平成26年の国税通則法改正で、審判所の証拠の閲覧・謄写が拡充されます

本年平成26年の国税通則法改正では、国税の不服審査の手続きについて、(1)不服申立期間を2月から3月に延長したり、(2)国税不服審判所において、審判官が職権で調査して収集した資料も含めて、関係人が審判所にある物件の閲覧又は写しの交付(謄写)を求めることができるようになるなど、実務上も重要な点の改正がいくつか行われています。なお、この改正は、改正行政不服審査法 (平成26年法律第68号)の施行日(公布日である平成26年 6 月13日から 2 年を超えない政令で定める日)から適用されることになっております。

今回はこれらの改正のうち(2)について思うところを書いておきます。

まず、改正前は、謄写請求が全く認められていないこと(閲覧のみであるため、当事者は長時間かけて書き写すなどの対応を取らざるを得ないのです。)、審判官の職権収集証拠は対象となっていないこと(なお、処分庁からしても、従前閲覧すらできなかった請求人の提出証拠について閲覧・謄写請求ができることとなりました。)からすると、(2)の改正は大きな前進だといえます。

もっとも、法令の文言上は、担当審判官の質問に対する当事者や関係人の陳述を記載した質問調書は相変わらず閲覧・謄写請求の対象外となっている点では、やはり当事者の立場からすればまだ不十分なのかもしれません(担当審判官の運用で、閲覧等に応じることは違法ではないように思われますが)。なぜなら、この調書の内容が議決・裁決の重要な根拠となる場合があるにもかかわらず、関係人に反論、釈明の機会が得られないまま議決・裁決がなされてしまうことがあるからです。もっとも、この点については、行政不服審査法案の可決の際に、今後検討を行う旨の附帯決議がされていますので、国税通則法についても、近い将来改正が実現する可能性が残されています。

 

次に、今回の改正の影響として、以前と比較すると審判官が得られる証拠が事実上減少してしまう可能性もあるのではないかと思われます。どういうことかというと、審査請求人らが閲覧謄写をした結果、証拠提出の事実や証拠の内容を審査請求人らに知られる可能性があるとなると、審判官の職権調査を受ける者としては、容易に物件の提出要求に応じずに、できるだけ最低限のものに絞ろうとする場合があるかもしれないからです。本来はそれもおかしな話だと思いますが、審判官に質問検査権があるといっても事実上の限界があるため、こういった影響が実際に出てくる場面があるのではないかと考えられるのです。

他方で、従前は審判官の職権収集証拠であれば審査請求人に閲覧もされなかったため、証拠の保持者が進んで証拠の提出を行わず、審判官による職権収集を待つという現象があったのかもしれませんが、今後は職権収集証拠も閲覧謄写の対象となるため、そういった現象は少なくなるものと思われます。

 

以上のとおり、(2)の改正が実務に与える影響は決して小さくないものと思います。


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