所得税、法人税、相続税等、様々な国税について、基本的な事項や共通的な事項を定めた「国税通則法」の平成23年改正事項のうち、①税務調査手続の法定化や②理由附記の実施に関する部分が、本年1月1日から施行されています。
①の税務調査手続の法定化は、調査の事前通知、調査終了の手続、再調査をする場合の条件などを法で定めたもので、②の理由附記は、不利益処分や申請拒否処分をする場合には、処分を受ける者に対して、その理由を示さなければならないというものです。改正の概要を正確に知りたい方は、国税庁のホームページをご覧ください。
さて、今回の改正後、「仮に①の法定化された税務調査手続に反する税務調査が行われた場合に、その税務調査に基づいてなされた税務署長等の処分(更正処分、決定処分等)は違法となるのか」が問われることになります。
国税通則法の規定に反した税務調査が行われた以上、その税務調査は違法ということになるとしても(この点は、税務調査の手続きに何らかの問題があったとしても、違法なものではないという評価をすることが可能であった改正前とは状況が異なります。)、従来から裁判例上は概ね、「違法な調査手続きが処分の効力に影響を与え、処分が違法として取り消されるのは、その行為が刑罰法規(刑法などです。)に反するなどの重大な違法性があると認められるようなごく例外的な場合に限られる」というような解釈がなされてきたところですので、仮に今回の改正によってもこの点の解釈に影響がないというのであれば、ごく例外的な場合以外は、処分が違法として取り消されるわけではない(あとは違法な税務調査手続きによって受けた損害があれば、国家賠償請求をする余地があるにすぎない)、ということになってくるように思われます。
この点については、今後、裁判所が今回の改正を踏まえてどのような判断をするのか(改正を機に解釈や判断の枠組みを変えることがあるのかどうか)について、しばらく注目したいと思っています。
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