本日は、最高裁第二小法廷平成27年6月12日判決のご紹介です。
この判決は、匿名組合契約に基づいて組合員が受ける利益の所得税法上の所得区分について判断基準を示し、この点に関する現在の通達の内容が正しいものと認めるとともに、この事案で組合員が得ていた所得は雑所得であると判断したものです。
ですが、今回注目すべきは、この匿名組合員が組合事業による損失を(雑所得ではなく)不動産所得に関するものとして所得税の申告をしたことについて、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるので過少申告加算税の処分は違法であるとして、この処分を取り消した点です。
この事案においては、匿名組合員の申告はもともとは通達にしたがって申告をしていたものであったが、平成17年の通達改正により、以後の匿名組合員の申告が結果的に通達に反するものとなってしまったという事情があります。
この判決は、その点を踏まえて、以下のように判断をしたのです。
『以上のような事情の下においては、本件各申告のうち平成17年通達改正の前に旧通達に従ってされた平成15年分及び同16年分の各申告において、Aが、本件リース事業につき生じた損失のうち本件匿名組合契約に基づく同人への損失の分配として計上された金額を不動産所得に係る損失に該当するものとして申告し、他の各種所得との損益通算により上記の金額を税額の計算の基礎としていなかったことについて、真にAの責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお同人に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというのが相当であるから、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるものというべきである。』
納税者が、税務官庁が自ら示していた通達にしたがった申告をしたにもかかわらず、結果として税務官庁から加算税を課されてしまうことがあるとすれば、(たとえその通達が適正な内容でなかったとしても)納税者にとって理不尽といわざるを得ないので、通達にしたがって申告をしたのであれば加算税は課されないとした今回の最高裁の判断は一般人の常識に合うものだと思いますし、今後の参考にもなります。
※なお、最高裁が過去に似た判断を示したものとして、最高裁第三小法廷平成18年10月24日判決があります。