産税の納税義務を負うと判断し、被上告人の主張は認められませんでした。


要するに、ただ単に登記を遅らせても固定資産税は免れない!、ということですね。

皆さんもご注意を。

続きを読む

競馬脱税事件、民事訴訟の1審でも納税者側が勝訴しています

少し前のことですが報道によれば、いわゆる競馬脱税事件に関して、大阪地裁は先月2日、納税者が総額約8億円の課税処分の取消しを求めた民事訴訟(行政訴訟)において、納税者の主張を認め、納税者の馬券購入による所得は雑所得に該当し、ハズレ馬券の購入代金はその必要経費に当たるとして、課税処分の大部分を取り消す判決を言い渡した模様です。

判決文の内容を見れていないので、詳細なコメントはできませんが、刑事裁判でも1審・2審と納税者側が実質勝訴しており(現在は最高裁に係属中)、民事でもその流れに乗って、同様ないし類似の理由で今回の判決が出されたものと思われます。もっとも、国側はこの判決に対して控訴しており、少なくとも刑事事件の最高裁判決で明確な判断が示されるまでは、国は逆転を狙い全力を上げてまだ争うのだろうと予測されます。

ところで、この件に関して個人的に前から気になっていることがあります。

それは、今回の納税者は本業・勤務先があって副業的に競馬をしていたようで、そのために競馬の当たり券の払戻金が雑所得か一時所得かという形で裁判で争われているのですが、仮に納税者が本業の仕事を辞めて競馬の払戻金のみで暮らしていた場合には、この納税者の得た払戻金は一時所得や雑所得ではなく事業所得に当たると認定される余地があるのではないかという点です。また、仮にこの納税者が法人として競馬をしていた場合には(※合法的に法人化できるとした場合の話ですが。)、ハズレ馬券の購入代金も法人の経費、損金として認めざるを得ないことになるのではないのかという点も気になっています。

さて、これらの点についてはどうなるのでしょうね。

続きを読む

役員に対する債務免除が税務上の給与に当たる場合、当たらない場合

今回ご紹介するのは、役員に対する債務免除によって役員が得た経済的利益が賞与に当たるとして税務署長がした源泉所得税の納税告知処分を取り消した、平成26年1月30日の広島高裁岡山支部の判決です。

法人が役員に対して債務免除をした場合に、債務免除による経済的利益の供与が税務上の「給与等」(※一般的な給与の概念よりも広く、雇用契約・委任契約などに基づいて役務の対価として支給されるもの全般を含みます)に該当するとなると、役員らにおいては、所得税や住民税の申告漏れが発生し、法人においても、その給与等の支払いが通常損金とならないほか、その給与等に対する源泉徴収漏れがあることになるなど、課税上重い負担が発生する場合があります。

一般的な感覚からすると、役員に対して債務免除をするときに、源泉徴収をしなければならないというのは、やや現実的ではないようにも思われますが、こういった税務上の扱いは認められているところですので、やむを得ないところです。

 

今回の裁判の概略は、平成19年にある青果荷受組合が理事長に対する48億円あまりの債務を免除したところ、税務署長がこの経済的利益を理事長に対する賞与と認定し、源泉所得税18億円余りの納税告知処分などを組合に行ったのに対して、組合がその取消しを求めて争ったというもので、広島高裁岡山支部は1審と同じく、組合の主張を認めて処分を取り消しました。

その理由としては、理事長はバブル崩壊後、貸付金の返済に窮して、平成2年以降、債務免除及び利息の減免を希望し、組合は利息を減免してその支払を受けていたこと、理事長の課税処分についての過去の異議決定(※税務署長への異議申立てに対する税務署長の決定です)において、平成17年の債務免除について理事長に資力がなく債務の弁済が著しく困難になっていたと判断されていたこと、その後も理事長に資産の増加がなかったこと、その状況下で平成19年の債務免除がなされた事実経過からすると、債務免除の主たる理由は理事長の資力喪失により弁済が著しく困難であることが明らかになったためであって、債務者が役員であったことが理由と認めることができないことから、平成19年の債務免除は、役員の役務の対価ではなく、「給与等」に該当するということはできないというものです。

 

個人的には、判決文を見る限り、本件の債務免除が「給与等」に該当しないとの判断はそれなりに合理的なものであるように思います。

皆さんも、税務署から給与等の認定をされそうになったときに、本件と類似の事情がある場合には、強く主張してみられてはいかがでしょうか。

続きを読む

ロータリークラブの会費を経費にしている方はご注意を!

ロータリークラブの会費を必要経費で落としている、そんな方は意外と多いのではないでしょうか。

通常の個人事業者の感覚で行くと、ロータリークラブに入るのは、自分の仕事のお客さんになってもらえる会員を探したい、会員から仕事の紹介を受けたい、仕事に使える人脈を増やしたいなど、仕事が主な動機になっていることも多いと思います。そのため、当然会費は経費だと考える人も多いでしょう。

ですが、税務署は公的にはロータリークラブの会費を事業所得などの必要経費として認めてくれないことが多く、国税不服審判所の裁決でも必要経費と認めない税務署の主張が繰り返し認められております。平成26年3月6日付の裁決でもやはり同じく納税者側の主張が認められておりません。

 

ところで、東京高裁平成24年9月19日判決は、弁護士の弁護士会等の活動に関連する懇親会費や選挙費用について、弁護士として行う事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な支出であれば必要経費に該当するとの解釈を示した上で、「弁護士会等の活動は、弁護士に対する社会的信頼を維持して弁護士業務の改善に資するものであり、弁護士として行う事業所得を生ずべき業務に密接に関係するとともに、会員である弁護士がいわば義務的に多くの経済的負担を負うことにより成り立っているものであるということができるから、弁護士が人格の異なる弁護士会等の役員等としての活動に要した費用であっても、弁護士会等の役員等の業務の遂行上必要な支出であったということができるのであれば、その弁護士としての事業所得の一般対応の必要経費に該当する」、「これらの懇親会等が特定の集団の円滑な運営に資するものとして社会一般でも行われている行事に相当するものであって、その費用の額も過大であるとはいえないときは、社会通念上、その役員等の業務の遂行上必要な支出であったと解するのが相当である。」とし、費用の額が過大であるものや二次会に出席した費用等を除き、必要経費に当たるとする弁護士の主張を認め、また日弁連副会長に立候補するために選挙規定に基づいて支出した費用についても弁護士の主張を認めて必要経費と判断しました(最高裁は上告を受理せず、この判決は確定しています。)。弁護士の事業所得の必要経費に関する最近の判決として取り上げてみましたが、広く報道されたものですので、ご存じの方も多いでしょう。

 

では、ロータリークラブの会費が弁護士会の活動費と同じように、裁判で必要経費に当たると判断されることになるのかという点ですが、ロータリークラブの会費と弁護士会の活動費を比較してみたとき、会が公的な存在であるか否か、納税者の本業たる事業と会の活動内容との関連性の高低などの点において、かなりの差があるように思います。そうすると、実際にロータリークラブのメンバーからの紹介事件が複数あるというような場合でないと、正面からロータリークラブの会費を必要経費と認めてもらうのはなかなか難しいのかもしれません。

皆さん、ロータリークラブの会費の取扱いにはご注意を!

 

続きを読む

税務調査終了時の調査結果の内容の説明が不足だったら処分は違法になるのか?

国税通則法74条の11《調査の終了の際の手続》の2項は「国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。 」と規定し、その3項は、「前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。」と規定しています。

さて、この「調査結果の内容(更正決定等の額及び理由)の説明」は、実務上主に口頭でなされているのですが、どの程度説明をしなければならないのか、仮に説明が不足であった場合に、更正決定等の処分が違法となるのか、という点が問題になります。


この点に関して、先日、国税通則法の改正に関する研修を受けた際、(1)処分の際の理由附記が不十分であれば処分はそれだけで違法になること、(2)手続きの違法は処分の取消理由になる(場合がある)ことなどから、調査結果の内容の説明が不足していればその後の更正決定などの処分が違法になるかのような意見を耳にしたのですが、果たしてそうなのでしょうか。

(2)については、これまでの裁判例をみると、むしろ、基本的には調査手続の違法性は後の処分の違法性を導かないとされることが多く、刑罰法規に反するなどの重大な違法がある場合や、調査手続がなされていないと同視できるような場合に限り、処分の違法性をきたすと判断されてきたところです。この点については、以前の記事「国税通則法の改正について」もご参照下さい。今後、通則法改正の趣旨から、この点の判断基準が大きく変わることがあるのでしょうか・・・?

そもそも、上記の「調査結果の内容説明」は、税務調査の内容・結果を納税者に知らせて、納税者に修正申告・期限後申告をすべきか、それとも今後なされる税務署長からの処分を受け(て不服申立てをする)のかを判断するのに足りる材料を提供するとともに、税務調査の正当性を担保することが目的ではないかと思われます。それに、実際の税務署長の処分に際しては改めて書面に理由が附記されることが予定されていることからすると、調査終了段階で口頭においてなされる「調査結果の内容説明」は、主に「納税者が自ら修正申告等をするのか、税務署長から処分を受け(て不服申立てをす)るのか判断するに足りる程度」の説明があればよいのであって、求められている説明の程度・精度が、処分の際になされる理由附記の場合(納税者が処分を受け入れるのか、争うのかを判断できる程度の記載が求められます。)と比べると、やや低くくても(あるいは低い場面があっとしても)、おかしくないという気がしますし、この内容説明が不足していた場合でも、裁判において、この調査終了の際の手続的な違法を理由に処分自体が違法と判断される可能性がどの程度あるのかは疑問だと思います。

 

もちろん、私も、「調査結果の内容説明」の制度は、納税者が早い段階で処分の理由を明確に把握し、今後の対応についての判断材料が得られるという点で、実務上は有益なものだと認識しているわけですが、仮にこれが不足していたとしても、処分の内容や理由附記が正当なものなのであれば、調査結果の内容説明の不足を理由に処分の取消しを求めて争うのは得策ではない、と考えているわけです。


続きを読む

平成26年の国税通則法改正で、審判所の証拠の閲覧・謄写が拡充されます

本年平成26年の国税通則法改正では、国税の不服審査の手続きについて、(1)不服申立期間を2月から3月に延長したり、(2)国税不服審判所において、審判官が職権で調査して収集した資料も含めて、関係人が審判所にある物件の閲覧又は写しの交付(謄写)を求めることができるようになるなど、実務上も重要な点の改正がいくつか行われています。なお、この改正は、改正行政不服審査法 (平成26年法律第68号)の施行日(公布日である平成26年 6 月13日から 2 年を超えない政令で定める日)から適用されることになっております。

今回はこれらの改正のうち(2)について思うところを書いておきます。

まず、改正前は、謄写請求が全く認められていないこと(閲覧のみであるため、当事者は長時間かけて書き写すなどの対応を取らざるを得ないのです。)、審判官の職権収集証拠は対象となっていないこと(なお、処分庁からしても、従前閲覧すらできなかった請求人の提出証拠について閲覧・謄写請求ができることとなりました。)からすると、(2)の改正は大きな前進だといえます。

もっとも、法令の文言上は、担当審判官の質問に対する当事者や関係人の陳述を記載した質問調書は相変わらず閲覧・謄写請求の対象外となっている点では、やはり当事者の立場からすればまだ不十分なのかもしれません(担当審判官の運用で、閲覧等に応じることは違法ではないように思われますが)。なぜなら、この調書の内容が議決・裁決の重要な根拠となる場合があるにもかかわらず、関係人に反論、釈明の機会が得られないまま議決・裁決がなされてしまうことがあるからです。もっとも、この点については、行政不服審査法案の可決の際に、今後検討を行う旨の附帯決議がされていますので、国税通則法についても、近い将来改正が実現する可能性が残されています。

 

次に、今回の改正の影響として、以前と比較すると審判官が得られる証拠が事実上減少してしまう可能性もあるのではないかと思われます。どういうことかというと、審査請求人らが閲覧謄写をした結果、証拠提出の事実や証拠の内容を審査請求人らに知られる可能性があるとなると、審判官の職権調査を受ける者としては、容易に物件の提出要求に応じずに、できるだけ最低限のものに絞ろうとする場合があるかもしれないからです。本来はそれもおかしな話だと思いますが、審判官に質問検査権があるといっても事実上の限界があるため、こういった影響が実際に出てくる場面があるのではないかと考えられるのです。

他方で、従前は審判官の職権収集証拠であれば審査請求人に閲覧もされなかったため、証拠の保持者が進んで証拠の提出を行わず、審判官による職権収集を待つという現象があったのかもしれませんが、今後は職権収集証拠も閲覧謄写の対象となるため、そういった現象は少なくなるものと思われます。

 

以上のとおり、(2)の改正が実務に与える影響は決して小さくないものと思います。


続きを読む

遺言で同族会社へ自己株式を遺贈する場合の税金関係にはご注意を。

遺言をするとき、保有している同族会社の株式については社外の人間に拡散させたくないという気持ちなどから、その同族会社に遺贈しようとする場合があります。

しかし、株式を法人に対して遺贈する場合には意外な税金負担が発生することがあるため、注意が必要です。

というのは、亡くなった個人については、時価相当額で株式を法人に譲渡し、時価相当額の譲渡収入を得たものとみなされて所得税がかかることになりますし(実際には相続人が納税義務を承継することになります。)、また場合によっては、会社が自己株式を取得したことに伴い、同族会社の他の個人株主の自らの株式の価値が増えたことについて、他の個人株主が亡くなった個人から贈与を受けたものとみなされ、贈与税がかかることもあり得るのです。

なお、会社にとっての自己株式の取得については、現在の会社法や法人税法のもとでは資本取引であるとして益金、法人税は発生しないものと基本的に考えられているわけですが、会社に株式の時価相当額の益金が発生したとして法人税がかかるとの見解も見受けられるところではあり、この点は若干不明確なところがあります。

 

法人への遺贈は、同族株主や相続人への税金上の影響がありますし、株式の時価評価額によってはそれらの税金が多額となることもありますので、法人への遺贈は税負担のこともよく考え、税理士さんと相談してから!ということになります。皆さん、ご注意を。

続きを読む

意外な課税(2):離婚の際に不動産を財産分与した方が納税をしなければならない場合がある!

 さて皆さん、離婚の際に不動産を財産分与した場合、税金はどうなるでしょうか?分与を受けた側が贈与税を納めることになるのでしょうか?

 

いいえ、正当な財産分与であれば財産分与を受けた側は贈与税を収める必要はありません(不動産取得税や登録免許税はかかります。)。むしろ、財産を分与した人に譲渡所得が発生し、所得税を収めなければならない場合があります。この点は勘違いをしやすいところですね。

財産分与をした人が不動産をその時の時価で譲渡したものとされ、譲渡による収入が取得価額や譲渡費用を超えて譲渡益が算出された場合には、譲渡所得が発生するため、所得税を納付しなければならないことになるのです。古くから持っている土地ですと、譲渡所得が発生する場合が比較的多いです。

なお、夫婦共有財産を離婚時に持分に応じて分割しただけでは譲渡があったものとはみないこととなっております。形式上一方の名義となっている共有不動産について、他方が不動産全体の分与を受けた場合は、分与した名義人の持分のみを他方に譲渡したものとして譲渡所得を計算することになります。

 

財産分与をすると譲渡所得が発生しそうな場合には、以下のような方法を検討する必要があると思いますので、税理士さんにご相談されたほうがよいでしょう。

所有期間5年を超える土地建物の譲渡については軽減税率が適用され、また離婚「後」に「居住用」の家屋等を分与する場合には、最大3000万円の特別控除やさらなる軽減税率の適用が受けられる場合があります。

また、結婚20年以上の夫婦間で、「離婚前」に居住用不動産又はその取得資金を贈与しておき、受贈者が贈与税につき2000万円までの配偶者控除(+110万の控除)を受ける方法もあります。

 

離婚の際の不動産の財産分与については、税金にもご注意を!

続きを読む

意外な課税(1):贈与した側が贈与税を納付しなければならない場合がある!

さて皆さん、贈与税は基本的に贈与を受けた側が支払うもの、ですよね。

ところが、贈与を受けた側が贈与税の納付をしなかった場合には、なんと贈与をした人もその納税義務を負担することになってしまうのです。これを連帯納付義務といいます。

 

相続税法第34条《連帯納付の義務等》第4項は、「財産を贈与した者は、当該贈与により財産を取得した者の当該財産を取得した年分の贈与税額・・・に相当する贈与税について、当該財産の価額に相当する金額を限度として、連帯納付の責めに任ずる。」 と規定しているのです。

税の徴収のためとはいえ、贈与税の連帯納付義務という制度は一般人にはなかなか理解しがたい制度ですよね。しかも、弁護士としては、連帯納付義務については正面切っては争いようがないケースがほとんど、というのが正直なところです。

 

しかも、連帯納付義務の負担には贈与税の延滞税などの附帯税まで含まれてくるので、贈与後長年が経過して、贈与税の額が膨らんだ後に突然税務署から通知があって、贈与者がその全額について連帯納付義務の履行を求められることになりかねません。

ですから、贈与をするときには、贈与を受けた人が確実に納税をしたかをきちんと確認しておいた方が良く、場合によっては贈与時点で代わって納付した方が良い場合すらあります。不動産などの資産を贈与する場合に、納税資金の現金も合わせて贈与する方法をとられる方もおられます。

 

皆さんも、贈与税が発生する贈与をするときは、連帯納付義務についても考慮に入れておいて下さい!

続きを読む

税理士バッジと弁護士バッジ

税理士バッジと弁護士バッジの写真

本日税理士会で税理士バッジを受領してまいりましたが、黒色の部分も多いのでずいぶんスッキリした感じのバッジでした。これならスーツにしていても全く違和感ないですね。

一方、弁護士バッジは、立体感があってかなりボリューム感がありますし、特に私の場合は昨年再登録したばかりで新しく金ピカなので、かなり目立ちます。税理バッジと比べるとその辺りがよく分かりますね・・・。

続きを読む

税理士登録が完了しました!

2014年6月25日付で税理士登録が完了しました!

 

私は弁護士ですが税金関係の事件を取り扱う関係や、税務、税理士さんのことをもっと知りたいので、税理士登録をしました。これまでは「通知」という手続きをとって、事件処理の必要がある場合に大阪国税局関内において税務を取扱うことができるようにはしておりましたが、より広く税務を扱うことができるようになりました。

 

といっても、私自身が税金の申告業務の依頼を受けたりはしませんので、その点あしからずご了承下さい。申告については私の周りの税理士さんをご紹介させて頂きます。

私自身は今後も、あくまで税金紛争の処理・予防という形で、関与していきたいと考えております。

今後ともどうぞ宜しくお願いします!

 

続きを読む

平成27年から相続税の発生件数が1.5倍に!相続税対策はすんでますか?

  前回の記事に続いて相続税の話題です。

 

  国税庁の「平成24年分の相続税の申告の状況について」というHPによると、この年の死亡者数約 126 万人のうち相続税の課税対象となった人の数は約5万2千人であり(その割合は 4.2%)、死亡者1人当たりの相続財産の価格は2億557万円であるとされています。

 さて、平成27年1月1日以降に開始した相続については、相続税の基礎控除額が従来の6割に大幅減少となります。

たとえば、妻と子供2人が相続人に当たるという場合、従来なら基礎控除額が8000万円だったのに、平成27年からは4800万円しかなくなりますので、相続財産が4800万円~8000万円ほどあるという方は新たに相続税が発生する可能性が発生したことになります。つまり、保有資産が、不動産が2500~3000万円、預貯金や株式などの金融資産が合計3000万円というような「多少生活に余裕のあるご家庭」の方であれば、相続税の負担が発生する可能性があることになってしまったわけです。 

  基礎控除額の大幅減少に伴い、上記の相続税の課税対象となる人の割合が4%から6%ほどに増えるといわれております。以前から比べると50%も増えるわけですが、他方で、全体の2%しか増えないのか、それなら自分は関係ないのではないかとお思いの方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、これまで一人あたりの相続財産の価格が2億円を超えていたということから分かる通り、今まで相続税がかかっていた層の人はいわゆる富裕層の人が多く、税理士さんと相談して相続税対策もそれなりにしてきた人が多く占めていました。

 これに対して、新たに相続税がかることになる方々には、自分たちは富裕層ではないと認識しておられる方や(プライベートでは)税理士さんとの付き合いがないという方が多いため、相続税対策の必要性の有無についてきちんと認識しておられない、あるいはある程度は認識していても実行を後回しにしている方がたくさんいらっしゃるように感じます。

 相続税対策をしておけばさきほどの2%に入らなくてもすむかもしれませんし、入るとしても不要な相続税を払わずにすむかもしれません。後になって後悔することにならないように、また安心して今後の生活を送れるように、相続税対策は急いでしておくべきでしょう。相続税は多分かからないと思うという方でも、税務相談をして確認しておくべきだと思いますし、相続税対策が必要な場合に一定の費用がかかったとしても、それに見合う以上の経済効果が得られるのが通常です。

 

 まずは専門家に相談をしましょう!

 

 トップページ

 

続きを読む

相続税の調査はいずれやってくる!

国税庁のHPには「平成24事務年度における相続税の調査の状況」がのっています。

これをみると、「実地調査の件数は12,210件、このうち申告漏れ等の非違があった件数は9,959件で、非違割合は81.6%(平成23事務年度80.9%)となっています。」との記載が。

相続税がかかる件数が年間約50,000件ですから、かなり高い確率(約4分の1)で税務調査が行われ、しかも調査が行われてしまうと8割以上の確率で相続税の追徴が発生することになっていることが分かります!

しかも、このHPには「追徴税額(加算税を含む。)は610億円(平成23事務年度757億円)で、実地調査1件当たりでは500万円(平成23事務年度549万円)となっています。」とも記載されています。

先ほど8割以上の確率で追徴が発生すると書きましたが、その金額は税額にして500万円以上という恐ろしい結果が!

 

今回は特に平成24事務年度をあげて説明していますが、例年その状況はさほど変わらないといって良いと思います。

このような調査の状況からすると、いずれは相続税の税務調査を受けるんだという意識で臨むことが必要です。ですから、許容範囲を超えた極端・危険な相続対策はしないこと、相続財産を漏らさずに適切に申告をしておくこと、そのために予め資料をきちんと整理・保存しておくことが大切だと考えられます。

 

 トップページはこちらから

 

続きを読む

子どもら名義の預金の取扱いにはご用心

 昔から、親が相続対策の一環?で生前に子どもなどの名義で預金をしておくことがあります(なお、現在は金融機関での本人確認が厳しくなっているので、親が勝手に新たにこのような預金口座を作るのは以前より難しいと思います。)。

しかし、このような方法を取っていても、その預金が親の相続財産から外れるとは限りません。名義は子どもら名義でも実際には未だ親の財産であると税務署から認定され、相続税の対象財産(相続財産)とされることが度々あるからです。

さて、こういったことにならないようにするためには、きちんと子どもらへの贈与という形を取り、子どもらに預金の存在をきちんと知らせて自分のものとの認識を持っておいてもらうことや(税務署の調査があった場合には、親から贈与を受けていると回答してもらう必要があります。)、預金通帳や印鑑などを子どもらに渡しておくことなど、実態としても親の相続財産から外しておくための措置が必要だと考えられます。

 

子どもらの贈与税の観点からは、課税を完全に避けたいのであれば、毎年子供らそれぞれに対して贈与税の基礎控除額110万円の範囲内で贈与(口座への振込)をすることが必要となりますが、あえて多少の贈与税の申告・納付をして公的な証拠を残すという方法も考えられます(将来の相続税の減税という観点からも望ましい場合があります。)。

なお、毎年一定額(たとえば110万円など)の贈与をする場合に注意すべき点としては、最初の年に将来分も含めて贈与があったもので単にその支払いを分割で毎年しているにすぎないというような認定を受けることがないようにしなければなりません。仮にこのような認定を受けると、最初の年に全額の贈与があったものとされるため、税率が高くなってしまいますし、毎年の基礎控除を生かすことができず、子どもらの支払う贈与税が多額になるおそれがあるからです。ですから、毎年毎年、改めて贈与契約を行い、契約書を作成・保存するのが望ましいといわれているわけです。

 

もっとも、相続開始前3年以内の贈与財産については、法律によって相続財産とみなされて相続税が課されることになっていますので、この場合は、相続税の申告漏れに注意して下さい。なお、相続財産とみなされたものについて以前に支払った贈与税があれば、その分は相続税の額から差し引くことができます。

 

 トップページへ

 

続きを読む

競馬脱税事件、2審も1審と同じくハズレ馬券を雑所得の必要経費と判断

先日判決が出る前にこの件に関する記事を書いていましたが、肝心の判決後の記事が少し遅れてしまいました。ご承知のとおり、大阪高裁は5月9日、競馬脱税事件について、一審判決を支持し、検察側の控訴を棄却したとのことです。

検察側の主張は連続して認められなかったことになります(判決の詳細は分かりませんが、報道の内容や結果からすると1審判決よりもさらに明確な負けのようです。)が、それでもやはり検察側は最高裁へ上告をするのか?という点に注目が集まるところですね。

 

5/9に、注目の競馬所得脱税事件の大阪高裁判決が!

 GW後の5/9には、競馬ファンも税務関係者も注目している判決が大阪高裁で出されることになっています。競馬による所得を国に確定申告していなかったために起訴された男性の所得税法違反被疑事件の判決です。
 

 国は基本的に、競馬による所得はパソコンを利用して継続的・反復的に馬券の注文をしている場合でもあくまで「一時所得」であって、その経費となるのは当たり馬券の購入金額のみであるから、外れ馬券の購入金額は経費として認められないという立場を取っており、今回の事件でも検察側はこの前提に立って脱税額が計算しています。実際には、払戻金が約30億円で、馬券の購入金額が29億弱であり、その差額は1億4000万円ほどだったにもかかわらず、被告人は約5億7000万円の脱税をしたとして起訴されたため(※刑事事件とは別に課税処分もされています。)、競馬ファンも巻き込んで大変な論争が起きているわけです。
 一審の大阪地裁は、一般論としては馬券購入による所得は反復されていた場合であっても一時所得であるとしながら、被告人の場合は、馬券購入が一般と異なり、多数・多額で機械的、網羅的なものであること、過去の競馬データの詳細な分析結果等に基づき、利益を得ることに特化したものであることなどから、その所得は雑所得であり、外れ馬券の購入費用も必要経費に当たるとしました。その結果、脱税額は約5200万円と認定され、懲役1年の検察官の求刑に対して、懲役2月・執行猶予2年の刑が言い渡されました。これは、納税者側の主張が相当程度認められたものといって良いと思います。

 

 さて、二審の大阪高裁が大阪地裁の判決を支持するのか否か、今後も同種事案の行政訴訟(税務署長が上記見解に立って行った課税処分の取消しを求める訴訟)が進行する見込みであるだけに、私も5/9の大阪高裁の判決には注目しています。

続きを読む

記帳や帳簿・書類の保存をしていなかったら重加算税がかけられてしまうのか??

個人事業者の皆さん、記帳や帳簿書類の保存、きちんとしていますか?

今年の平成26年1月から、事業所得、不動産所得又は山林所得が生じる業務をしている全ての方(白色申告者を含む)に、記帳と帳簿書類の保存義務を負わせる改正の適用が始まっています。
 これまで記帳・帳簿書類保存の義務があるのは、青色申告者と、白色申告者のうち前年分あるいは前々年分の事業所得等の金額の合計額が300万円を超えた人でした。記帳・保存制度の内容は、国税庁の「個人で事業を行っている方の帳簿の記載・記録の保存について」をご覧ください。

 

記帳は正式な複式簿記ではなく「簡易な方法」によるものであってもよいとされておりますが、正式な帳簿は原則7年、それ以外の書類は5年の保存義務があるとされています。  

所得税の申告の必要がない場合であっても、これらの義務がありますので、この点お間違えないように。また、消費税について、仕入れの消費税を控除して税額を計算する「仕入税額控除」の適用を受けるために、もともと帳簿と請求書等を保存している方も多かったとは思いますが、今年からは、所得金額の大小や、消費税の仕入税額控除の適用を受けるか否かにかかわらず、事業者は記帳・帳簿書類保存をしておかなければならないということになります。

 

今回の改正の影響について一言。

 

まず、今回の改正にともなって、これらの義務違反自体について新たに罰則がもうけられたわけではありませんので、改正後も刑事罰を受けるおそれはありません(もちろん、悪質な場合に、その点も考慮され、不正な行為により税金を免れたとして脱税事件になる場合はあるでしょうが)。

 

しかし、今回の改正で、事業者は個人であっても所得金額の大小にかかわらず記帳や帳簿書類保存の義務があるという建前が強固なものになったわけで、今後、これらの義務を果たしていなかった場合に、従来よりも悪く評価される可能性があるのかもしれません。

例えば、事実関係を仮装又は隠ぺいすることによって税金を納めていなかった人には、本来の税金に加算して重加算税という重い税金が課されることがありますが、平成26年以降は、記帳や帳簿書類保存の義務を果たしていなかったことが隠ぺいに当たる可能性が一層強くなっていることを示唆する学者さんが実際にいらっしゃいます。

今後、重加算税について、はたして本当にそういった判断をする裁判例が増えてくるのかはまだ分かりませんが、重加算税の処分を争う立場の弁護士としては気になるところです。

 

  TOPページはこちらから

 

続きを読む

平成26年税制改正大綱に、相続資産の譲渡に関する取得費加算特例の改正が。納税資金確保に影響!

昨年末に定まった平成26年税制改正大綱には、平成27年1月1日以後に開始する相続・遺贈により取得した財産を譲渡した場合の取得費加算特例に関する改正事項が盛り込まれています。

相続により取得した土地等を「相続開始のあった日の翌日」から「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」までの間に譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる租税特別措置法の特例があるのですが(詳細は国税庁の「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」をご覧ください。)、今回の税制改正大綱では、この特例について、取得費に加える金額を、「その者が相続した全ての土地等に対応する相続税相当額」から「その譲渡した土地等に対応する相続税相当額」に改める、とされています。
 つまり、A・Bの土地を相続し、Aのみを譲渡した場合、これまでであればA・Bについて納めた相続税をAの取得費に加算できましたが、改正後は、Aについて納めた相続税のみが取得費に加算されることになります。その結果、従来よりも相続人の譲渡所得及び所得税の額が増えることになります。
 相続人が複数の土地を相続する場合、その中の一部の土地を売却して納税資金を準備することが多いので、この改正が実現すれば相続人の納税資金確保の点では痛手といえるでしょう。

 

 TOPページはこちらから

続きを読む

自分が「特定役員」だったと先日はじめて気づいた件

 最近、周りの方に教えてもらってはじめて気づいたことがあります。

 私は昨年7月、「任期付職員」として3年間務めた国税不服審判所を退職し、その際に3年分の退職金を受け取ったのですが(実は任期付職員でも退職金を頂けるのです。)、その際の源泉徴収の金額の計算上、自分が「特定役員」に当たるため、退職所得の金額が2分の1になっておらず、源泉徴収税額が通常の倍になっていた、ということです。

 税額が些少だったからかもしれませんが、教えて頂くまで自分が「特定役員」だと全く気づいていませんでした。

 一般に、退職所得の金額は、受け取った金額から退職所得控除額(※下記参照)を引いた後の金額に2分の1をかけた金額となるのですが、平成 25 年1月1日から、「特定役員」については、2分の1をかけることができないことになっています。
 特定役員とは、法人税法上の役員、議員、 国家公務員及び地方公務員の勤続年数(1年未満の端数がある場合はその端数を1年に切り上げたもの)が5年以下である人をいいます。詳しくは、国税庁のQ&Aをご覧ください。

 

 さて、私もこの規定の存在自体はある程度認識していたのですが、もともとこの規定を設けた趣旨が「天下り」や「わたり」(公務員や議員が、短期間で法人の役員を渡り歩き、その度に退職金をもらうこと)について税務上の旨味をなくして抑制しようというものであったため、自分の中でそのイメージが強く、通常天下りやわたりとは無関係な「任期付職員」にまで適用があるというイメージがありませんでした。

 ですが、改めて条文などを見ると、公務員は全て「役員」に含まれることになっており、私のような立場の任期付職員は「一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律」に基づいて採用された国家公務員なので、「役員」に含まれることになり、しかもこの法律に基づいて採用された職員の任期は5年未満なので、自動的に「特定役員」に当たることになるんですね。

 なるほど、納得しました。イメージ・思い込みが先行しており、これは盲点でした。

 良い勉強になりました。

 

 (※)退職所得控除額

 勤続20年以下:40万円☓勤続年数

 勤続20年超:800万円+70万円☓(勤続年数−20年)

 

 TOPページはこちらから

 

続きを読む

2審も無罪!ストック・オプションに関する脱税事件

 以前こちらのブログ(ストック・オプションに関する所得税法違反事件に無罪判決)で紹介したストック・オプションに関する脱税事件ですが、2審の東京高裁も1月31日に、被告人が積極的な所得秘匿工作を行った形跡はうかがえないと判断し、脱税の故意を認めなかった1審判決を支持して、検察の控訴を棄却したとの報道がされています。

 ストック・オプションに関しては、最高裁平成18年10月24日判決からの流れもありますし、この件はこれで勝負あったように思います。

 先日も神戸地裁で脱税事件に無罪判決が出たところであり、脱税事件の刑事裁判で従来以上に故意などの認定が厳格化しているのか、あるいは査察・検察が故意に疑いの残る否認事件でも強引に告発・起訴しているのか、それ以外の要因によって無罪判決が続いていのかは分かりませんが、刑事裁判では一般市民にとって常識的な言い分が以前よりも通りやすくなってきているのかもしれませんね(そうだと良いのですが・・・。)。

 

 

 

 

 TOPページはこちらから

神戸地裁で相続税法違反被告事件に無罪判決が!

 今月の17日、相続税約1億4千万円を脱税したとする相続税法違反の事件(いわゆる脱税事件です)で、神戸地裁が無罪を言い渡す判決が出されました。私の神戸の先輩弁護士が被告人の代理人をされていた事件です。なお、事件の内容については直接お聞きしておりませんので、以下は報道を見ての記事になります。

 無罪判決獲得、努力のたまものですね。弁護士なら一度は経験したいものですが、あいにく私にはまだ経験がありません。そもそも刑事事件はあまりやっていませんので(現在も引き受ける刑事事件は脱税事件くらいです)、当たり前なのですが・・・。

 本題に移ります。報道によると、裁判所は、被告人の誤解などによる過少申告で、不正に免れる意思はなかったとして、無罪を言い渡したようです。裁判所は、申告漏れの多くは夫の名義でない預金口座などにみられ、夫以外の名義の口座などを申告が必要と認識していなかった可能性は否定できないと判断したとのことです。

 本来は課税価格約10億6千万円、相続税額約2億2千万円のところ、被告人は預貯金などを課税価格から除外して、課税価格約7億3千万円、相続税額約8千万円と申告しており、相続税約1億4千万円の支払いを免れたとして起訴されていたようです。

 

 この事件のように、被相続人が生前に他人名義で預金をしている場合に、その預金を相続財産に含めずに申告すると、税務署からその預金は相続財産であるとして相続税の更正処分をされることになり、また他人名義を利用しているため仮装隠ぺい行為によるものであるとして重加算税の処分もされることも多く、さらには不正の行為によるものであるとして刑事事件として起訴されることもあります。

 こういった事件では、相続人が他人名義の口座の作出に関与していたか、預金口座の存在やその預金の原資が被相続人のお金であることを認識していたか、といったことが重要となります。

 

 今回とよく似たケースで、財産が相続人名義になっている例もかなりあります。この場合は、相続の問題なのか贈与の問題なのかかがよく問題になります。被相続人が生前に相続人に贈与したということで相続人名義の預金に振り込んでいるというのであれば、贈与税の問題はともかく、本来は相続税の場面ではないことになります(もっとも、相続・遺贈により財産を取得した人が相続開始前3年以内に受けた贈与財産については結局、相続税の課税財産になることには注意が必要です。)。贈与とされるためには、相続人がその預金口座の存在を明確に認識し、預金は自分のものと認識している、相続人が通帳やキャッシュカードを保有して管理しているといった事実関係が必要となります。

 そういった事実関係がない場合には、相続人名義の預金であっても相続財産に含めて申告しなければならないことになり、これをしてないと、相続税の更正処分のみならず、重加算税の処分、刑事事件の起訴まで受ける可能性があることになります。

 

 ところで、今回の裁判の報道を見て個人的に再認識したこと。それは、この件の被告人の相続財産の申告割合は7割近く(税額ベースの申告割合は36%程度ですが)ありますが、もしこれが逆の3割だったら争うこと自体が難しいのではないか(被相続人は相続税の軽減を狙って明らかに意図的に他人名義を利用しており、当然相続人にもその存在や意図を明らかにしていたはず、相続人も被相続人名義の財産が少なすぎるため調査して知っていたはず、などの推認がとても成り立ちやすくなるので。)、この類の事件では、相当割合以上の相続財産について適正に申告されていたという前提事実がない場合には、特別な事情(被相続人が相続税軽減以外の目的で他人名義を利用していた事実、相続人が被相続人の事情や他人名義の財産をおよそ知り得なかったことなど)がない限り、処分や刑事事件を争って勝つのは難しいのかも、という当たり前のことです。

 

 実例から再認識させられることは多いですね。

 

続きを読む

相続時精算課税制度を利用すると、相続の放棄はできなくなるのか?

いいえ、相続時精算課税制度を利用した生前贈与を受けていた場合でも、相続の放棄はできます(相続の放棄は被相続人の死亡及び自分が相続人であることを知ったときから、原則3か月以内にしなければならないという期間制限にはご注意下さい)。相続時精算課税制度や相続放棄の関係では、注意すべき点もありますので、以下の記事をご覧下さい。

なお、相続時精算課税制度の概要は、国税庁のページなどをご覧下さい。 

1.相続時精算課税制度を利用した贈与は、ざっくり言えば、相続の一部前倒しであることや、推定相続人(相続が開始した場合に通常相続人となるはずの人のことです。)が被相続人の財産を処分した場合などに、相続を承認したものとみなされ(法定単純承認)、相続の放棄ができなくなることなどから、相続時精算課税制度を利用した生前贈与を受けていた場合に、相続の放棄ができなくなるのではないかとの疑問を持つ方がいらっしゃいます。

しかし、相続時精算課税制度という税制度を利用したからといって民法上の相続の放棄ができなくなるわけではなく、推定相続人が被相続人の生前に贈与(相続時精算課税制度を利用した贈与であっても)を受けていただけでは法定単純承認にもなりませんし、他に特別な法令の規定もありません。

したがって、相続の放棄は可能ということになります。

 

2.相続時精算課税制度を利用した場合には、税法上、贈与財産は相続によって取得したものとみなされ(あるいは贈与財産の価額が相続税の課税価格に加算されることになり)ます。ですので、相続時精算課税制度を利用した贈与をした人の死亡時に、贈与を受けていた推定相続人が相続放棄をした場合、民法上は、その推定相続人は当初から相続人ではなかったことになり、相続によって取得する財産はないのですが、税法上は、その贈与財産は相続によって取得したものとして相続税の計算がされることになります。

 

3.ところで、相続時精算課税制度を利用しておきながら、相続の放棄をすることが債権者を不当に害するので取り消される(詐害行為取消権の行使を受ける)のではないかという疑問を持つ方がおられるかもしれません。

相続の放棄は詐害行為取消権の行使の対象とならないとされております(最高裁昭和49年9月20日判決)ので取り消される心配はないのですが、推定相続人が相続放棄によって被相続人の債務を相続しないことを予定しつつ、唯一ないし重要な財産の生前贈与を受けていたような場合には、そもそも生前贈与自体が詐害行為であるとして取り消される可能性があることには注意が必要です。

 

4.また、相続時精算課税制度を利用した贈与であっても、民法上は、通常の贈与ですから、他の相続人の遺留分を侵害する贈与なのであれば、遺留分減殺請求権の行使を受ける可能性があることには注意しなければなりません。

通常、被相続人から相続人に対する生前贈与は古いものであっても原則として遺留分減殺請求の対象となるとされているのですが(最高裁平成10年3月24日判決)、相続発生後に、推定相続人が相続放棄をすれば、推定相続人は相続人ではなくなるので、民法1030条の規定通り、両当事者が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた贈与でないのであれば、死亡前1年以内になされた贈与でない限り、遺留分減殺請求権の行使の対象とならない、ということになり、遺留分減殺請求を受ける場面は若干少なくなります。

 

5.なお、相続を放棄すると(他に遺言で包括遺贈を受けていない限り)、被相続人の債務を相続税の課税価格から差し引く「債務控除」ができなくなり、相続時精算課税制度の適用を受けた者が相続放棄をした場合でも、包括受遺者に該当しない限り、債務控除ができなくなることに注意が必要です。

 

皆さん、相続時精算課税制度を利用した生前贈与をする際には、贈与をする側も受ける側も一緒に専門家にご相談下さい。

当事務所の「相続の放棄」のページもご覧ください!

 

続きを読む

損害賠償金の課税、消費税にもご注意を。

前回、金融取引に関する損害賠償金(和解金)に対する課税処分についてお話ししましたが、昨年は、東日本大震災による東京電力から支払われる賠償金にもやはり税金がかかるのかが話題になっていました。

 

震災に関する税制上の取扱いについては特例的なものもありますが(国税庁のHP「東日本大震災により被害を受けた場合等の税金の取扱いについて」参照)、東電からの賠償金については、「東京電力㈱から支払を受ける賠償金の所得税法上の取扱い等について」に記載されているとおり、基本的に、所得税法の規定通り、通常の損害賠償金と同様の考え方で整理されているものといえます。

したがって、

  1. 人の心身の損害(人損)に対する慰謝料その他の賠償金や、不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害(物損)に対する賠償金は、非課税になります。
  2. ただし、必要経費を補てんするための賠償金(営業損害のうち追加的費用、業務用資産及び棚卸資産の検査費用に対するもの)や、営業損害のうち減収分の逸失利益に対する賠償金(棚卸資産の喪失又は減少に対するものを含む。)は、事業所得の収入金額に算入することになります。
     もっとも、前者については、賠償金は収入になりますが、必要経費も控除されますので、実質的には所得は増加しません。
  3. また、給与の減収分に対する賠償金は、雇用主以外の者から支払を受けるものであるため、一時所得の収入金額になります。
続きを読む

損害賠償金に課税された方、諦めるのは早いかもしれません!

神戸地裁は、今月13日、旧ライブドアの粉飾決算事件で株価暴落の被害を受けた方が、損害賠償請求訴訟を起こした結果、同社から支払いを受けた和解金約1億数千万円に約3900万円の課税をしたのは違法であるとして、課税処分の取消しを求めて国を訴えていた訴訟について、不法行為に基づく損害賠償金は非課税であるとして、和解金のうち遅延損害金に対する約1000万円の課税を除いて、残り約2900万円分の課税処分の取消しを命じる判決をした、との報道がされています。

これは、和解金が、所得税法施行令30条2号「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払いを受ける損害賠償金」に該当するため、所得税法9条1項16号(現17号)により非課税所得になるという判断でしょう。

尚、遅延損害金部分については、裁判例でも一般に雑所得と考えられており、今回の裁判例でも非課税とはされていません。

 

以前には、商品先物取引、外国為替証拠金取引(FX取引)に関して被害者が受け取った和解金や損害賠償金について、非課税とされた裁判例(名古屋高裁平成22年 6月24日判決、福岡高裁平成22年10月12日判決、平成23年6月23日裁決)があります。

 

このように、金融取引に関する損害賠償金(和解金)に対して課税処分がなされる例は少なくなく、損害賠償金を得た後の申告の要否については注意したいところです。特に、和解金については課税処分を受けやすいため、和解に至る経緯が明確に分かる形で書面を残しておく必要があり(裁判所から、その時点での一定の見解を記載した和解案の提案書を出して頂くのがよいかと思われます。)、和解金の名目も解決金とするのは避けて損害賠償金としておいた方が良いかと思われます。

 

他方で、ある収入によってマイナスの状態が元の状態に復元されただけならば課税しないとの原則的な税法の発想は、裁判官にもストレートに伝わりやすいため、税務訴訟において、この損害賠償金の非課税所得該当性という問題については、他の問題よりも納税者勝訴の可能性が高いともいえそうです。

ですので、課税処分を受けた方は、すぐに諦めないで、まずは税金に詳しい専門家にご相談頂いた方が良いと思われます! 

 

続きを読む

固定資産税が高すぎるので争いたい!という場合に検討すべき点

 最高裁第二小法廷は、今年の7月12日、固定資産税について、固定資産課税台帳に登録された土地の価格(以下「登録価格」といいます。)が、固定資産評価基準(総務大臣の告示によって定められるもので、以下「評価基準」といいます。)に基づいて算定される価格を上回る場合には、当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず、その登録された価格の決定は違法となるという判断をしました。

 「土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格の決定が違法となるのは、当該登録価格が、(1)当該土地に適用される評価基準の定める評価方法に従って決定される価格を上回るときであるか、あるいは、(2)これを上回るものではないが、その評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものではなく、又はその評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情が存する場合であって、同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るときであるということができる。」というものです。

 これまでも最高裁は、土地の登録価格が客観的な交換価値としての適正な時価を上回れば登録価格の決定は違法となるという一般論を示していましたが、今回の最高裁判決は評価基準との関係をより明確にしたところに特に意味があると思います。


 今回の最高裁判決によると、
(1) 登録価格が、評価基準にしたがって算定される価格よりも高いとき(※登録価格が適正な時価より低くともよい)
(2) 評価基準による算定をすることが適切でなく、かつ登録価格が適正な時価よりも高いとき
には、登録価格の決定が違法となることになります。

 

 そうすると、これから登録価格について争おうとする側としては、まずは評価基準にしたがって登録価格が算定されているといえるか否かを検討し、次に、そもそもその評価基準によって登録価格を算定するのが適切でないといえるか否か、適切でないとすれば、さらに登録価格が周辺の取引価格や鑑定価格等から導かれる適正な時価を上回っているか、を検討することになります。

 

 さて、今回の最高裁判決によって、上記(1)に該当することについて立証に成功すれば、登録価格を評価基準に沿った価格へ引き下げさせることが可能であることが明らかにされたわけですので、今後、登録価格について争うか否かを検討する側としては、客観的な時価の追求も重要ですが、まずは、評価基準に則って算定されているかを綿密に検討することが必要不可欠であるといえるでしょう。

続きを読む

追徴課税・追徴税・追徴 どう違うの?

 「追徴」という言葉は、単純に考えると「追加で徴収されるもの(お金)」というような意味合いですが、色々な場面で使われておりますので、その意味について記載をしておきます。 

 

 まず、報道で「追徴課税」(又は「追徴税」)という言葉をよく聞きますが、追徴課税というのは一般に、税金の申告漏れなどがあった場合に、後から課される税金のことを言い、正式な法律用語というわけではありません。

 追徴課税は、主に過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税といった加算税といわれるものを指しますが、いずれも刑事罰(罰金刑)のようなものではなく、税金(の処分)の一種を指します。

 

 また、現在では「追徴課税」の一種又はその典型例として重加算税が挙げられるわけですが、もともとは、重加算税の前身として「追徴税」という名称の税金があったので、そのことを知っておられる方もいるかもしれませんね。

 

 ところで、税法違反の刑事事件(脱税事件)についても、一般の刑事事件と同じく「追徴」という制度があります。刑事事件の判決の一種として、犯罪に利用した物や犯罪によって得られた物の所有権を国が取り上げる「没収」がありますが、何らかの事情で没収できないときには、その価額を「追徴」する判決(要するに、金銭の支払を命じる判決)をすることができるのです(刑法19条の2)。この「追徴」を言い渡された金額を「追徴金」と報道されることが多いです。

 「追徴」は刑事裁判特有の法律用語ですね。

 

 追徴課税・追徴税・追徴の意味、分かって頂けましたでしょうか?

 

 

 

 

続きを読む

制限超過利息に関する後発的更正の請求についての東京地裁H25.10.31判決

報道によると、旧武富士が利息制限法上の制限を超過した利息収入に基づいて納付していた法人税について、過年度に得た制限超過利息が無効であることが法的に確定しため、過年度の税金を払いすぎていたことになったとして、会社更生中のTFK(旧武富士)の管財人が、国税通則法23条2項1号を根拠とする「後発的更正の請求」をしたところ、税務署長から更正を拒否する通知処分を受けたため、その取消しと2374億円余の返還を国に求めた訴訟において、東京地裁は10月30日、請求を棄却する判決をしたそうです。

 

「更正の請求」は、確定申告書を提出した後に、所得金額や税額の計算に誤りがあり、や法律に従っていなかった点がある場合などで、申告等をした税額等が実際より多かったときに正しい額に訂正することを求める場合の手続きで(通則法23条)、中でも、課税標準や税額の計算の基礎となった事実に関する訴訟の判決によって、計算の基礎とした事実が事実でなかったと確定したなどの事由が生じたときに、その事由が生じた日の翌日から2か月以内にすることができるのが「後発的更正の請求」です。

  

さて、法人の所得については、当期において生じた損益はその発生事由を問わず、当期において経理処理すべきものであって、その発生事由が既往の事業年度の損益に対応するものであっても、その事業年度に遡って処理はしないのが一般的な会計処理であり、法人税法上も、収益や原価・費用・損失の額は公正妥当な会計処理の基準に従って計算されることになっているため(法人税法22条4項)、これまでの判例等によれば、仮にある事業年度において過去の事業年度の収益が過大となる事由が発生した場合であっても、そもそも、企業会計上も法人税法上も、過去の事業年度の収益の計算が遡って過大であったということにはならないため、通則法23条2項1号を根拠とする後発的更正の請求は認められないと一般的には解されているように思われます。

今回の判決の内容や理由については情報がないため分かりませんが、その結論についてはこれまでの一般的な理解に沿うものではないかと思われます(通常人の感覚に合致するかどうかは別ですが・・・。)。

 

ところで、法人税については、会社法上確定した決算に基づいて法人税の申告書を提出すべきとする確定決算主義がとられています(法人税法74条1項)。

この点に関して、会計の世界では、近年、「過年度遡及修正」に関する会計基準が定められており、誤謬による過年度決算の遡及修正も認められているところですが、そもそもこの過年度遡及修正は主に、過去からの累積的な影響額を当期の期首の金額に反映させるためのもので、過去の計算書類の確定や税務申告に影響を及ぼすものではないとされています(過年度の所得金額や税額に影響を及ぼすものではなく、法人税の修正申告も不要とされております。)。したがって、仮に「過年度遡及修正」が行われた場合であっても、修正した内容の計算書類や決算について確定し直したことにはなりません。 

また、会社法上、過年度の決算自体のやり直しが認められているということもできないと思われますので、過年度の決算を確定し直した結果として過年度の申告税額が過大なものとなったことを理由とする後発的更正の請求は認められないものと考えられます。

 

以上によれば、現在でも、法人税については、通則法23条2項1号に基づく後発的更正の請求による過年度の所得金額や税額の是正は一般的には認められていない、といってよいのではないかと考えられます。

このような観点からすると、今回の訴訟に関して、原告側が控訴をするか否かは分かりませんが、今後その主張が裁判所で認められるためには、越えなければならない壁があるといえそうです。

続きを読む

現在は、税務事件が多いですね。

 本年度の開業以来、クーリエ法律事務所では税務事件の問い合わせや依頼が多く、現在は業務の過半を占めている状況です。

 勿論、相続や交通事故をはじめとする他の事件も頑張っていきますが、今後とも税務事件には注力していきたいと思います!

 

TOPページには、こちらから

続きを読む

税理士業務の開始通知をしました。

 昨日、大阪国税局長より税理士業務開始通知受領書が届きました。これで、「通知弁護士」になり、弁護士ではあるけれども、大阪国税局管内での税理士業務も随時できることになりました。

 弁護士は、弁護士法3条によって当然に税理士の事務を行うことがができると規定されていますが、この規定より後に定められた税理士法51条1項では、「弁護士は・・・国税局長に通知することにより、その国税局の管轄区域内において、随時、税理士業務を行うことができる」とされており、これらの条文の関係や読み方については若干争いがあるところですが(裁判でも争われていますが、詳細は割愛します。)、今回税理士通知を行ったことで「通知弁護士」になり、大阪国税局管内で税理士業務を随時行うことについての疑義がなくなったので、実務的にはとりあえず解決です。

続きを読む

信託の会計処理に関する判例(東京地裁平成24年11月2日)の紹介

本日は、ややマニアックですが、信託の会計処理・税務処理に関する重要判例(東京地裁平成2411月2日・平22(行ウ)693号事件)の簡単な紹介です。京都大学の岡村忠生教授が主宰しておられる信託税制研究会において、この判例についての報告を先日行ってきたところです。

 事案の概要は、原告の銀行が、保有する住宅ローン債権を信託して、優先受益権と劣後受益権を受領し、優先受益権を投資家に売却すると共に劣後受益権を原告が保有する流動化取引を行い、平成16年3月期ないし平成18年3月期において受領した、劣後受益権に対する収益配当金の一部について、償却原価法を適用する会計処理を行った上、法人税の益金の額及び消費税の資産の譲渡等の対価の額に含めずに確定申告をしたところ、税務署長が、収益配当金は全て益金等の額に含まれるとして、法人税の更正処分等をしたため、原告がそれらの処分の取消しを求めて訴訟を提起したというものです。

 償却原価法とは、債券や債権の取得価額と額面金額が異なる場合(額面より高い額、あるいは低い額で取得した場合)に、満期までの期間、その差額を一定の方法で貸借対照表の取得価額に加減して配分する方法のことで、入金時や期末においてにそのような加減処理を行うことになります。差額が金利の調整による場合(例えば、ある債権の約定金利が市場平均より低いため債権を低い金額で売買する場合、ある債権の約定金利が市場平均より高いため債権を高い金額で売買する場合などを想定して下さい。)、期間の経過に応じて処理することによって、各期の損益の平準化や、差額が実質的には金利であることを反映した処理が可能となります。

 

事実関係を補足します。

・原告は、各事業年度において、劣後受益権に対する収益配当金につき、金融商品会計実務指針(以下「実務指針」と言います。)105項の適用があるものとして償却原価法を適用し、収益配当金を利息額及び債権償還額に区分し、利息額のみ収益に計上して、債権償還額は劣後受益権の帳簿価額から減額する会計処理を行い、また、利息額のみを益金の額に算入する法人税等の確定申告をしていていました。

・実務指針105項は、債権の支払日までの金利を反映して債権金額と異なる価額で債権を取得した場合には、取得時に取得価額で貸借対照表に計上し、取得価額と債権金額との取得差額について償却原価法に基づき処理を行うことなどを定めています。

・この信託においては、劣後受益権に対する収益の配当は、優先受益権に対する収益の配当が支払われた後に残余の収益がある場合に行われること、などが定められていました。

続きを読む

個人事業者の開業関連費用の税務処理について

 さて、今回、事務所を開業いたしましたので、個人事業者の開業関連費用の税務処理の基本的な考え方についてメモしておきます。開業に際して支出する費用としては、

  1. 資産(販売用の棚卸資産でないものを想定しています。)の取得費
  2. 前払費用(契約に基づいて継続的なサービスを受けるために支出した費用のうち、年末までにまだ受けていないサービス分の費用)
  3. 開業費(1.及び2.の費用に該当しないもので、事業開始までの間に開業準備のために特別に支出する費用に限ります。)等の繰延資産

などが考えられると思います。

 

1.の資産の取得費につきましては、以下のような点に留意すべきです。

  • 使用可能期間が1年未満のもの又は取得価額が10万円未満のものについては、少額の減価償却資産として、業務用として使用しはじめた年分の必要経費に算入する(所得税法施行令138条)
  • 取得価額が10万円以上20万円未満のものについては、その一部又は全部につきまとめて一括償却資産として、その合計額の3分の1ずつ、業務用として使用しはじめた年以後3年分の必要経費とする方法を選択することができる(所得税法施行令139条)
  • 使用する従業員の数が常時1000人以下の個人で青色申告をする者が取得価額30万円未満の少額減価償却資産を取得した場合には、その取得価額(合計300万円まで)を業務用として使用し始めた年分の必要経費とすることができる(租税特別措置法28条の2)
  • それ以外の減価償却資産については、以後の年分において法令の定めに従って通常通り減価償却を行っていく
  • 減価償却を要しない固定資産(たとえば、電話加入権や土地)の取得費については必要経費に算入できない(譲渡時には取得費として譲渡所得の金額の計算上控除される。)

 

2.の前払費用については、サービスを受けた年分の必要経費となるのが原則です(ただし、国税庁の通達において、支払日から1年以内にサービスを受ける短期の前払費用については、継続して支払日の年分の必要経費に算入していれば、その取扱いを認めることとされています。)。

 

3.の開業費等の繰延資産については、以下のような点に留意すべきです。

  • 基本的には、以後の年度において償却(費用化)していくべき
  • 支出金額が20万円未満のものについては、支出した年分の必要経費に算入することができる
  • 開業費については、5年間均等償却に限らず、任意償却(支出年分において全額償却してもよく、全く償却しなくてもよい。所得税法施行令1373項)が選べ、任意償却の場合は償却の期限も設けられていないため、5年を経過した後で償却しても構わない(この点については、国税庁のこちらのページをご覧下さい。)、

 

 以上の通り少しばかりややこしいので、事業の開始に当たって、間違えないようにしないといけませんね。尚、以上は執筆時の法令に基づいて記載したものです。

続きを読む

国税審判官とはどんな仕事?

さて、トップページに記載しておりますとおり、私は「特定任期付職員」として3年間、「国税不服審判所」にて「国税審判官」をしておりました。これらの言葉を簡単にご説明すると、以下の通りです。

 

  • ここでいう特定任期付職員とは、「一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律」に基づき、5年以内の任期で国家公務員として採用され、勤務する者のことです。私の場合、任期は3年でした。
  • 国税不服審判所とは、税務署や国税局などから分離された別個の機関として、納税者に対して行われた国税の処分に対する審査請求(処分に対する不服申立の一種です。)について裁決(処分を取り消すのか、変更するのか、審査請求を棄却するのかの判断)を行い、正当な納税者の権利利益を救済する国税庁の特別の機関です。国税不服審判所はあくまで行政機関であり、行政としての最終判断をするわけですが、裁判所のような判断機関であるという性質を持ち合わせております。
     なお、通常の事案であれば、審査請求から1年以内には裁決に至ります。
  • 国税審判官とは、審査請求のあった事案について、請求人等と面談したり、審査請求人や処分庁の主張や争点を整理し、事実関係を調査する(審判所の場合は職権で自ら調査することも多いです。)などした上で、合議体の一員として、「議決」(処分を取り消すべきか、変更すべきか、審査請求を棄却すべきかの判断)をします。国税不服審判所長はこの「議決」に基づいて最終的な「裁決」を行うことになります。なお、審査請求は全件、審判官の合議によって議決されますので、裁判所のような裁判官単独事件はありません。

 さて、国税審判官の仕事、何となくご理解頂けたでしょうか。

 私は、国税不服審判所に入るまで、弁護士としての職務経験、行政における検査官としての職務経験はありましたが、判断権者としての職務経験は初めてでしたが、なんとなく裁判官の気持ちが分かるようになりました(今後の裁判の進行に生かせるのではないかと思います)。そういう意味においても国税審判官として勤務した3年間は大変有意義なものだったと思います。

続きを読む

最高裁が神奈川県の企業税条例を違法無効と判断(続)

 前回の続きです。

 神奈川県は、臨時企業税条例によって、県内に事務所・事業所を設けて事業活動を行い、「欠損金の繰越控除」(益金から損金を引いた後の赤字所得である欠損金の翌事業年度以降への持ち越しのことで、翌事業年度以降の所得を減らすことができます。)を適用した、資本金の額が5億円以上の大きな法人を対象に、課税標準額(繰越控除を行わないものとした場合の所得額など)の2%に当たる臨時特例企業税を納めなければならないこととしていました。なお、この臨時特例企業税は、法人の事業税について「外形標準課税」制度(所得が0円又は赤字でも、事業規模に応じた事業税の負担が発生することになります。)が平成15年の法改正によって導入されたことに伴って廃止されています。

 前回も書いていたように、条例によって地方税を課するには、「法律の範囲内で」条例を制定し、「この法律(地方税法)の定めるところによって」行わなければならないのですが、地方税法は都道府県税として事業税を定め(法定税)、事業税の所得割の計算基準となる法人の所得の計算については、法人税法の例によることとし、法人税と同様に欠損金の繰越控除を認めております。ところが、神奈川県の臨時企業税条例では、税目は事業税ではなく臨時企業税に変わることになりますが、経済的、実質的には、法人事業税の欠損金の繰越控除を認めないのと同様の結果を導くことになります。

 また、本来、法人の所得は設立以降、解散・清算するまでの間の益金や損金を通算しなければ適正に算出できないはずであり、税法は、毎年の税収を適切に確保すべく、事業年度(課税期間)ごとに法人の所得を計算して税を課し徴収する制度を採用しているものの、このような事業年度単位課税のもとで上記のような適正な所得計算を実現するための手段として欠損金の繰越控除を設けているものと理解すれば、欠損金の繰越控除制度は、納税者に対する恩典的なものというよりも、事業年度単位課税に伴う本質的なものということになると思います。

 

 そのため、最高裁は、法人税法の欠損金の繰越控除について、「所得の金額の計算が人為的に設けられた期間である事業年度を区切りとして行われるため、複数の事業年度の通算では同額の所得の金額が発生している法人の間であっても、ある事業年度には所得の金額が発生し別の事業年度には欠損金額が発生した法人は、各事業年度に平均的に所得の金額が発生した法人よりも税負担が過重となる場合が生ずることから、各事業年度間の所得の金額と欠損金額を平準化することによってその緩和を図り、事業年度ごとの所得の金額の変動の大小にかかわらず法人の税負担をできるだけ均等化して公平な課税を行うという趣旨,目的から設けられた制度」であるとし、特例企業税を定める本件条例の規定は、「地方税法の定める欠損金の繰越控除の適用を一部遮断すること」をその趣旨、目的とし、「欠損金の繰越控除を実質的に一部排除する効果」を生ずる内容のものであり、「各事業年度間の所得の金額と欠損金額の平準化を図り法人の税負担をできるだけ均等化して公平な課税を行うという趣旨、目的」から欠損金の繰越控除の必要的な適用を定める地方税法の規定の趣旨、目的に反し、その効果を阻害する内容のものであって、法人事業税に関する地方税法の強行規定(※強行規定とは、これと矛盾抵触するような内容の規定を無効とする強力な規定です。)と矛盾抵触し、違法、無効であるとしたのです。

 

 今回の最高裁判決は、条例の法律違反の有無の判断基準、地方税法と地方税条例の関係、欠損金の繰越控除制度の趣旨などを改めて明らかにしたものといえます。特に、法定税について地方税法の枠を超えて条例を定めることは許されないこと(かつて、銀行税条例と呼ばれた事業税の課税標準の特例条例が、東京高裁で違法と判断されたことがあります。)は勿論、今回のような法定外税であっても、地方税法が法定税について定める枠を超えて、法定税を加重するような法定外税を条例で定めることも許されないことを明らかにしたところに意義があるのではないかと思われます。

続きを読む

最高裁が神奈川県の企業税条例を違法無効と判断

 最高裁判所は、神奈川県が独自に条例で定めていた臨時特例企業税の適法性が争われていた訴訟につき、平成25年3月21日、この条例が地方税法に違反して、違法かつ無効であるとする判決(最高裁へのリンクはこちらです。)を言い渡しました。

 最高裁は、「特例企業税を定める本件条例の規定は、地方税法の定める欠損金の繰越控除の適用を一部遮断することをその趣旨、目的とするもので、特例企業税 の課税によって各事業年度の所得の金額の計算につき欠損金の繰越控除を実質的に一部排除する効果を生ずる内容のものであり、各事業年度間の所得の金額と欠損金額の平準化を図り法人の税負担をできるだけ均等化して公平な課税を行うという趣旨、目的から欠損金の繰越控除の必要的な適用を定める同法の規定との関係において、その趣旨、目的に反し、その効果を阻害する内容のものであって、法人事業税に関する同法の強行規定と矛盾抵触するものとしてこれに違反し、違法、無効であるというべきである。」と判断しています。

 今後、地方税を定めた条例が違法、無効なものか否かを判断する上で非常に重要な判決となると思われます。

 まず、地方税と憲法、法律との基本的な関係についてご説明すると、地方公共団体には自主財政権、自主課税権があると理解されており、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」とする憲法94条を受けて、地方税法第2条《地方団体の課税権》は「地方団体は、この法律の定めるところによつて、地方税を賦課徴収することができる。」と規定し、同法第3条は「地方団体は、その地方税の税目、課税客体、課税標準、税率その他賦課徴収について定をするには、当該地方団体の条例によらなければならない。」と規定しています。 このように、地方公共団体は、条例を定めれば地方税を課すことが可能となり(地方税法は、地方公共団体の課税権について枠ないし準則を定めた「枠法」であり、地方税法だけでは実際に地方税を課すことはできません。)、また地方税法に特に定められている地方税(事業税、住民税、地方消費税、不動産取得税、自動車取得税、固定資産税、都市計画税などです。)以外の「法定外税」についても、総務大臣と協議し、その同意を得た上で、条例によって新設することができます(同法第4条、5条等)。地方税の概要について知りたい方は総務省のHPをごらん下さい。

 今回問題となった「臨時特例企業税」もこの法定外税でした。

 

 次回に続きます。

続きを読む

消費税率の引上げについて

 さて、ご承知のことかと思いますが、消費税(地方消費税を含みます。)の税率が従来の5%から、(1)来年(平成26年)4月1日に8%に引き上げられ、(2)その1年半後、再来年(平成27年)10月1日には倍の10%に引き上げられる、という2段階適用の法律改正がありました。

 これらの適用開始日以後に行われる資産の譲渡等には原則として改正後の税率が適用されることになるわけですが、以下のように、1段階目の改正の適用開始日以後も5%の税率が適用されるものがあることは覚えておきましょう(2段階目の改正が行われる際にこれらの措置が継続するかはまだ分かりませんが。)。

1段階目の改正の適用開始日後も5%の税率が適用される主なものとしては、

  • 適用開始日までに対価を受領している場合の旅客運送等の消費税
  • 平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した工事・製造の請負契約に基づいて行う工事・製造等の消費税
  • 平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した契約に基づき適用開始日前から行なっている一定の資産の貸付けの消費税
  • 平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した契約(冠婚葬祭のための施設の提供など、契約の性質上予めサービス提供の時期を決められないもので、代金の支払が先立って行われる一部のものに限られます。)に基づいて行うサービス提供の消費税
  • 適用開始日までに行った長期割賦販売等(延払基準により経理しているもの)による資産の譲渡等の消費税
  • 長期大規模工事又は工事進行基準により経理する工事の請負契約に基づいて行った着工から適用開始日までの期間の工事に対応する消費税

などがあります。

 

 なお、改正後も5%の税率が適用されるべきであるのに8%の税率を適用したことなどによって、過大な消費税の申告や納付をしてしまった場合には、更正の請求によって対処することが考えられます。更正の請求ができる期間は、平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税については、法定申告期限から5年間となっています。

続きを読む

ふるさと納税、してますか?(続)

 さて、前回記事を載せました「ふるさと納税」(ふるさと寄附金)について、注意すべき点を追加で書きます

 まず、いきなりやる気を削ぐような話をしてしまいますが、ふるさと納税をした場合に受ける特産品・特典について、国税庁は一時所得に該当し、所得税がかかるとしていることは覚えておいてください(http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/shotoku/02/37.htm)。

 

 また、ふるさと納税(寄附)をすれば本来納めるべき所得税や住民税を減らすことができ、最大では「寄附金の額のうち2000円を引いた全額」が所得税や住民税から控除されることになるのですが、常に2000円を引いた全額が所得税や住民税から控除されるわけではありません。寄附金のうち実際にどの金額まで所得税・住民税の税額の控除ができるかは、所得金額等によって変わるのですが、「ふるさと納税応援サイト」というHP(http://www.furusato-nouzei.jp/guide/simulator.html)などがとりあえず参考となると思います。

 さらに、所得税の寄付金控除は、「所得金額に税率をかけて計算した税額からの控除」(税額控除)ではなく「税率を掛けて税額を計算する前の所得金額からの控除」(所得控除)であるため、所得税の減税効果がそれほど大きくなく、住民税からの控除額の方が大きくなる場合も多いのですが(寄附金の額が少額であるほどその傾向が強くなるようです。それぞれの税の控除額がいくらになるかについては、上記の「ふるさと納税応援サイト」などが参考となると思います。)、住民税は寄附をした翌年度分が減ることになりますので、減税効果は所得税よりもやや遅れて現れてくることになります。

 ふるさと納税をする際は、以上の点を理解した上で寄附をするようにして下さい。

 

続きを読む

ふるさと納税、してますか?

 ふるさと納税(ふるさと寄附金)、聞いたことある方は多いかと思いますが、実践しておられる方はまだそれほど多くはないかもしれませんね。ふるさと納税とは、日本全国どこの都道府県、市町村に対してでもよいのですが、2000円(住民税については5000円)を超える寄附をしたときに、一定額が所得税の計算の基礎となる所得額住民税の額から控除される制度です。サラリーマンのように源泉徴収及び年末調整で納税関係が終了し、確定申告をして税金を納付する手続きが必要ない方がふるさと納税をした上で確定申告(還付申告)をした場合には、その分所得税の還付が受けられますし、翌年度の住民税の税額も控除されることになります。

 所得税及び住民税の控除を受けるためには、領収書などを添付して所得税の確定申告をすることが必要となりますし(この場合には住民税の控除を受けるための手続きは不要となります。)、住民税のみについて控除を受ける場合にも住民税の申告が必要となります。

 ふるさと納税(ふるさと寄附金)は「寄附」ではあるものの、寄附の一定部分については税金を収めたのと同様の効果があるので、一般にはふるさと「納税」と呼ばれることが多いのです。他方で、地方自体によっては、ふるさと納税の結果、本来得られるはずであった税収が減ったり、寄附金という形で財源が増えたりすることになります。そこで、積極的にふるさと納税(寄附)を受けられるように、特産品・特典を付けている地方自治体も多く、かなりお得な特産品・特典をつけているところもあるようです。

 各自治体が実際にどのような特産品・特典を付けているかについては、「ふるさとチョイス」というHP(http://www.furusato-tax.jp/japan.html)が分かりやすいかと思います。

 また、寄附先は自分のふるさとである必要はないので、特産品・特典がもらえる先に寄付しても良いですし、震災復興のために震災で被害を受けた先に寄附しても良いわけです。また、寄附金の使い道が指定できる場合もありますので、応援したい事業があればそれに対する寄附をしても良いわけです。

 いずれにせよ納税をしなければならないなら、積極的にふるさと納税の制度を活用して、楽しみながら「納税」をするのも一つの方法ではないでしょうか。

 

続きを読む

ストック・オプションに関する所得税法違反事件に無罪判決

 東京地裁は3月1日、ストック・オプション(一般に「会社の役員や従業員などが、一定期間内に予め決められた金額で、所属する会社から自社株を購入できる権利」を指します。)を行使して得た所得に関して、約1億3千万円を脱税したとして所得税法違反に問われた外資系証券会社の元部長に対して、「被告人が過少申告を認識していたか疑問が残る」として故意を認めず、無罪を言い渡したそうです。また、東京国税局の査察部が調査・告発した事件で無罪判決が出たのは極めて異例のことと報道されているようです。

 詳細は分かりませんが、被告人は、ストック・オプションを行使して得た所得に対してかかる所得税については、支払いを受ける際に源泉徴収されているものと認識して申告をしていなかったにすぎず、故意に申告しなかったものではないとして無罪を訴えていたようであり、地裁では被告人の主張が通ったことになります。

 

 ところで、ストック・オプションについては、従来、その行使によって得た所得が所得税法上の一時所得となるのか、給与所得となるのかについて学説や実務等において争いがあったところで(それによって税額の計算方法が異なります。)、最高裁の第三小法廷は、平成17年1月25日に給与所得に当たると判決しましたが、平成18年10月24日には、一時所得として申告していた納税者に対し過少申告であるとして加算税を課した処分(国税通則法第65条第1項)について、その納税者が一時所得として申告し、給与所得としていなかったことについては「正当な理由」(同条第4項、正当な理由がある場合には過少申告加算税は課されません。)があるから、違法な処分であると判決しました。この平成18年の最高裁判決は、一時所得とする見解にも相応の論拠があって、最高裁が給与所得と判断するまでは、下級審の裁判例においても判断が別れていたことなどから、納税者が一時所得に当たるものと理解して一時所得として申告したことには無理からぬ面があり、納税者の単なる法令解釈の誤りにすぎないということはできないと判断しています。なお、この平成18年の最高裁の判断は、あくまでこの事例に関するものであって、一般論ではありませんので、ご注意ください。

 

続きを読む

国税通則法の改正(更正の請求・増額更正の期間延長)

 前回も国税通則法の平成23年改正に触れましたが、その中で特に実務上重要な点について触れておきます。平成23年12月2日以後に法定申告期限が来る国税については、「更正の請求」ができる期間が、原則として法定申告期限(たとえば所得税や贈与税なら翌年の3月15日です。)から「5年」に延長されています。

「更正の請求」は、「納税者が提出した申告書に記載した課税標準等(所得金額などです。)又は税額等の計算について、税法の規定に従っていないとか計算誤りがあったことによって、申告税額が過大なものとなっていた場合」などに、税務署長に対してその是正を求めるもので、従前は1年が期限でしたので、今回の改正によって大幅に期限が延長されています。これによって、納税者が払い過ぎた税金を取り戻すことができる期間、機会が増えたことは間違いありません。

 他方で、同じく平成23年12月2日以後に法定申告期限が来る国税について、税務署長等が増額更正処分をすることができる期間も、原則として法定申告期限から「5年」に延長されていることも忘れてはいけません(改正前は3年でした。)。納税者や税理士の方にとってはむしろこちらの改正の方が重要だという方もいらっしゃるかもしれません。

 結局、納税者・税理士側にとっても、税務署側にとっても、納税者の申告が一旦終わったとしても、法定申告期限から原則5年間は増額又は減額の更正の可能性があるということを常に念頭に置かなければならず、納税者に対する税務調査の際の負担も従来以上に増える場面があるのではないかと思われます。

 

続きを読む

国税通則法の改正(税務調査手続等)

 所得税、法人税、相続税等、様々な国税について、基本的な事項や共通的な事項を定めた「国税通則法」の平成23年改正事項のうち、①税務調査手続の法定化や②理由附記の実施に関する部分が、本年1月1日から施行されています。

 ①の税務調査手続の法定化は、調査の事前通知、調査終了の手続、再調査をする場合の条件などを法で定めたもので、②の理由附記は、不利益処分や申請拒否処分をする場合には、処分を受ける者に対して、その理由を示さなければならないというものです。改正の概要を正確に知りたい方は、国税庁のホームページをご覧ください。

 さて、今回の改正後、「仮に①の法定化された税務調査手続に反する税務調査が行われた場合に、その税務調査に基づいてなされた税務署長等の処分(更正処分、決定処分等)は違法となるのか」が問われることになります。

 国税通則法の規定に反した税務調査が行われた以上、その税務調査は違法ということになるとしても(この点は、税務調査の手続きに何らかの問題があったとしても、違法なものではないという評価をすることが可能であった改正前とは状況が異なります。)、従来から裁判例上は概ね、「違法な調査手続きが処分の効力に影響を与え、処分が違法として取り消されるのは、その行為が刑罰法規(刑法などです。)に反するなどの重大な違法性があると認められるようなごく例外的な場合に限られる」というような解釈がなされてきたところですので、仮に今回の改正によってもこの点の解釈に影響がないというのであれば、ごく例外的な場合以外は、処分が違法として取り消されるわけではない(あとは違法な税務調査手続きによって受けた損害があれば、国家賠償請求をする余地があるにすぎない)、ということになってくるように思われます。

 この点については、今後、裁判所が今回の改正を踏まえてどのような判断をするのか(改正を機に解釈や判断の枠組みを変えることがあるのかどうか)について、しばらく注目したいと思っています。

 

続きを読む

今年もやって参りました、確申期。

今年もまた確定申告の時期がやって参りました。

私も弁護士になった平成13年以降、毎年確定申告をしております。

税務署の職員も税理士の先生も大わらわですね。

ところで、平成25年分以降の所得税(つまり、来年の申告からですね。)については、給与所得の金額の計算上、給与所得控除以外に控除できる「特定支出」の範囲や額が拡大されていますね。

①弁護士・公認会計士・税理士などの資格取得費、②書籍・図書で職務に関連するものを購入するための支出、制服・作業服その他の勤務場所において着用する衣服を購入するための支出、交際費・接待費等で、職務上関係のある者に対する接待・供応・贈答等のための支出(※合計65万円まで。)、が含まれることになり、従来と比べると大分広がったようにも思われます。なお、具体的な適用範囲は、国税庁の「情報」の内容などを参考に検討する必要があると思います。

また、特定支出控除の金額についても、「特定支出の額が給与所得控除の額を超えた額」から、「特定支出の額が給与所得控除の額の2分の1(最高125万円まで)を超えた額」となり、特定支出控除が認められやすくなっています。

もっとも、上の①②の支出について特定支出控除を受けるためには、これらの支出が職務の遂行に直接必要なものであることについて給与等の支払者の証明書が必要となり(従来の特定支出も証明書の添付は必要でしたが。)、現実問題として、従業員が個別にそのような証明書の発行を会社に求め、会社がその証明書を発行する慣行がどの程度定着し、どの程度適用事例が広がるのかに注目しております。

 

 

続きを読む