個人事業者の開業関連費用の税務処理について

 さて、今回、事務所を開業いたしましたので、個人事業者の開業関連費用の税務処理の基本的な考え方についてメモしておきます。開業に際して支出する費用としては、

  1. 資産(販売用の棚卸資産でないものを想定しています。)の取得費
  2. 前払費用(契約に基づいて継続的なサービスを受けるために支出した費用のうち、年末までにまだ受けていないサービス分の費用)
  3. 開業費(1.及び2.の費用に該当しないもので、事業開始までの間に開業準備のために特別に支出する費用に限ります。)等の繰延資産

などが考えられると思います。

 

1.の資産の取得費につきましては、以下のような点に留意すべきです。

  • 使用可能期間が1年未満のもの又は取得価額が10万円未満のものについては、少額の減価償却資産として、業務用として使用しはじめた年分の必要経費に算入する(所得税法施行令138条)
  • 取得価額が10万円以上20万円未満のものについては、その一部又は全部につきまとめて一括償却資産として、その合計額の3分の1ずつ、業務用として使用しはじめた年以後3年分の必要経費とする方法を選択することができる(所得税法施行令139条)
  • 使用する従業員の数が常時1000人以下の個人で青色申告をする者が取得価額30万円未満の少額減価償却資産を取得した場合には、その取得価額(合計300万円まで)を業務用として使用し始めた年分の必要経費とすることができる(租税特別措置法28条の2)
  • それ以外の減価償却資産については、以後の年分において法令の定めに従って通常通り減価償却を行っていく
  • 減価償却を要しない固定資産(たとえば、電話加入権や土地)の取得費については必要経費に算入できない(譲渡時には取得費として譲渡所得の金額の計算上控除される。)

 

2.の前払費用については、サービスを受けた年分の必要経費となるのが原則です(ただし、国税庁の通達において、支払日から1年以内にサービスを受ける短期の前払費用については、継続して支払日の年分の必要経費に算入していれば、その取扱いを認めることとされています。)。

 

3.の開業費等の繰延資産については、以下のような点に留意すべきです。

  • 基本的には、以後の年度において償却(費用化)していくべき
  • 支出金額が20万円未満のものについては、支出した年分の必要経費に算入することができる
  • 開業費については、5年間均等償却に限らず、任意償却(支出年分において全額償却してもよく、全く償却しなくてもよい。所得税法施行令1373項)が選べ、任意償却の場合は償却の期限も設けられていないため、5年を経過した後で償却しても構わない(この点については、国税庁のこちらのページをご覧下さい。)、

 

 以上の通り少しばかりややこしいので、事業の開始に当たって、間違えないようにしないといけませんね。尚、以上は執筆時の法令に基づいて記載したものです。

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