税務調査終了時の調査結果の内容の説明が不足だったら処分は違法になるのか?

国税通則法74条の11《調査の終了の際の手続》の2項は「国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。 」と規定し、その3項は、「前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。」と規定しています。

さて、この「調査結果の内容(更正決定等の額及び理由)の説明」は、実務上主に口頭でなされているのですが、どの程度説明をしなければならないのか、仮に説明が不足であった場合に、更正決定等の処分が違法となるのか、という点が問題になります。


この点に関して、先日、国税通則法の改正に関する研修を受けた際、(1)処分の際の理由附記が不十分であれば処分はそれだけで違法になること、(2)手続きの違法は処分の取消理由になる(場合がある)ことなどから、調査結果の内容の説明が不足していればその後の更正決定などの処分が違法になるかのような意見を耳にしたのですが、果たしてそうなのでしょうか。

(2)については、これまでの裁判例をみると、むしろ、基本的には調査手続の違法性は後の処分の違法性を導かないとされることが多く、刑罰法規に反するなどの重大な違法がある場合や、調査手続がなされていないと同視できるような場合に限り、処分の違法性をきたすと判断されてきたところです。この点については、以前の記事「国税通則法の改正について」もご参照下さい。今後、通則法改正の趣旨から、この点の判断基準が大きく変わることがあるのでしょうか・・・?

そもそも、上記の「調査結果の内容説明」は、税務調査の内容・結果を納税者に知らせて、納税者に修正申告・期限後申告をすべきか、それとも今後なされる税務署長からの処分を受け(て不服申立てをする)のかを判断するのに足りる材料を提供するとともに、税務調査の正当性を担保することが目的ではないかと思われます。それに、実際の税務署長の処分に際しては改めて書面に理由が附記されることが予定されていることからすると、調査終了段階で口頭においてなされる「調査結果の内容説明」は、主に「納税者が自ら修正申告等をするのか、税務署長から処分を受け(て不服申立てをす)るのか判断するに足りる程度」の説明があればよいのであって、求められている説明の程度・精度が、処分の際になされる理由附記の場合(納税者が処分を受け入れるのか、争うのかを判断できる程度の記載が求められます。)と比べると、やや低くくても(あるいは低い場面があっとしても)、おかしくないという気がしますし、この内容説明が不足していた場合でも、裁判において、この調査終了の際の手続的な違法を理由に処分自体が違法と判断される可能性がどの程度あるのかは疑問だと思います。

 

もちろん、私も、「調査結果の内容説明」の制度は、納税者が早い段階で処分の理由を明確に把握し、今後の対応についての判断材料が得られるという点で、実務上は有益なものだと認識しているわけですが、仮にこれが不足していたとしても、処分の内容や理由附記が正当なものなのであれば、調査結果の内容説明の不足を理由に処分の取消しを求めて争うのは得策ではない、と考えているわけです。


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