民法相続法の改正〜配偶者短期居住権が創設されました(1)

民法(相続法制)改正の目玉の一つが、配偶者居住権、配偶者短期居住権の新設です。

 

今回も、前からの続きで、配偶者短期居住権について以下のHPに記事を書きましたので、こちらをごらんください!

https://souzoku.osaka-lawyer.net/kaisei-haiguushatankikyojyuuken/

 

民法相続法の改正〜配偶者居住権が創設されました(2)

民法(相続法制)改正の目玉の一つが、配偶者居住権、配偶者短期居住権の新設です。

 

 

前回の続きで、配偶者居住権について以下のHPに記事を書きましたので、こちらをごらんください!

https://souzoku.osaka-lawyer.net/kaisei-haiguushakyojyuuken2/

 

 

民法相続法の改正〜配偶者居住権が創設されました(1)

民法(相続法制)改正の目玉の一つが、配偶者居住権、配偶者短期居住権の新設です。

 

これらは、残された配偶者の居住権を保護するための権利、制度です。

今回の改正の大部分は既に(H31.1.13、R1.7.1)施行されておりますが、配偶者居住権、配偶者短期居住権の新設については施行日が2020年4月1日(R2.4.1)となっており、この日より前に開始した相続については配偶者居住権、配偶者短期居住権の適用がないため、ご注意ください。

 

今回はまず、配偶者居住権について以下のHPに記事を書きましたので、こちらをごらんください!

https://souzoku.osaka-lawyer.net/kaisei-haiguushakyojyuuken1/

 

 

最高裁で再転相続が起きた場合の熟慮期間の起算点について判決が出ています

民法では、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならないこととされております(民法915条1項)。

この3ヶ月の期間を一般に、熟慮期間といいます。

 

また、民法第916条では、相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第1項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算すると定めております。

 

一般に、甲が死亡し、その相続人である乙 が甲からの相続について承認又は放棄をしないで死亡し、丙が乙の相続人となるような相続を「再転相続」といいますが、最高裁は令和元年8月9日、再転相続の場合の熟慮期間の起算点に関して判断した初めての判決を出しました。

最高裁は、民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が、当該死亡した者からの相続により、当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を、自己が承継した事実を知った時をいうものと解すべきであるとして、再転相続の相続人によってより手厚い法解釈を示したといえるでしょう。

 

判決文はこちらからご確認ください。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88855

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/855/088855_hanrei.pdf

 

また、この判決の内容については、以下のページに記事を書いておりますので、こちらもごらんください。

https://souzoku.osaka-lawyer.net/saitensouzoku-jukuryokikankisanten/

 

相続放棄等でご相談のある方は、クーリエ法律事務所までどうぞ!

限定承認でみなし譲渡による所得税が発生する理由(2)

前回の続きです。

 

限定承認に伴うみなし譲渡は、基本的には、相続後に相続人が相続財産の譲渡をしたときに、被相続人の生存中に発生していた含み益についてまで、譲渡所得(所得税・住民税)が発生し、所得税を納付しなくてすむようにするためのものです。

つまり、相続人の将来の譲渡時における所得税・住民税の負担を軽減するための制度なのです。

 

以下の例で、単純な相続の場合と比べて説明をしていきます。

 

例:被相続人AがH1.1.1に土地を5000万円で取得、H31.1.1に死亡(時価7000万円に値上がり)、R1.6.1に相続人Bが7200万円で売却。

 

1)単純に相続をした場合

 

→相続時:通常の相続税のみ。BはAの土地の取得費・取得時期を引き継ぎます。

 

→売却時:相続人Bのもとで、7200万円 − 5000万円 =2200万円 の譲渡所得(取得費等は省略。以下同様)、これに対応する税金(長期譲渡所得:所得税15%+住民税5%〜概算440万円)が発生することに(復興特別所得税については省略。以下同様)。

 

〜被相続人Aのもとで取得時H1.1.1から死亡時H31.1.1までに発生していた2000万円分の値上がり益(譲渡所得)についてまでBに課税され、税負担が発生する結果になります。

 

 

2)限定承認をした場合

死亡時に被相続人から相続人に対する譲渡があったものとみなされます。

 

→相続時:被相続人Aのもとで、7000万円–  5000万円 =2000万円の譲渡所得(取得費等は省略)、これに対応する所得税(長期譲渡所得:所得税15%〜概算300万円 ※ 死亡したため翌年の住民税の負担は発生しません。)が発生し、相続人Bがこの所得税の支払債務を相続することになります。

 

もっとも、この所得税を含めた相続債務の合計額が相続資産の合計額よりも多い場合には、Bは限定承認をしているのですから、相続資産の範囲を超えて自らの固有財産で所得税の納付をする必要がありません。

 

また、Bには通常どおり相続税が発生しますが、上記の所得税も債務に含めて債務控除をした上で、相続税を計算することになります。

 

 

→売却時:相続人の売却時には、7200万円 –  7000万円(取得価額〜相続時の時価) =200万円の譲渡所得が発生(取得費等は省略)し、対応する税金(短期譲渡所得:所得税30%+住民税9%〜概算78万円)が発生し、納税をすることになります。

 

 

以上のとおり、限定承認をした結果、被相続人のもとで発生していた2000万円分の値上がり益(譲渡所得)については、相続人は相続時に自らの固有財産から所得税を納税する必要がありませんし、将来の売却時に課税されることもないのです。

 

また、単純に相続をした1)の場合と比べて、限定承認をした2)の場合に、相続人の合計の負担税額は減少することになりました。

ただし、もちろん、毎回このような計算結果になるわけではなく、しかも限定承認の場合には、親族間で譲渡したものとみなされるため、税額を軽減する特例(例:居住用財産の譲渡の場合の3000万円特別控除、軽減税率の特例等)が受けられず、限定承認をしたことによって単純に相続を選択した場合と比べて課税の負担が増えてしまう場合が生じてくるので、要注意です。

ですので、ある程度の相続財産があって、限定承認を選択しようとする場合は、事前に税理士さんに相談すべきでしょう。

 

限定承認や相続税・所得税の紛争のご相談は、クーリエ法律事務所へどうぞ!

限定承認でみなし譲渡による所得税が発生する理由(1)

今回は、限定承認をするに伴って発生する税金であるみなし譲渡(所得税)について記載をしていきます。

 

限定承認をした場合、相続税以外にも、みなし譲渡による所得税が発生することがあります。

被相続人にみなし譲渡(被相続人が相続人に対して譲渡したものとみなされる)による所得税が発生するのですが、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に相続人が準確定申告を行うことでその税額が確定し、相続人はそれを債務として相続する、ということになります。

 

その際、譲渡所得の金額の算定に当たっては、相続税評価額ではなく時価で譲渡収入を算定しなければならず、また被相続人(あるいはそれ以前)の取得価額が分からない場合は特に、譲渡所得、所得税の負担が高額となることがあります。

なお、譲渡所得の基本的な計算方法等についてはこちらでご確認ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm

 

そのため、相続税以外にも(譲渡)所得税が発生することを理由に、限定承認を避けようとする人も多くいらっしゃいます。

 

また、以下のような疑問を持つ人もいらっしゃるでしょう。

・限定承認をすると、なぜそんな余分な税金がかかるのだろうか?

・被相続人から相続人に対して「譲渡」したものとみなして所得税が課されるのであれば、なぜそれに加えて相続人が被相続人から「相続」したものとして相続税もかかるのだろうか(譲渡済みであって相続財産ではないのではないか)?

・相続人は「相続」したものとして相続税がかけられるのに、なぜ被相続人が想像人に対して「譲渡」をしたものとみなして所得税がかけられるのだろうか(相続したのであって譲渡を受けたものではないのではないか)?

 

このような疑問が出るのはごもっともですが、実は、限定承認に伴うみなし譲渡の規定は、相続人にとって単純に負担が増加するもの、というわけではありません。

むしろ、基本的には、相続人のための規定なのです。

 

次回に続きます。

限定承認あれこれ

最近、限定承認に関するご相談が立て続けにありました。

 

相続を放棄するか、承認するか、限定承認するかの判断については、時間制限もありますし、相続人が知らない、把握できない事情や将来の不確定要素まで考慮して判断する必要があることなどから、皆さん、悩まれることが多いのだと思います。

 

そこで、いくつか、限定承認に関する記事を書いておこうと思います。

今日はとりあえず、限定承認について思いついたことをあれこれ書きます。

 

・まず初めに、原則として本年(令和元年)7月1日から、相続に関する民法の改正が施行されておりますが、限定承認については特に改正事項はありません。

 

 

・さて、インターネット上では、限定承認は、相続資産の限度内でのみ債務を引き継ぐものというように記載されていることが多いのですが、むしろ、被相続人の債務を全て相続はするけれども、自分自身の固有資産(相続人がもともと持っている資産、その相続以外の原因で取得する資産)でその相続債務を支払う責任を負わない、という理解をして頂いた方が正確です。

 

 

・限定承認には、相続人が自分自身の固有資産から相続人の債務を支払う責任を負わない、相続放棄と比較して、(結果として相続した財産・負債の収支がプラスになり)相続によって財産を取得できる可能性がある、次の順位の法定相続人に迷惑をかけないですむなどのメリットがありますが、他方で、色々と注意点があります。

まずは、前に書いたこちらの記事をごらんください。

https://www.legalawyer.jp/genteishounin/

 

ここに書かれていること以外にも限定承認について注意すべき点があります。

次回以降、前の記事では記載していなかった限定承認をするに伴って発生する税金や費用について記載をしていきます。

相続に関する民法の改正が施行されました!

本年7月1日から、相続に関する民法改正の大部分が施行されております!

 

全体的な施行のスケジュールは3段階となっており、今回は2段階目でした。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00237.html

 

今回、遺産分割前の預貯金の払戻し制度、遺留分制度の見直し、相続の効力等に関する見直し、特別の寄与等に関する改正が施行されました。

なお、配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等の改正は2020年4月 1日施行となっております。

 

いよいよ新民法での相続が本格的に始まりました。

皆さんも変更があった点に気をつけながら相続手続きをするようにしましょう!

 

遺産分割、遺言書など相続のことでご相談がありましたら、クーリエ法律事務所へどうぞ! 

課税処分の取消判決の拘束力と後続の相続税の更正の請求との関係について判断した東京地裁の裁判例(2)

前回の続きです。

 

東京地裁(平成30年1月24日判決)は、概ね以下のような判断をしました。

 

・相続税法32条1号に基づく更正の請求においては、原則として、遺産分割によって財産の取得状況が変化したこと以外の事由(申告等における個々の財産の価額の評価に誤りがあったこと等)を主張することはできないものと解され、その結果、更正の請求上、課税価格の算定の基礎となる個々の財産の価額は、まずは申告における価額となる(その後に更正処分があった場合で、申告における価額のうち、当該更正処分によって変更された価額があるときには、その価額を基礎にすべきである。)。また、相続税法35条3項に基づく更正処分における課税価格の算定の基礎となる個々の財産の価額もまた同様に解するべき。

 

・本件のように、相続税の申告後に個々の財産の価額を変更する更正処分がされた上、当該更正処分の取消しの訴えが当該申告をした相続人によって提起され、個々の財産の評価方法ないし価額が争点となり、判決がこの点について認定・判断をし、課税価格及び納付すべき税額につき当該更正処分における金額と異なる金額を認定して、当該更正処分の一部を取り消すこととなった場合には、後の相続税法32条1号に基づく更正の請求又は同法35条3項に基づく更正処分の際の計算において、従前の更正処分における個々の財産の価額のうち判決によって変更を受けたものをそのまま計算の基礎にすべきではないのはもちろんであるが、かといって、当該価額を申告における価額と置き換えることも、当該価額が従前の更正処分によって変更を受けている以上、判決がその変更前の価額を相当とする旨を判示しているのでない限り、相当ではなく、根拠を欠く。

 

・上記のような場合には、争点となった個々の財産の評価方法ないし価額に係る認定・判断並びにこれらを基礎として算定される課税価格及び相続税額に係る認定・判断に、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断として、行政事件訴訟法33条1項所定の拘束力が生じているということができる上、後の相続税法32条1号に基づく更正の請求又は同法35条3項に基づく更正処分に係る事件についても、同一の被相続人から相続により取得した財産に係る相続税の課税価格及び相続税額に関する事件であることに変わりがない以上、行政事件訴訟法33条1項にいう「その事件」として、上記の拘束力が及ぶものと解するのが相当であって、従前の更正処分について、争点となり、その評価方法ないし価額が判決によって変更されるに至った個々の財産については、課税庁において、同判決における評価方法ないし価額を基礎として課税価格を算定しなければならない。

 

 

以上のように、この東京地裁の判決によれば、(個々の財産の評価方法ないし価額を争点とする相続税の)課税処分の取消判決後に、同一事件について相続税法32条1号に基づく更正の請求等が税務署に対してされた際には、税務署に行政事件訴訟法33条1項の拘束力が及び、税務署は、取消判決による変更後の個々の財産の価額を基礎として課税価格を算定して、更正の請求に対する対応(減額更正処分又は拒否通知処分)を決めなければならないことになります。

 

 

今回の判決は、相続税法32条1号に基づく更正の請求においては、原則として、遺産分割によって財産の取得状況が変化したこと以外の事由(申告等における個々の財産の価額の評価に誤りがあったこと等)を主張できず、更正の請求上、課税価格の算定の基礎となる個々の財産の価額は、まずは申告価額となる、という原則論は肯定した上で、相続税法32条1号に基づく更正の請求に行政事件訴訟法33条の拘束力が及び(行政庁が取消判決に拘束され)、その原則論が修正されることを明らかにしたものといえると思います。

 

行政事件訴訟法33条の取消判決の拘束力が税務において問題となった貴重な裁判例ですので、ご紹介いたしました。

 

更正の請求についてご相談のある方は、クーリエ法律事務所へどうぞ!

課税処分の取消判決の拘束力と後続の相続税の更正の請求との関係について判断した東京地裁の裁判例(1)

本日は、行政事件訴訟法33条に関する判決(東京地裁平成30年1月24日判決)をご紹介します。

この条文の内容は以下のとおりです。

 

行政事件訴訟法 第33条

処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。

 

取り消された処分と同一事情の基で同一の理由に基づいて同一内容の処分を行うことを防ぐための条文です。

取消判決において処分等が違法であるとの判断を導いた具体的な判決理由について、拘束力が発生することになります。

拘束力というのは、判決の判断内容を尊重し、判決の趣旨に従って行動するよう行政庁を義務づける効力のことです。

税務署等の課税処分にもこの条文の適用があり、課税処分が判決によって取り消されると、その取消処分をした税務署はその取消判決の具体的な判決理由に拘束されることになります。

 

 

さて、本件の裁判の事実関係は概ね、以下のとおりです。

 

・原告の母が死亡し、その相続(本件相続)について相続税の申告を行うに当たり、他の相続人との間で遺産が未分割であるとし、相続税法55条に基づき、相続税の申告(本件申告)をしたところ、税務署長から、遺産のうち株式(以下「本件各株式」という。)の一部の価額が過少であるとして更正処分を受けた。

・そこで、原告は、上記の更正処分の取消しを求めて国を相手に東京地方裁判所に訴えを提起したところ、裁判所は、上記の更正処分(前件更正処分)における本件各株式の一部の価額が過大であるのみならず、本件申告における本件各株式の一部の価額も過大であった旨を判示した上で、前件更正処分のうち本件申告の額を超える部分を取り消す旨の判決を言い渡した。東京高等裁判所もその判断を維持して被告(国)の控訴を棄却し、判決は確定した。

・その後、原告は、遺産分割が成立したとして、税務署長に対し相続税法32条1号(【参考条文】参照)に基づき、本件各株式の価額が前件判決で認定された額と同額であることを前提に更正の請求(本件更正請求)をした。これに対し、同税務署長は、本件各株式の価額は本件申告における額と同額とすべきであるとし、本件更正請求について更正をすべき理由がない旨の通知処分(本件通知処分)をするとともに、同法35条3項に基づき、相続税の増額更正処分(本件更正処分)をした。

・そこで、原告が、本件更正処分等における本件各株式の価額を不服として、本件更正処分等の一部の取消しを求める訴訟を提起した。

 

次回に続きます。

 

 

【参考条文】

相続税法32条(更正の請求の特則)

第三十二条 相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額(当該申告書を提出した後又は当該決定を受けた後修正申告書の提出又は更正があつた場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額)が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から四月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求(国税通則法第二十三条第一項(更正の請求)の規定による更正の請求をいう。第三十三条の二において同じ。)をすることができる。

一 第五十五条の規定により分割されていない財産について民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつたこと。

固定資産税の路線価知っていますか?全国地価マップは使用していますか?

路線価とは、路線ごとに設定されている1㎡当たりの評価額のことで、その路線に面する宅地の評価などに用いられます。

 

一般的には、路線価といえば、国税局長が決めて国税庁が発表する路線価のことを指し、相続税等に関する財産の評価額の算定に用いられます。

この相続税路線価は土地取引の指標となる公示地価(地価公示価格)の8割程度の価格となっております。

以下の国税庁のHP「路線価図・評価倍率表」で実際の土地の路線価を確認することができます。

相続税路線価は毎年7月に発表されます。

 

もっとも、固定資産税にも路線価が存在することはご存じでしょうか。

固定資産税路線価は、公示地価の7割を目途とする価格であり、市町村長(又は都知事)によって定められており、固定資産税評価額等の計算に(間接的に相続税の計算にも)用いられております。

固定資産税路線価は毎年4月以降に発表されています。

 

さて、この固定資産税路線価については、以下の「全国地価マップ」のHPで確認することができます。

この全国地価マップでは、固定資産税路線価だけでなく、相続税路線価や、地価公示価格(地価調査価格)も一気に調べることができるので、便利ですよ!

 

いずれも、その年の1月1日を基準として評価額が決定されることになっていますが、相続税路線価は毎年見直しがされる建前となっているのに対し、固定資産税路線価の見直しは基本的に3年ごととなっています(直近では平成30年度が評価替えの年でした。)。

 

 

一般に、土地については、実勢価格以外に、公示価格(基準地価)、路線価、固定資産税評価額などの価格があることは知られていますが、厳密には、路線価にも相続税路線価と固定資産税路線価があり、その役割等も異なっていることについて、ご理解頂けたでしょうか?

 

相続税評価額のことで税務署と紛争になっている方は、クーリエ法律事務所へどうぞ!

自筆遺言の財産目録に関する法務省のQ&A

先日の記事で書いた自筆遺言の方式緩和について、法務省のホームページではQ&Aを設けています。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00240.html

 その中で重要と思われるものを以下に抜粋致しておきました。

 

 

Q3 財産目録の形式に決まりはありますか?

 

A3 目録の形式については、署名押印のほかには特段の定めはありません。

したがって、書式は自由で、遺言者本人がパソコン等で作成してもよいですし、遺言者以外の人が作成することもできます。

また、例えば、土地について登記事項証明書を財産目録として添付することや、預貯金について通帳の写しを添付することもできます。

いずれの場合であっても、Q4のとおり、財産目録の各頁に署名押印する必要がありますので、注意してください。

 

 

Q4 財産目録への署名押印はどのようにしたらよいのですか?

 

A4 改正後の民法第968条第2項は、遺言者は、自書によらない財産目録を添付する場合には、その「毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)」に署名押印をしなければならないものと定めています。

つまり、自書によらない記載が用紙の片面のみにある場合には、その面又は裏面の1か所に署名押印をすればよいのですが、自書によらない記載が両面にある場合には、両面にそれぞれ署名押印をしなければなりません。

押印について特別な定めはありませんので、本文で用いる印鑑とは異なる印鑑を用いても構いません。

 

 

Q5 財産目録の添付の方法について決まりはありますか?

 

A5 自筆証書に財産目録を添付する方法について、特別な定めはありません。

したがって、本文と財産目録とをステープラー等でとじたり、契印したりすることは必要ではありませんが、遺言書の一体性を明らかにする観点からは望ましいものであると考えられます。

なお、今回の改正は、自筆証書に財産目録を「添付」する場合に関するものですので、自書によらない財産目録は本文が記載された自筆証書とは別の用紙で作成される必要があり、本文と同一の用紙に自書によらない記載をすることはできませんので注意してください。

 

 

Q6 自書によらない財産目録の中の記載を訂正する場合にはどのようにしたらよいのですか?

 

A6 自書によらない財産目録の中の記載を訂正する場合であっても、自書による部分の訂正と同様に、遺言者が、変更の場所を指示して、これを変更した旨を付記してこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じないこととされています。

 

 

お分かりになりましたか?

登記を目録として利用できることや、1枚でも両面ならば両面ともに署名押印を要するとか、(民法上は)財産目録をステープラー等でとじたり契印したりすることが必要ではないなど、もしかすると意外な点もあったのではないでしょうか。

自筆遺言の方式緩和による財産目録を利用して自筆遺言を作成される皆様は、以上の点について、よくご注意下さい。

 

遺言、遺産分割の相談はクーリエ法律事務所にどうぞ!

いよいよ明後日から自筆遺言の方式が緩和されます。

今年は、昨年7月6日に成立した相続に関する民法改正法による改正の大部分が施行される年です。

 

まず、明後日1月13日からは、自筆証書遺言の方式を緩和する方策が施行され、自筆証書にパソコン等で作成した目録を添付したり、銀行通帳のコピーや 不動産の登記事項証明書等を目録として添付したりして遺言を作成することができるようになります。

 

その他の主な改正については、本年7月1日から施行されます。

 

ただし、配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等については、来年4月1日からの施行となります。

 

皆さん、今一度、改正の内容を確認しておかれてはいかがでしょうか?

法務省のHPのリンクを貼っておきます。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html

 

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無償の相続分譲渡が「贈与」に当たるとした最高裁判決で、税務に影響が出るのか?

前回は、共同相続人間でされた無償の相続分譲渡が遺留分算定の基礎財産に算入すべき「贈与」に当たるとした平成30年10月19日付の最高裁判決をご紹介しましたが、今回はこの判決の税務面への影響について少し気になる点を記載します。

 

というのは、共同相続人間でされた無償の相続分譲渡について、税務上は従来、相続分の贈与であるとは認識されてこなかった点に影響が出るのかどうかです。

 

つまり、共同相続人間でされた無償の相続分譲渡があっても、譲渡をした相続人は単に持分的な権利を失い、何らの財産も取得していない以上は相続税を負担せず、他方で、譲渡を受けた相続人が元々の相続分と譲り受けた相続分に応じて取得した財産について相続税を負担するものとされていました。

 

共同相続人らの遺産分割の結果として、相続分を持ちながらも何も財産を取得しなかった相続人は相続税を支払う必要がないのですが、この場合と実質的に変わりがないことなどがその根拠となっています。

相続人らは、それぞれが有する最終的な相続分に応じて被相続人から直接財産を取得したものとして取得財産に応じた相続税のみを負担すればよかったわけです。

 

 

さて、もし仮にですが、共同相続人間でされた無償の相続分譲渡をあくまで「贈与」だと考えるのであれば、譲渡をした相続人は相続分に応じた相続税を負担したうえで、譲渡を受けた相続人は、自分の元々の相続分に基づいて取得した財産については相続税を、譲り受けた相続分に基づいて取得した財産については贈与税を負担するという複雑で、しかも全体的に税負担が重くなる事態が生じてしまうのではないかというおそれが出てくることになります。

 

相続人が第三者に相続分を無償譲渡した場合には、相続人が相続税を、第三者が贈与税を負担すべきものと考えられていますが、共同相続人間での無償譲渡であっても同じような処理をすべきということになるおそれがあるわけです。

このようなことになるのであれば、おいそれと共同相続人間で相続分を無償譲渡するわけにはいかなくなります。

 

このような危惧が生じてくるのは、今回の最高裁判決の判断の理由づけが一見すると、かなり広範囲に妥当しそうな一般的なものとなっているためです。

つまり、最高裁は、相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができるとし、共同相続人間でされた無償の相続分の譲渡は、その相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たると判断しており、このような理由づけからすると、共同相続人間での無償の相続分譲渡については税務上も「贈与」に当たるとして、先ほど述べたような税務上の処理をすべきという考えが出てきても必ずしも不自然とはいえないように思われるためです。

 

もちろん、今回の最高裁判決は、遺留分減殺請求に関して判断したものであって、税務面については何らの判断をしたものではありませんし、遺留分減殺請求権は相続人間の最低限の公平を図るための権利であり、相続人間での無償の相続分譲渡も贈与と認識して遺留分減殺請求の対象とすべきであるため、従来の税務上での取扱いとは異なる考え方が採用されたものであると理解することは、全くおかしくないと思います。

個人的には、今回の最高裁判決が従来の税務上の取扱いに影響を与えるものではないと考えておりますし、今回の件が単なる杞憂にすぎないことを願っています。

 

遺産分割や遺留分減殺請求のことでご相談のある方は、クーリエ法律事務所へどうぞ!

最高裁、遺留分減殺請求に関して、相続分譲渡は「贈与」に当たると判断

平成30年10月19日に、遺留分減殺請求に関して、共同相続人間でされた無償の相続分の譲渡は、その相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たると判断した最高裁判決が言い渡されました。

したがって、遺留分侵害の有無を判断する際には、相続分譲渡も計算に入れて判定をすることになります。

 

この判決の詳細は以下のとおりです。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88060

 

この判決について、以下のHPに記事を書きましたので、ごらんください。

https://souzoku.osaka-lawyer.net/souzokubunjouto-zouyo-iryuubun/

 

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財産債務調書に「価額」を間違って記載したらどうなるのか?

前回に続いて、財産債務調書制度の記事です。

 

1.財産債務調書に記載する価額はどのような金額を記載すれば良いのでしょうか?

2.価額が間違っていたらどうなるのでしょうか?価額を低く記載していたり、高く記載していたら問題になるでしょうか?

今回は、これらの点に関する記事です。

 

まず1.の点ですが、法律上、「価額」は、年末における「時価」、又は取得価額や売買実例価額などを基に財産の現況に応じて合理的な方法によって算定した「見積価額」、を記載することになっています。

詳しくは、国税庁の法令解釈通達や「財産債務調書の提出制度(FAQ)」のⅢ(Q19〜)、Ⅳ(Q40〜)が参考になります。

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hotei/130329/01.htm

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/zaisan_saimu/pdf/zaisan_faq.pdf

 

もちろん、ここで定められているようにきちんと価額が記載できていたら良いのですが、そうでない場合にはどうなるのでしょうか。

2.の質問に対する基本的な回答としては、価額の記載誤りそれ自体では具体的にペナルティがあるわけではない、ということになるのではないかと思います。

 

前に、提出期限内に提出がない場合、または提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産若しくは債務の記載がない場合(重要な事項の記載が不十分と認められる場合を含みます。)に、その財産債務に関する所得税等の申告漏れが生じたときは、その部分の過少申告加算税等について5%加重されることになっていることをご説明しました。

しかし、これをよく読むと、財産債務調書を提出し、そこに記載すべき財産債務及びその重要事項について記載さえしていれば、過少申告加算税等について5%加重されることがないことが分かります。

つまり、価額が多少誤っていたとしても、財産債務の重要事項についての記載がないことにはならないのだとすれば(※もしこの前提が変われば結論も変わります。)、過少申告加算税等について5%加重されることがないということになるでしょう。

 

もっとも、他方で、たとえば額面1億円の債権や債務の価額を1000万円と評価して記載した財産債務調書を提出したような場合であれば、税務署側としては(時価等が1億円であるとの前提で)そもそも残り9000万円については記載がないという解釈のもとで、過少申告加算税等について5%加重を適用してくる余地が事案によってはあるかもしれませんのでご注意ください(可分な財産債務の場合に起こりえる問題点です。)。

 

※そもそも、財産債務調書に記載すらない場合、重要事項が記載されていない場合であっても、その財産債務に関する所得税等の申告をきちんとしていれば、過少申告加算税等が課されないため、5%加重されることもありません。

 

以上のとおりですので、価額を1円でも誤ったらペナルティを受けるのではないか・・・というような不安は抱く必要がないだろうと思います。

お分かり頂けたでしょうか?

 

 

なお、これまで説明した財産債務調書制度によく似たものに、「国外財産調書制度」というものがあります。

こちらの概要は、以下の国税庁のHPを確認しておいてください。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/kokugai_zaisan/index.htm

 

 

以上4回にわたり、財産債務調書制度についてご説明しました。

財産管理のことでご相談がありましたら、クーリエ法律事務所にどうぞ!

財産債務調書を提出すると納税者にもメリットがあります

続いて、財産債務調書制度の記事です。

 

提出期限内に財産債務調書の提出をすると納税者にもメリットがあります。

期限内に調書の提出をしなかった場合とは逆に、過少申告加算税等の軽減措置を受けることができるのです。

 

財産債務調書に記載がある財産債務に関して生じる所得について、所得税等又は相続税の申告漏れが生じたときであっても、その部分の過少申告加算税等について5%軽減されます。

財産債務調書の提出、記載によって、税務署などの調査を容易にすることや、納税者に恩恵を与えて財産債務調書制度を定着させたいという国の考えによって導入されたものではないかと思われます。

 

財産債務に関して生じる所得の意味、内容は、前回の記事をごらんください。

 

こちらの軽減措置は、相続税や亡くなった人の所得税(準確定申告)についても適用されます。

 

しかも、法律上、提出期限後に財産債務調書を提出した場合であっても、その財産債務に関する所得税等又は相続税について、調査があったことによって更正又は決定の処分がされることを予知して提出されたものでないときは、その調書は提出期限内に提出されたものとみなして、過少申告加算税等の軽減措置の特例を適用することとされています。

このような(例外的な)取扱いを見ると、国がいかに財産債務調書制度を定着させたいと考えているのかがよく分かります。

 

このようなメリットもありますので、財産債務調書の提出を忘れていた方、期限後であっても、今からでも提出を検討されてはいかがでしょうか?

 

財産債務調書制度の記事は、さらに次回に続きます。

財産債務調書を提出しなかったら、どうなるのか?

前回に引き続いて財産債務調書制度の話です。

 

さて、財産債務調書を提出しなかったら、どうなるのか?というところが、納税者にとってはまず気になるところでしょう。

 

今のところ、提出漏れについて刑事罰を受けるようなことはありません。

 

しかし、提出期限内に提出がない場合、または提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産若しくは債務の記載がない場合(重要な事項の記載が不十分と認められる場合を含みます。)に、その「財産債務に関する所得税等」の申告漏れが生じたときは、その部分の過少申告加算税等について5%加重されることになっています。

 

※これによれば、提出期限内に財産債務調書の提出がない場合などであっても、その財産債務に関する所得税等の申告をきちんとしたときは、過少申告加算税等が課されないので、5%加重もないということになります。過去に財産債務調書の提出漏れ、記載漏れがあったとしても、その財産を隠すのではなく、財産債務調書を期限後提出するか、期限後提出をしなかったとしても所得税等の申告はきちんと行いましょう。

 

なお、ここでいう所得税等の「等」には、相続税や亡くなった人の所得税(準確定申告)は含まれません。亡くなった人が財産債務調書の提出、記載を怠っていたとしても、それを理由に相続人の過少申告加算税等の加重をするのは酷だからでしょう。

 

さて、上記の「財産債務に関する所得税等」とは具体的に何を指すのかというと、以下の所得に関する所得税等です。

 

・財産から生じる利子所得又は配当所得

・財産の貸付け又は譲渡による所得

・財産が株式を無償又は有利な価額で取得することができる権利等(いわゆるストックオプション等)である場合におけるその権利の行使による株式の取得に係る所得

・財産が生命保険契約等に関する権利である場合におけるその生命保険契約等に基づき支払を受ける一時金又は年金に係る所得

・財産が特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権その他これらに類するもの(以下「特許権等」といいます。)である場合におけるその特許権等の使用料に係る所得

・債務の免除による所得

・上記1から6までの所得のほか、財産債務に基因して生ずるこれらに類する所得

 

したがって、「財産債務に係る所得税等の申告漏れ」とは、財産債務に直接基因して生ずる上記の所得に関して、所得税等の申告がなかったこと又は申告額が過少であったことをいいます。

 

なお、債務に関する所得税の申告漏れとはどういうことか分かりづらいかもしれませんが、債務者が債権者から債務免除を受けたために、債務者に一時所得が発生しているのに、その全部又は一部について申告をしなかったような場合です。

 

大体お分かり頂けたでしょうか。

財産債務調書制度の記事は、さらに次回に続きます。

財産債務調書、提出を忘れておられませんか?

所得税・相続税の申告の適正性を確保するため、一定の基準を満たす方に対し、保有する財産及び債務に関する調書の提出を求める制度が平成28年1月から施行されています。

いわゆる富裕層の方が調書の提出を要することになりますが、提出を忘れておられる方、国から提出を求める連絡をもらって焦っている方はおられませんか?

 

国税庁のHPは以下のリンクからどうぞ。

 

「財産債務調書制度」のあらまし

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/zaisan_saimu/pdf/zaisan_chirashi.pdf

 

財産債務調書の提出制度(FAQ)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/zaisan_saimu/pdf/zaisan_faq.pdf

 

 

さて、どんな場合に調書の提出が必要となるのでしょうか?

 

調書の提出が必要となるのは、以下の3つの条件を満たす人です。

1.所得税等の確定申告書を提出しなければならない人

2.その年分の退職所得を除く所得金額の合計額が2000万円を超えた人

3.その年の12月31日において、価額の合計額が3億円以上の財産又は価額の合計額が1億円以上の「国外転出特例対象財産」(有価証券等、未決済の信用取引等及び未決済のデリバティブ)を有する人

 

提出時期は、翌年の3月15日まで(翌年3月15日が日曜日に当たるときはその翌日、土曜日に当たるときはその翌々日)となります。期限は所得税の確定申告と同じですね。

提出先は、所得税の納税地の所轄税務署長です。

 

財産債務調書制度の記事は、次回に続きます。

相続の民法改正が成立しました

 

相続に関する民法改正法案がついに成立しました!

相続時の配偶者の優遇などを打ち出した、相続に関する民法改正法などが平成30年7月6日、参院本会議で可決・成立しました。

 

改正法の主な内容は、以下のようなものです。

以下は、当事務所の外部HPの記事へのリンクとなっております。

ただし、改正法成立前の記事となっております。

 

民法改正(1)自筆証書遺言を法務局に保管する制度が始まるかも

 

民法改正(2)配偶者居住権という権利が新たに認められます

 

民法改正(3)配偶者に贈与された住居は原則として持戻しが免除されます

 

 さて、相続の実務に大きく影響が出ることになりますので、皆さんも改正の概要は知っておかれた方が良いと思います。

 

改正の実施時期については、平成32年(2020年)7月までに施行の予定となっているようです。

これにより、昭和55年以来、約40年ぶりに相続のルールが大きく変わることになります。

 

相続、遺言に関するご相談はクーリエ法律事務所にどうぞ!

相続時精算課税の適用後の贈与税の申告を忘れてはいませんか?

ときどき、相続時精算課税制度を適用した後のことについて質問を受けるので、記事を書いてみました。

 

相続時精算課税制度については、国税庁の「No.4103相続時精算課税の選択」「No.4409 贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)」や、当HPの「相続時精算課税制度を利用すると、相続の放棄はできなくなるのか?」の記事もごらんください。

 

さて、本題ですが、ある人からの贈与について、相続時精算課税制度を選択する届出書とともに贈与税の申告をした後に、同じ人から贈与をうけた年は、申告期限内(翌年3月15日まで)に贈与税の申告をすることが必要となります。

 

ここで注意をしなければいけないのは、贈与を受けた金額にかかわりなく、贈与税の申告をしなければならないことです。

相続時精算課税制度の適用を受けることで、累計2,500万円(特別控除額)までの贈与財産については贈与税がかからないことになりますが、累計2,500万円に達していなくても、贈与税の申告をしなければならないのです。

さらには、相続時精算課税制度の選択をしているということは、通常の暦年課税の適用がないことを意味しますので、暦年課税の基礎控除額110万円に達していなくても、贈与税の申告をしなければならないのです。

 

相続時精算課税制度の対象となった贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降は全てこの制度が適用され(暦年課税の適用はありません。)、また、この制度の贈与者が亡くなったときの相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算することになります。

そこで、国税としては、相続時精算課税制度の選択以後、その制度の対象となる贈与者から贈与された時点での贈与財産の評価額及び累計額がきちんと確認できるようにしておく必要があるため、対象となる贈与者からの贈与があった年については、必ず贈与税の申告をするように求めているものと理解されます。

 

贈与を受けた金額が累計2,500万円以下だったから、あるいは少額だったからといって、贈与税の申告を忘れると、その贈与については、特別控除が使えなくなりますので、一律20%での贈与税が課税されます(この贈与税については、最終的には相続時に精算されることにはなりますが。)。

しかも、延滞税、無申告加算税が課されることになります。

 

なお、贈与税の申告を申告期限内にしなかったため、適用を受けなかった特別控除の額は、翌年以降に繰り越すことができるとされています。

 

 

以上のように、相続時精算課税制度を選択した後に、同じ人から贈与をうけた年は、その金額にかかわりなく、申告期限内(翌年3月15日まで)に贈与税の申告をしなければいけないということを、忘れないようにしてください!

遺産分割から抜ける方法、ご存じですか?

法定相続人であっても、親族間の紛争は嫌だ、長い間続いている遺産分割手続から少しでも早く抜けたいとか、裁判所の手続きに参加するのは負担だから抜けたい、などと考える方は少なくないものです。

そんな方は、「相続分の譲渡」や「相続分の放棄」について検討してみるとよいかもしれません。

当事務所が開設しているもう一つのホームページのコラムで、相続分の譲渡や相続分の放棄について、4回にわたって記事を書いていますので、興味のある方はごらんください!

 

知っていますか?遺産分割手続から抜ける方法(1)相続分譲渡 

 

知っていますか?遺産分割手続から抜ける方法(2)相続分譲渡の税金

 

知っていますか?遺産分割手続から抜ける方法(3)相続分譲渡の登記

 

 知っていますか?遺産分割手続から抜ける方法(4)相続分の放棄

 

参考になりましたでしょうか?

遺産分割のことでご相談がありましたら、当事務所の法律相談に申込みをしてください!

事業承継セミナーの講師をしてきました!


昨日(2018年2月14日)、大阪の南納税協会さんで事業承継セミナーの講師をしてきました。

主に事業承継の法律面に関するセミナーでした。

そのときのレジュメを以下からダウンロードできるようにしました。

エッセンスがぎゅっと詰まっている!?のではないかと思いますので、ご興味のある方は参考にどうぞ。

事業承継のご相談の方は当事務所までご連絡下さい!

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住宅取得等資金の贈与税の非課税制度、知っていますか?(2)

昨年12月6日の記事からの続きです。

住宅取得等資金の贈与税の非課税制度の注目ポイントの二つ目です。

 

二つ目は、自宅の新築等の契約の締結日が平成31年4月1日から平成33年12月31日までで、対価又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%であるときは、消費税率8%の場合と比べて非課税限度額が大幅に高く設定されている点です。

 

以下の表のとおり、住宅取得資金を贈与したもらった場合の贈与税の額が大幅に低くなるのです。新築等の契約日、対価等の金額、省エネ住宅か否かによって異なるものの、非課税限度額は、消費税率8%の場合の額と比べて最大で3倍以上になることもあります。 

 

1.住宅用家屋の新築等の消費税等が税率10%である場合

住宅用家屋の取得等に係る契約の日

省エネ等住宅

左記以外の住宅

平成3141日~平成32331

3,000万円

2,500万円

平成3241日~平成33331

1,500万円

1,000万円

平成3341日~平成331231

1,200万円

700万円

 

2.上記1以外の場合

住宅用家屋の取得等に係る契約の日

省エネ等住宅

左記以外の住宅

~平成271231

1,500万円

1,000万円

平成2811日~平成32331

1,200万円

700万円

平成3241日~平成33331

1,000万円

500万円

平成3341日~平成331231

800万円

300万円

 

いうまでもなく、消費税10%への増税が平成31年10月1日に予定されていることにあわせて導入される軽減措置です。

 

消費税率が2%アップするのは痛いですが、これだけの贈与税非課税枠があるので、父母・祖父母から子・孫への贈与資金での住宅取得を考えておられる方々は、住宅取得等資金の贈与の時期・額、契約の時期を改めて検討してから判断するのが賢いかもしれません。

検討の際は、予定している住宅等の金額・種類、予定している贈与額に応じて、消費税増税で増加する消費税と、上記の特例で減税される贈与税の額を比較して判断することになるでしょうか。

税理士さんとよく相談してください。

 

さて、2回にわたって、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度について、注目ポイントを説明してきましたが、いかがだったでしょうか。

皆さんの参考になれば幸いです!

法定相続情報証明制度、利用していますか?

昨年(平成29年)から始まった法定相続情報証明制度はご存じでしょうか。

 

これまで不動産の相続登記や金融機関の相続手続きをするときは、その手続きごとに、亡くなった被相続人の出生から死亡までの戸籍や相続人の戸籍一式を提出する必要がありました。

そのため、各地に不動産があったときや、多くの金融機関に口座を持っているようなときには、戸籍一式を何セットも用意する必要がありました。

法定相続情報証明制度の開始により、戸籍一式が、法務局の登記官の認証つきの「法定相続情報証明一覧図」ですむようになったのです。

 

具体的な制度の内容は、こちらの法務省のHP「法定相続情報証明制度について」をご覧ください。

 

 この制度に関する新聞記事によると、概ね以下のような状況にあるそうです。

・証明書の発行枚数は制度開始後半年で約20万枚(利用者は10万〜20万人)

・金融機関でも証明書を使った手続きが増えている

・証明書は家庭裁判所の遺産分割調停や相続放棄の手続きに利用できる

・証明書は現在のところ、相続税の申告の添付書類としては使えない(証明書では実子、養子を区別しないが、相続税では区別の必要があるため)

 

これによると、この制度は徐々に浸透してきているようですね。

戸籍の収集をはじめ、相続手続きに分からない点がある方は、当事務所の法律相談に申込みをしてください!

中小企業の非上場株式の相続税等について100%猶予の特例ができるか!?

先日、平成30年度の税制改正大綱が発表されました。

その中で個人的に注目しているのが、中小企業の非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の特例の導入です。

従来からあった制度の特例ですが、大幅に課税が緩和される可能性があるので、朗報といえます。

 

現行の納税猶予制度は大まかに言うと、中小企業の代表者から相続、贈与を受けた後継者である筆頭株主(1名)について、発行済株式の3分の2を限度に80%相当の相続税等の額(つまり最大約53%の株式の相続税等相当額)について、納税を猶予するという制度です。

この猶予が認められるための条件、猶予が打ち切られる場合、免除が認められる場合の要件などについて法令で細かい規定がたくさん定められています。

例えば、納税猶予が認められた場合でも、申告期限後5年間の平均で従業員の雇用を8割維持できなければ、納税猶予が打ち切られ、猶予されていた税額を支払わなければならないことになっております。

詳しくは、こちらの国税庁のHPをごらんください。

 

さて、もし今回の税制改正が実現すると、特例により、後継者である株主(同族関係者を含めて最大3名まで)について、最大で、全株式100%の相続税等相当額の納税を猶予することができるようになります。

また、この特例では、申告期限5年間平均で従業員の雇用8割維持という条件を満たさなくても、納税猶予が打ち切られない予定です。

その他、猶予税額についても免除される場面が広がるものと思われます。

 

なお、今回の税制改正大綱によると、今回の特例だけでなく、現行の制度においても、後継者が代表者以外の者から株式を贈与等により取得した場合でも、一定の要件を満たすときは、納税猶予制度の対象とする予定となっています。

 

 

ただし、今回の特例は、平成30年から平成39年までに相続、贈与が行われる場合に適用されるという10年間の期限付きとなっています。

国が、この期間内の相続税、贈与税の負担を軽くすることで、この間に次の世代への事業承継が円滑に行われるように、後押ししているということです。

 

実際のところ、今回の特例が正式導入されるのかどうかはもちろん、正式導入されるときに要件がどこまで緩和されて、実際に使いやすい制度になるかどうかについて、今後も注目です!

 

事業承継のことでお悩みの方は当事務所にご相談ください!

住宅取得等資金の贈与税の非課税制度、知っていますか?(1)

住宅取得等資金の贈与税の非課税制度は、ご存じでしょうか?

平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など(直系尊属)からの贈与によって、居住用の自宅の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」とします。)の支払いのための金銭(以下「住宅取得等資金」とします。)を取得した場合に、一定の要件を満たせば、一定の非課税限度額まで贈与税が非課税となる制度です。

 

詳細は以下の国税庁のHPでご確認ください。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/pdf/jutaku27-310630.pdf

 

「No.4508直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4508.htm

 

さて、この非課税制度について特に私が注目しているポイントをあげていきます。

 

一つ目は、この非課税制度を使った後さらに、通常の暦年課税の場合には贈与税の基礎控除 (110万円)を、また相続時精算課税制度を利用している場合には特別控除(2500 万円)をすることができる点です。

 

「消費税8%」の新築等の場合、現在であれば、通常の暦年課税においては、最大1200万円(省エネ等住宅の場合)+110万円(基礎控除)=1310万円まで贈与税が非課税となり、相続時精算課税制度を利用する場合には、最大1200万円(省エネ等住宅の場合)+2500万円(特別控除)=3700万円まで贈与税が非課税となります。

 

「消費税10%」の新築等の場合、通常の暦年課税においては、最大3000万円(省エネ等住宅の場合)+110万円(基礎控除)=3110万円まで贈与税が非課税となり、相続時精算課税制度を利用する場合には、最大3000万円(省エネ等住宅の場合)+2500万円(特別控除)=5500万円まで贈与税が非課税となります。

 

なお、相続時精算課税には特例があり、平成33年12月31日までに、父母又は祖父母から、自分の居住用の自宅の住宅取得等資金について贈与を受けた場合で、一定の要件を満たせば、贈与者がその贈与年の1月1日に60歳未満である場合であっても相続時精算課税を選択することができることになっています(通常の相続時精算課税制度では、贈与年の1月1日において贈与者が60歳以上であることが必要です。)。

 「No.4503相続時精算課税選択の特例」

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4503.htm

 

次回に続きます。

被相続人が固定資産税の数倍の金額を支払っていても使用貸借であるとした裁決

今回は、平成29年1月17日裁決の紹介です。

この裁決は、土地上に建物を有していた被相続人が、その土地の所有者に地代として支払っていた金銭(以下「本件金員」とします。)の額が、その土地の固定資産税等年税額を超えていたものの、被相続人がこの土地上に借地権を有していたとは認めることはできないとして、税務署長の処分を全部取り消したという納税者完全勝訴の裁決です。

 

審判所は、以下のような判断をしました。

・被相続人が昭和56年に本件土地の使用収益を開始した当時は、使用貸借契約に基づくものであったと認められ、平成2年に請求人が本件土地を相続により取得した後、被相続人から請求人に対する本件金員の支払いが開始されたのが平成6年であるから、請求人は平成2年に被相続人の土地に関する使用貸借契約の貸主の地位を承継したものといえる

・本件金員の支払開始に当たり、請求人と被相続人との間で契約書が作成されたなどの事情は見当たらず、証拠を見ても本件金員の支払開始の経緯、動機、本件金員の算定根拠が明らかではないこと、被相続人と請求人は親子であり、本件金員の支払が開始された当時、請求人が未成年者であったことを併せ考慮すると、本件金員の支払が開始されたことをもって、賃貸借契約に変更されたとみることはできない

・本件相続開始時においては、本件金員の年額が、本件土地の固定資産税等年税額の約〇倍であったものの、このような事情のみでは、本件金員が、本件土地の使用収益の対価であると認めるに足りず、被相続人による本件土地の使用収益は使用貸借契約に基づくものであったと認めるのが相当であり、被相続人が本件土地上に借地権を有していたとは認めることはできない。

 

 

さて、元国税審判官の弁護士としては、納税者勝訴事案が増えることは良いことだと思っていますが、本件では、審判所はなかなか思い切った判断をしたように思います。

たしかに、金銭の支払いがされていても土地使用の対価とまで認められなければ、有償の賃貸借契約ではなく無償の使用貸借契約であるというのが法律論なのですが、本件では固定資産税年額の数倍が支払われていたわけですので、なかなか難しい判断だったのではないかなと思います。

過去に遡った事実認定や法律論を重視したところをみると、弁護士が国税審判官(任期付公務員)として関わった事案なのかな?などと憶測しました。

 

いずれにせよ、税務署長(国)はこの裁決を不服として裁判を起こすことができないため、本件はこれで確定となります。

節税目的の養子縁組でも有効ですが税務上は否認されるかもしれません

今回は、もっぱら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、その養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできないとした最高裁判決(平成29年1月31日第三小法廷判決)のご紹介と注意点を記載しました。

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預貯金に関する最高裁の判例変更が過去の遺産分割へ与える影響は?

報道されておりましたとおり、平成28年12月19日に、最高裁が従前の判例を変更して、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権がいずれも遺産分割の対象となるとの初めての判断を示しました。

相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるとの従前の最高裁の判断を変更したものです。

今回の最高裁判例の内容はこちらの最高裁のサイトをご覧ください。

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事業承継に伴う株価対策について(第1回)

所有財産の中に、上場していない同族会社の株式が含まれている会社のオーナーやその相続人にとって、その株式の評価額がいくらになるのかは、相続(相続税)の関係上、非常に重要な問題となることが多くあります。

中小企業、同族会社の非公開株式は、第三者への売却もままならず、換金が容易ではないうえ、実際には手放せないケースも多いにもかかわらず、会社の収益・財務状況によっては非常に多額の評価額がついてしまい、相続税が多額になったり、株式を集中的に相続せざるを得ない会社後継者が現金など株式以外の財産を十分に相続できないという事態が発生してしまうことが多々あるからです。

そこで、相続対策の一環としての非公開株式の株価対策(評価額低下のための方法)にどのようなものがあるのか、次回以降、簡単にご紹介していきたいと思います。

 

今回は、その前提として、まず相続税の世界で、株式評価がどのような方法で行われているのか、簡単にご説明しておきましょう。

非公開株式の相続税実務における評価方法は、相続税の財産評価基本通達(178以降)に詳しく定められています。これは通達ですので、この通達に従った評価額が絶対的に正しいというわけではありませんが、通達に従った評価額であれば税務署からは否認されなくなるため、実務上の基準となっているわけです。

この通達にしたがいますと、株式の評価は、類似業種比準価額方式、純資産価額方式、これらの併用方式、配当還元価額方式のいずれかによることになりますが、一般の事業会社において、株価対策が必要となるような、株主の中で支配的な地位にある株主の株式については、通常、およそ以下のような基準で評価されることになります。

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遺言書があっても、それと異なる内容の遺産分割をすることができます

遺言書がある場合、法定相続人や受遺者らが話し合い、遺言書と異なる内容で遺産分割協議をすることができるのでしょうか。また、相続税以外に贈与税までかかったりしないのでしょうか?

一般的には、自分の権利を譲渡したり放棄することは自由であるため(私的自治の原則)、法定相続人や遺贈を受けた者(受遺者)らが全員同意するのであれば、(遺言にしたがって取得する権利を放棄した上で)改めて遺言書と異なる内容の遺産分割をすることも可能です。税務上も、遺言書による相続とは別の贈与、譲渡、交換などがあったものと認定して、相続税に加えて贈与税や所得税がかけられる可能性は低いといわれています。

ただし、以下のとおり、遺言執行者がいる場合には、状況が若干異なり、税務上も注意が必要となります。

遺言書で指定された遺言執行者が就任し、または家庭裁判所に遺言執行者が選任されると、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権利義務が遺言執行者に帰属します(民法1012条)。また、『遺言執行者がある場合』(※遺言書で執行者として指定を受けた者が「就任を承諾する前」もこれに含まれますが、「就任を承諾しなかった場合」はこれに含まれません。)には、相続人は、相続財産の処分その他遺言執行を妨げる行為ができないとされていますので(民法1013条)。そのため、遺言執行者がいる場合には、相続人らは遺言書と異なる内容の遺産分割協議はできないのではないか(無効となるのではないか)、という点が問題となります。

 

ですが、以下のような場合には有効となると考えられております。

①遺言執行者が遺言書と異なる内容の遺産分割協議について同意、追認した場合

遺言執行者は、遺言書の内容をそのまま実現できない場合やそれが適当でない場合には、遺言の趣旨を害さない範囲で相続人らと協議し、修正した内容で執行することもできるため、遺言執行者が同意、追認した場合には、その遺産分割協議も有効とされています。

②遺言の内容が特定の財産の遺贈(特定遺贈)である場合

特定遺贈については受遺者がいつでも放棄できるので、受遺者の遺贈放棄によって、遺言執行者において特定遺贈の執行ができなくなり、遺贈の対象となった財産は相続人らが共有する遺産に復帰し、改めて相続人らの遺産分割協議の対象となるため、遺言書と異なる内容の遺産分割協議をしているように見えても、遺言執行者の権限を妨げることにならず、有効となります。

(また、以上のような場合でなくとも、そもそも個人間での交換や贈与は当然自由なので、遺言執行者の同意、追認なしに遺産分割協議をしても、③遺言の内容を事後的に変更したものとして、その遺産分割協議が有効になる余地がある、ともいわれているようですが、この点は明確ではありません。)

 

税金面では、以下のように考えられるのではないかと思います。

①の場合、遺言執行者がいない場合(の「遺言書と異なる内容の遺産分割」)と状況があまり異ならないので、相続税に加えて贈与税や所得税がかけられる可能性は高くはないと思われます。

②の場合には、遺贈の放棄後、相続人らの遺産分割協議によって相続人らは遺産を取得したことになるので、相続税以外に贈与税や(譲渡)所得税が課される可能性は低いと思われます。

その他の場合には、税務署が、遺言執行者がいる限り遺言と異なる内容の遺産分割協議はできないので、それは「遺産分割協議」ではなく、遺言による相続後に「別個の交換、贈与」がなされたものと理解して、相続税に加えて、贈与税や所得税がかけられる可能性が理論上あることは否めないのではないかと思われます。税務署には、どのような結果で遺産が分割されることになったとしても、相続税の総額がきちんと支払われるなら厳密な法律論はあえて気にしない、それに加えて贈与税や所得税を重ねてかけたりはしない、という実務感覚があるように思いますが、上記のような課税の可能性が理論上はあることに一応ご注意を!

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相続、事業承継セミナーの講師をします!

10/14,10/28の2日間にわたって、南納税協会主催の相続、事業承継セミナーの講師をつとめさせて頂きます!

場所は大阪社会福祉会館です。


計6時間の長時間ではありますが、私と相続税などの資産税が専門の税理士(国税OBの方です)の二人でやらせて頂くので、なんとか飽きずに聞いて頂けるかと思います。


14日分はレジュメの作成も何とか終了しました。28日分も今から作成しないと! 

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相続預金に使途不明の出金がある場合に、その使途不明金は遺産分割の対象となるのか否か?

遺産分割の対象となる財産は、亡くなった被相続人がその時点で有していた財産のみです。

ですが、相続人が亡くなった被相続人の預金の履歴を調べてみると、生前に、被相続人の生活状況からすると不自然な時期での多額な出金(一般的に「使途不明金」と言われています。)が見つかり、被相続人と同居したり、その看護をしていた一部の相続人が勝手に出金をして懐に入れてしまったのでは?という疑いが発生することが時々あります。

このような場合、他の相続人にとっては、死亡時の預金しか遺産分割の対象とならないとすると不公平であるため、その「使途不明金」も遺産に戻して遺産分割の対象とすべきだ、というような主張がされることになりますが、このような主張は通るのでしょうか?

色々なケースに分けて考えてみましょう。

  1. 前提として、その「使途不明金」について、亡くなった被相続人が自らのために出金していたことが立証された場合には、そのような主張は当然通りません。なお、出金当時、被相続人の判断能力に問題がなかったような場合には、被相続人が自らのために出金した可能性がある以上、遺産分割協議においてそのような主張は通らない可能性が高くなります。

  2. また、その「使途不明金」について、被相続人が一部の相続人から貸りていたお金を返済したものであるとか、立て替え払いをしていた一部の相続人にその支払いをしたものと立証された場合にも、そのような主張は通らないことになります。

  3. 次に、その「使途不明金」が、被相続人が自らの意思で一部の相続人に対して贈与したものと明らかになった場合には、その一部の相続人は「特別受益」を受けたことになりますので、計算上、使途不明金も相続財産に加えて相続人らの相続分を算定した上で、特別受益を受けた一部の相続人はその分について既に遺産の前渡しを受けていたものとして扱われることになります。
    したがいまして、基本的には、他の相続人の主張が通ったのと同じような形になります。
    なお、特別受益の有無について争いがある場合でも、家庭裁判所での遺産分割の調停や審判の中で最終的に解決されることになります。

  4. さらに、その「使途不明金」が、被相続人の意思によらずに、一部の相続人が無断で出金したもの(※被相続人が後に、出金されたお金を相続人のものとすることについて追認した場合には、3.のケースになります。)と明らかになった場合には、被相続人は死亡時点でその相続人に対して、「不法行為に基づく損害賠償請求権」や「不当利得返還請求権」といった金銭の請求権を持っていたことになり、これが被相続人の遺産に含まれていると考えられます。
    ただし、ここで注意をしなければならないのは、最高裁判所の判例では、こういった金銭の請求権は、死亡と同時に相続人らに法律上当然に分割され、相続分に応じて権利承継されることになっているため、原則として遺産分割協議の対象とならないところです。
    ですから、相続人全員が上記の請求権を遺産分割協議の対象とすることに合意した場合には、他の相続人の主張通り遺産分割協議の中で請求権を遺産として分配することが可能となるものの、そうでない場合には、他の相続人は各自、上記の請求権の自分の相続分について、遺産分割協議とは別に、出金をした一部の相続人に対して民事で支払いを求めていくことになり、場合によっては調停や裁判を要することになります。

 

さて、以上がおおまかな整理ですが、実際には、そもそも上記のどのケースに当たるのかの立証自体が困難なケースが多いのではないかと思います。

事実関係を明確にするための証拠が不十分であるのに、「使途不明金」にこだわり続けてしまうと、最終解決までに要する期間が必要以上に長期化してしまいます。最終的には、使途不明金について目をつぶり、死亡時の預金額で遺産分割をせざるを得ないケースもかなりあるのではないでしょうか。

 

「使途不明金」については、冷静に先の展開を予測して判断していく必要がありますので、専門家に相談されると良いでしょう。

当事務所へのご相談を希望される方はこちらからどうぞ!

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限定承認、本当にしますか? まずは法律と税金の専門家にご相談を。

親は財産をある程度残してくれているけど、財産を上回る借金があるかもしれないとか、多額の保証債務があるが将来支払いを請求されるかどうかは分からないというような場合なら、限定承認をすれば良い、そんなアドバイスを聞いたことはありませんか?

もちろん、まちがったアドバイスというわけではありますが、実際に限定承認するかどうかは一度よく考えてからの方が良いかもしれません。限定承認には注意すべき点がいくつもあり、一般の方がイメージする手続きと異なっていたり、専門家の手助けなしに実行するのが簡単ではない場合があるからです。

 

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最高裁判決、投資信託の預かり金は一部の相続人による法定相続分の支払請求ができない

最高裁は平成26年12月12日、一部の相続人が、故人の投資信託に関して発生し、故人の証券口座に入金された預かり金(元は収益分配金や元本償還金)について、相続人自身の法定相続分3分の1の払戻しを証券会社に求めた訴訟において、「上記預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の1人は、上記販売会社に対し、自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができない」と判断しました。

最高裁の判断の流れは、以下のようなものです。

共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく(最高裁第三小法廷平成26年2月25日判決)、元本償還金や収益分配金の交付を受ける権利はこの受益権の内容を構成するものなので、共同相続された受益権につき、相続開始後に発生した元本償還金又は収益分配金が預り金として販売会社の被相続人名義の口座に入金された場合にも、預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の1人は、販売会社に対し、自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができない、というものです。

 

この判決が出るまで、投資信託については、法定相続分の解約・払戻しができるか否かなどの点について、証券会社の取扱いや裁判所の判断も別れていたところですが、この判決により、実務上、相続人間で遺産分割について話がつかない場合に、故人の投資信託について、一部の相続人が自己の法定相続分だけの解約金や預かり金の支払を求めても証券会社はこれに応じない、という扱いが一般化するのではないかと思われます。

つまり、投資信託については、預かり金も含めて、相続手続きに全員の合意、遺産分割協議の成立が必要ということになりますね。

なお、今回の判決の事例は委託者指図型投資信託に関するものでしたので、それ以外のタイプの投資信託でも同じ結論となるのかは分かりませんが、今回の判決文の内容からすると、投資信託の種類・内容にはあまり左右されないのではないかとも考えられるところです。

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相続放棄について注意すべきこと

相続放棄について注意すべきことは色々ありますが、以下の点については特にお気をつけ下さい!

  1. 相続放棄をするには必ず家庭裁判所への申立てが必要です。
    関係者に相続放棄の意思を伝えるだけでは相続放棄にならず、負債を相続してしまいますので、ご注意を。
    最悪、遺産分割で資産を全くもらわなかった人が、負債だけを相続してしまうという事態になりかねません。
    なお、相続分皆無証明書の利用にはご注意を(詳しくは以前の「相続分なきことの証明書って何?」の記事をご覧ください)。

  2. 相続放棄の手続前に、相続財産の一部を処分してしまうと、民法上、相続を承認したものとみなされて(法定単純承認)、相続の放棄ができなくなります。相続財産の処分に当たるか否かはときどき問題となります。
     悩ましいのは、故人の預金口座から葬祭費用等を支出するようなケースでしょうか(結論的にはセーフ=相続放棄OKになることが多いと思いますが。)。可能ならば避けた方がよいということにはなりますね。

  3. 相続をするのか、放棄するのかは、原則として、「相続の開始(=死亡)を知った時」から3か月以内の「熟慮期間」にしなければならず、相続放棄をせずに熟慮期間をすぎてしまうと相続を承認したものとして、以後、相続放棄ができなくなってしまいます。そのため、死後3か月以上経ってからする相続放棄の申立てをする場合には、「相続の開始(死亡)を知った時」がいつかが問題となります。

  4. 亡くなった人とは遠く離れて暮らしていたため財産や負債の状況がよく分からず、調査のために時間がかかるような場合、熟慮期間については、家庭裁判所に延長を申し立てることも可能ですので(必ず認められるわけではありませんが。)、熟慮期間が経過する前にこの申立てをすることを検討した方がよい場合があります。

  5. 相続の放棄をした人は最初から相続人ではなかったことになります。
     他の同順位の相続人あるいは次順位の相続人(その相続放棄によって新たに法定相続人となる場合があります。)がいる場合は、その人たちが資産も負債も相続してしまうことになるので、誰も負債を相続しないようにするためには、全ての法定相続人(包括遺贈を受けた人を含みます。)が同時に又は順次、それぞれの熟慮期間内に相続の放棄の手続きを取っていくことが必要となります。
     ですので、その前提として、全ての法定相続人の調査・確定が必要となります。

  6. なお、相続時精算課税制度を利用しても、相続の放棄はできます。

  7. また、未成年者が相続放棄の申立てをする場合などには、特別代理人の選任が必要となるときがあります。

相続放棄でお悩みの方は、当事務所にご相談下さい!

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遺産の調査をしたい!そんなときは

相続人の一人が遺産を全て握っており、他の相続人が遺産の内容を知りたくても教えてくれない、そんなケースが多くあります。典型例は、亡くなった親の実家の近くに住んで親の身の回りの世話をしていた子どもが、家を出て遠方に住んでいる他の兄弟には全く遺産の内容を明かさない、といった場合です。


こんなときに、他の相続人は遺産の開示を求めたいと考えられるわけですが、なかなか応じてもらえないことが多いものです。実は、相続人が他の相続人に対して遺産の内容等を開示する義務を負っている(法律上の開示・報告請求権がある)といえるだけの法律上の根拠も直接的には見当たらないのです。

では、他の相続人はどうすべきでしょうか?

すばり、自分たちで遺産やそのヒントを探していかなければならない!のです。

 

  • 公正証書遺言が存在しているかどうかは、全国どこの公証役場でも探せるはずです。まずはこれを探してみましょう。遺言書には遺産の詳細についても載っていることもあります。
  • 不動産については、固定資産税の納税通知書(固定資産評価証明書)、市町村の名寄帳、法務局の地図・登記簿などから特定していきましょう。
  • 預貯金については、特に死亡時や過去の住居の近くや交通の便のよい場所にある金融機関に問い合せ、戸籍など所定の必要書類を提出して、相続人として口座の残高や履歴、貸金庫の有無などについて開示を求めましょう。
  • 証券会社については、心当たりのある会社に相続人として問合せ(照会)してみましょう。
  • 保険は、預貯金の取引履歴から保険会社を特定して照会するか、保険協会に対する弁護士会照会などの方法で調べましょう。
  • 負債については、信用情報機関(銀行系、消費者金融系、信販会社系)に登録されている信用情報の開示を求めましょう。

    ※車については、ナンバーや車種が分かっていれば、弁護士会照会で車の登録事項証明書は取りつけられます。
    ※退職金については、勤務先への問合せ(照会)をしてみましょう。

以上の作業はある程度、相続人ご本人でもできます。

ですが、手続きのために各所への問合せ、資料の準備・手続などで時間を取られるのを避けたい、調査をより確実に行いたいということであれば、弁護士などの専門家に依頼することも考えられます。

そもそも、遺産の開示を行わない相続人がいるようなケースでは、遺産分割協議でもめる可能性も高いわけですから、遺産調査から引き続いて遺産分割協議、調停、審判までの手続きを一貫して弁護士に委任されることが適切な場合が多いといえるのではないでしょうか。

弁護士の場合、弁護士会照会という調査手法もありますし、遺産分割調停・審判の代理人になることもできます。


当事務所でもお引き受けしておりますので、費用等については「遺産の調査」のページをご覧ください!

 

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生まれる前の胎児も相続できる場合があります

ご存じですか、生まれる前の胎児も相続人となれる場合があります。

民法第886条1項は、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と規定しています。そのため、胎児の親が胎児出生前に死亡した場合であっても、その相続との関連では、胎児は既に生まれた子どもとして取り扱われ、相続人となることができるのです(もっとも、不幸にも生まれてこなかった場合には,当初から相続人ではなかったことになります。)。 これを知らずに(忘れて)、胎児を相続人に含めずに、出生前に遺産分割協議をしてしまった場合、その協議はどうなるのでしょうか。

一部の相続人のみでなされた遺産分割協議は基本的に無効となりますので、胎児を除いてなされた遺産分割協議は、後に胎児が出生した場合には、無効になると一般的には理解されています。そうすると、出生前に遺産分割協議をしても無駄になってしまう可能性があるので、出生前に遺産分割協議をするのは控えた方が無難、ということになります。

とはいえ、相続税の申告期限は、死亡を知った日の翌日から10か月以内ですので、申告の必要がある場合、出生後は速やかに遺産分割協議から申告・納付までを終えなくてはならないことになります(遺産分割協議がまとまらない場合,間に合わない場合には、とりあえず法定相続分で申告・納付をすることになります。)。

考えてみると、過去になされた遺産分割協議でも、専門家が深く関わっていないものなどは、胎児に相続人の資格があることを前提にせずになされてしまっているものが結構存在するのかもしれませんね。


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遺言で同族会社へ自己株式を遺贈する場合の税金関係にはご注意を。

遺言をするとき、保有している同族会社の株式については社外の人間に拡散させたくないという気持ちなどから、その同族会社に遺贈しようとする場合があります。

しかし、株式を法人に対して遺贈する場合には意外な税金負担が発生することがあるため、注意が必要です。

というのは、亡くなった個人については、時価相当額で株式を法人に譲渡し、時価相当額の譲渡収入を得たものとみなされて所得税がかかることになりますし(実際には相続人が納税義務を承継することになります。)、また場合によっては、会社が自己株式を取得したことに伴い、同族会社の他の個人株主の自らの株式の価値が増えたことについて、他の個人株主が亡くなった個人から贈与を受けたものとみなされ、贈与税がかかることもあり得るのです。

なお、会社にとっての自己株式の取得については、現在の会社法や法人税法のもとでは資本取引であるとして益金、法人税は発生しないものと基本的に考えられているわけですが、会社に株式の時価相当額の益金が発生したとして法人税がかかるとの見解も見受けられるところではあり、この点は若干不明確なところがあります。

 

法人への遺贈は、同族株主や相続人への税金上の影響がありますし、株式の時価評価額によってはそれらの税金が多額となることもありますので、法人への遺贈は税負担のこともよく考え、税理士さんと相談してから!ということになります。皆さん、ご注意を。

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特定の相続人に「相続させる」旨の遺言と代襲相続

一定の相続財産を相続人の「○○に相続させる」とする遺言については、最高裁が、特段の事情のない限り、遺産分割の方法が指定されたものと解すべきで、対象となる遺産は、死亡時に何らの行為を要せずに、直ちに相続により一般承継される旨の判断をしており、「遺贈する」とする遺言と比べて、取得者が単独で所有権移転登記ができる、登録免許税が安い、登記前でも取得者は第三者に権利主張ができる、借地権・借家権の承継についても地主・大家の承諾がいらない、などのメリットがあるため、実務上多用されていますが、この「相続させる」遺言をするに当たっては、以下の点に気をつけて頂きたいと思います。

それは、この「相続させる」遺言によって承継することとされた相続人(予定者)が、遺言者よりも先に(同時も含みます。)亡くなっていた場合には、特段の事情がない限り、その相続人(予定者)の子供らに「代襲」相続はされないと最高裁が判断しているという点です。

そのため、このような場合に、相続人(予定者)の子供らに代襲相続をさせたいならば、基本的にはその旨をきちんと遺言書に記載しておく必要があるわけです。

相続人(予定者)が亡くなった時点で、その子供らに(代襲)相続させる旨の遺言書に書き換えれば良いとも考えられますが、書き換える時間や判断能力がない場合に備えて、また書き換えの手間・費用も考慮して、予め遺言書に代襲相続についても記載しておくことをお勧めします。

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意外な課税(1):贈与した側が贈与税を納付しなければならない場合がある!

さて皆さん、贈与税は基本的に贈与を受けた側が支払うもの、ですよね。

ところが、贈与を受けた側が贈与税の納付をしなかった場合には、なんと贈与をした人もその納税義務を負担することになってしまうのです。これを連帯納付義務といいます。

 

相続税法第34条《連帯納付の義務等》第4項は、「財産を贈与した者は、当該贈与により財産を取得した者の当該財産を取得した年分の贈与税額・・・に相当する贈与税について、当該財産の価額に相当する金額を限度として、連帯納付の責めに任ずる。」 と規定しているのです。

税の徴収のためとはいえ、贈与税の連帯納付義務という制度は一般人にはなかなか理解しがたい制度ですよね。しかも、弁護士としては、連帯納付義務については正面切っては争いようがないケースがほとんど、というのが正直なところです。

 

しかも、連帯納付義務の負担には贈与税の延滞税などの附帯税まで含まれてくるので、贈与後長年が経過して、贈与税の額が膨らんだ後に突然税務署から通知があって、贈与者がその全額について連帯納付義務の履行を求められることになりかねません。

ですから、贈与をするときには、贈与を受けた人が確実に納税をしたかをきちんと確認しておいた方が良く、場合によっては贈与時点で代わって納付した方が良い場合すらあります。不動産などの資産を贈与する場合に、納税資金の現金も合わせて贈与する方法をとられる方もおられます。

 

皆さんも、贈与税が発生する贈与をするときは、連帯納付義務についても考慮に入れておいて下さい!

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平成27年から相続税の発生件数が1.5倍に!相続税対策はすんでますか?

  前回の記事に続いて相続税の話題です。

 

  国税庁の「平成24年分の相続税の申告の状況について」というHPによると、この年の死亡者数約 126 万人のうち相続税の課税対象となった人の数は約5万2千人であり(その割合は 4.2%)、死亡者1人当たりの相続財産の価格は2億557万円であるとされています。

 さて、平成27年1月1日以降に開始した相続については、相続税の基礎控除額が従来の6割に大幅減少となります。

たとえば、妻と子供2人が相続人に当たるという場合、従来なら基礎控除額が8000万円だったのに、平成27年からは4800万円しかなくなりますので、相続財産が4800万円~8000万円ほどあるという方は新たに相続税が発生する可能性が発生したことになります。つまり、保有資産が、不動産が2500~3000万円、預貯金や株式などの金融資産が合計3000万円というような「多少生活に余裕のあるご家庭」の方であれば、相続税の負担が発生する可能性があることになってしまったわけです。 

  基礎控除額の大幅減少に伴い、上記の相続税の課税対象となる人の割合が4%から6%ほどに増えるといわれております。以前から比べると50%も増えるわけですが、他方で、全体の2%しか増えないのか、それなら自分は関係ないのではないかとお思いの方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、これまで一人あたりの相続財産の価格が2億円を超えていたということから分かる通り、今まで相続税がかかっていた層の人はいわゆる富裕層の人が多く、税理士さんと相談して相続税対策もそれなりにしてきた人が多く占めていました。

 これに対して、新たに相続税がかることになる方々には、自分たちは富裕層ではないと認識しておられる方や(プライベートでは)税理士さんとの付き合いがないという方が多いため、相続税対策の必要性の有無についてきちんと認識しておられない、あるいはある程度は認識していても実行を後回しにしている方がたくさんいらっしゃるように感じます。

 相続税対策をしておけばさきほどの2%に入らなくてもすむかもしれませんし、入るとしても不要な相続税を払わずにすむかもしれません。後になって後悔することにならないように、また安心して今後の生活を送れるように、相続税対策は急いでしておくべきでしょう。相続税は多分かからないと思うという方でも、税務相談をして確認しておくべきだと思いますし、相続税対策が必要な場合に一定の費用がかかったとしても、それに見合う以上の経済効果が得られるのが通常です。

 

 まずは専門家に相談をしましょう!

 

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相続税の調査はいずれやってくる!

国税庁のHPには「平成24事務年度における相続税の調査の状況」がのっています。

これをみると、「実地調査の件数は12,210件、このうち申告漏れ等の非違があった件数は9,959件で、非違割合は81.6%(平成23事務年度80.9%)となっています。」との記載が。

相続税がかかる件数が年間約50,000件ですから、かなり高い確率(約4分の1)で税務調査が行われ、しかも調査が行われてしまうと8割以上の確率で相続税の追徴が発生することになっていることが分かります!

しかも、このHPには「追徴税額(加算税を含む。)は610億円(平成23事務年度757億円)で、実地調査1件当たりでは500万円(平成23事務年度549万円)となっています。」とも記載されています。

先ほど8割以上の確率で追徴が発生すると書きましたが、その金額は税額にして500万円以上という恐ろしい結果が!

 

今回は特に平成24事務年度をあげて説明していますが、例年その状況はさほど変わらないといって良いと思います。

このような調査の状況からすると、いずれは相続税の税務調査を受けるんだという意識で臨むことが必要です。ですから、許容範囲を超えた極端・危険な相続対策はしないこと、相続財産を漏らさずに適切に申告をしておくこと、そのために予め資料をきちんと整理・保存しておくことが大切だと考えられます。

 

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子どもら名義の預金の取扱いにはご用心

 昔から、親が相続対策の一環?で生前に子どもなどの名義で預金をしておくことがあります(なお、現在は金融機関での本人確認が厳しくなっているので、親が勝手に新たにこのような預金口座を作るのは以前より難しいと思います。)。

しかし、このような方法を取っていても、その預金が親の相続財産から外れるとは限りません。名義は子どもら名義でも実際には未だ親の財産であると税務署から認定され、相続税の対象財産(相続財産)とされることが度々あるからです。

さて、こういったことにならないようにするためには、きちんと子どもらへの贈与という形を取り、子どもらに預金の存在をきちんと知らせて自分のものとの認識を持っておいてもらうことや(税務署の調査があった場合には、親から贈与を受けていると回答してもらう必要があります。)、預金通帳や印鑑などを子どもらに渡しておくことなど、実態としても親の相続財産から外しておくための措置が必要だと考えられます。

 

子どもらの贈与税の観点からは、課税を完全に避けたいのであれば、毎年子供らそれぞれに対して贈与税の基礎控除額110万円の範囲内で贈与(口座への振込)をすることが必要となりますが、あえて多少の贈与税の申告・納付をして公的な証拠を残すという方法も考えられます(将来の相続税の減税という観点からも望ましい場合があります。)。

なお、毎年一定額(たとえば110万円など)の贈与をする場合に注意すべき点としては、最初の年に将来分も含めて贈与があったもので単にその支払いを分割で毎年しているにすぎないというような認定を受けることがないようにしなければなりません。仮にこのような認定を受けると、最初の年に全額の贈与があったものとされるため、税率が高くなってしまいますし、毎年の基礎控除を生かすことができず、子どもらの支払う贈与税が多額になるおそれがあるからです。ですから、毎年毎年、改めて贈与契約を行い、契約書を作成・保存するのが望ましいといわれているわけです。

 

もっとも、相続開始前3年以内の贈与財産については、法律によって相続財産とみなされて相続税が課されることになっていますので、この場合は、相続税の申告漏れに注意して下さい。なお、相続財産とみなされたものについて以前に支払った贈与税があれば、その分は相続税の額から差し引くことができます。

 

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包括遺贈の遺言をする場合の注意点

遺言をこれからしようとする際に、法定相続人が兄弟姉妹だけだと、遺留分(相続人が最低限相続を保障される分)を持つ相続人がいないことになるので、法定相続人以外の人たちに全財産を渡したいというような場合、その人たちに全財産を遺贈する内容の遺言をしておくことによって、死亡後、基本的にはその意思通りの遺贈がされます。遺言が非常に高い効果を発揮するケースだといってよいでしょう。

そういった場合、被相続人は遺贈を受ける人たちに対して、自分の全財産の全て又は2分の1ずつなどの一定割合で包括的に遺贈(包括遺贈)する内容の遺言をすることになるわけですが、包括遺贈については民法994条・995条に注意しなければなりません。

 

というのは、これらの規定によると、被相続人が死亡した時点で、包括遺贈の対象者(包括受遺者)が先に死亡していた場合、その遺贈は効力が生じず、結局、包括遺贈をするはずだった分は法定相続人に相続されることになっているのです。受遺者には代襲相続(法定相続人の代わりにその子孫が財産を取得すること)のような制度もありませんので、包括受遺者の子供たちにも引き継がれることはありません。

兄弟姉妹はいるが疎遠なので、是非とも非常に世話になった知人2名にすべての財産を(2分の1ずつ)遺贈したいというような場合に、遺言者よりも先に一方の受遺者が死亡した場合、その2分の1は他方の受遺者ではなく、法定相続人の兄弟姉妹に引き継がれることになると、遺言者の意思が完全には果たせなくなってしまいます。

 

しかし、そういったときのことも考えて、民法995条には「ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」との但し書きがきちんとありますのでご安心下さい。遺言書に自分が死亡した時点で受遺者の一方が死亡していた場合には、その分は他方の受遺者に帰属するという趣旨の条項をきちんと記載しておけば、想定外に法定相続人に財産が引き継がれることを防ぐことができるのです。また、こうしておくと、自分の生存中に受遺者の一方が亡くなったときにでも、遺言書を書き換えなくても良くなります。

ですので、包括遺贈をする場合には、こういった予備的な条項を遺言書に入れるかどうかについて、きちんと考えておかないといけませんね!

 

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平成26年税制改正大綱に、相続資産の譲渡に関する取得費加算特例の改正が。納税資金確保に影響!

昨年末に定まった平成26年税制改正大綱には、平成27年1月1日以後に開始する相続・遺贈により取得した財産を譲渡した場合の取得費加算特例に関する改正事項が盛り込まれています。

相続により取得した土地等を「相続開始のあった日の翌日」から「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」までの間に譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる租税特別措置法の特例があるのですが(詳細は国税庁の「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」をご覧ください。)、今回の税制改正大綱では、この特例について、取得費に加える金額を、「その者が相続した全ての土地等に対応する相続税相当額」から「その譲渡した土地等に対応する相続税相当額」に改める、とされています。
 つまり、A・Bの土地を相続し、Aのみを譲渡した場合、これまでであればA・Bについて納めた相続税をAの取得費に加算できましたが、改正後は、Aについて納めた相続税のみが取得費に加算されることになります。その結果、従来よりも相続人の譲渡所得及び所得税の額が増えることになります。
 相続人が複数の土地を相続する場合、その中の一部の土地を売却して納税資金を準備することが多いので、この改正が実現すれば相続人の納税資金確保の点では痛手といえるでしょう。

 

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神戸地裁で相続税法違反被告事件に無罪判決が!

 今月の17日、相続税約1億4千万円を脱税したとする相続税法違反の事件(いわゆる脱税事件です)で、神戸地裁が無罪を言い渡す判決が出されました。私の神戸の先輩弁護士が被告人の代理人をされていた事件です。なお、事件の内容については直接お聞きしておりませんので、以下は報道を見ての記事になります。

 無罪判決獲得、努力のたまものですね。弁護士なら一度は経験したいものですが、あいにく私にはまだ経験がありません。そもそも刑事事件はあまりやっていませんので(現在も引き受ける刑事事件は脱税事件くらいです)、当たり前なのですが・・・。

 本題に移ります。報道によると、裁判所は、被告人の誤解などによる過少申告で、不正に免れる意思はなかったとして、無罪を言い渡したようです。裁判所は、申告漏れの多くは夫の名義でない預金口座などにみられ、夫以外の名義の口座などを申告が必要と認識していなかった可能性は否定できないと判断したとのことです。

 本来は課税価格約10億6千万円、相続税額約2億2千万円のところ、被告人は預貯金などを課税価格から除外して、課税価格約7億3千万円、相続税額約8千万円と申告しており、相続税約1億4千万円の支払いを免れたとして起訴されていたようです。

 

 この事件のように、被相続人が生前に他人名義で預金をしている場合に、その預金を相続財産に含めずに申告すると、税務署からその預金は相続財産であるとして相続税の更正処分をされることになり、また他人名義を利用しているため仮装隠ぺい行為によるものであるとして重加算税の処分もされることも多く、さらには不正の行為によるものであるとして刑事事件として起訴されることもあります。

 こういった事件では、相続人が他人名義の口座の作出に関与していたか、預金口座の存在やその預金の原資が被相続人のお金であることを認識していたか、といったことが重要となります。

 

 今回とよく似たケースで、財産が相続人名義になっている例もかなりあります。この場合は、相続の問題なのか贈与の問題なのかかがよく問題になります。被相続人が生前に相続人に贈与したということで相続人名義の預金に振り込んでいるというのであれば、贈与税の問題はともかく、本来は相続税の場面ではないことになります(もっとも、相続・遺贈により財産を取得した人が相続開始前3年以内に受けた贈与財産については結局、相続税の課税財産になることには注意が必要です。)。贈与とされるためには、相続人がその預金口座の存在を明確に認識し、預金は自分のものと認識している、相続人が通帳やキャッシュカードを保有して管理しているといった事実関係が必要となります。

 そういった事実関係がない場合には、相続人名義の預金であっても相続財産に含めて申告しなければならないことになり、これをしてないと、相続税の更正処分のみならず、重加算税の処分、刑事事件の起訴まで受ける可能性があることになります。

 

 ところで、今回の裁判の報道を見て個人的に再認識したこと。それは、この件の被告人の相続財産の申告割合は7割近く(税額ベースの申告割合は36%程度ですが)ありますが、もしこれが逆の3割だったら争うこと自体が難しいのではないか(被相続人は相続税の軽減を狙って明らかに意図的に他人名義を利用しており、当然相続人にもその存在や意図を明らかにしていたはず、相続人も被相続人名義の財産が少なすぎるため調査して知っていたはず、などの推認がとても成り立ちやすくなるので。)、この類の事件では、相当割合以上の相続財産について適正に申告されていたという前提事実がない場合には、特別な事情(被相続人が相続税軽減以外の目的で他人名義を利用していた事実、相続人が被相続人の事情や他人名義の財産をおよそ知り得なかったことなど)がない限り、処分や刑事事件を争って勝つのは難しいのかも、という当たり前のことです。

 

 実例から再認識させられることは多いですね。

 

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相続時精算課税制度を利用すると、相続の放棄はできなくなるのか?

相続時精算課税制度を利用すると、相続の放棄はできなくなるのでしょうか?

 

いいえ、相続時精算課税制度を利用した生前贈与を受けていた場合でも、相続の放棄はできます(相続の放棄は被相続人の死亡及び自分が相続人であることを知ったときから、原則3か月以内にしなければならないという期間制限にはご注意下さい)。

相続時精算課税制度や相続放棄の関係では、注意すべき点もありますので、以下の記事をご覧下さい。

なお、相続時精算課税制度の概要は、国税庁のページなどをご覧下さい。 

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遺留分対策ってどうやればいいの?

遺留分対策としてはどのようなことが考えられるでしょうか?

代表例を挙げておきます。

 

〔※令和元年71日に施行される民法改正により、同日以降に発生する相続については、遺留分減殺請求は「遺留分侵害額請求」と改められ、侵害額に相当する金銭の支払いを請求するものとなります。それに合わせて、対策内容も変更が生じることになります。以下は、民法改正前の対策となりますので、ご注意ください。〕

 

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遺留分って?侵害するとどうなるの?

 「遺留分(いりゅうぶん)」とは、亡くなった方の相続財産について、法定相続人に最低限保証される部分(割合)のことです。

 

 遺留分があるのは、法定相続人のうち兄弟姉妹以外の方です。

 相続人全体としての遺留分は2分の1(相続人が亡くなった方の父母や祖父母のみである場合は3分の1)で、それぞれの相続人の具体的な遺留分は、遺留分全体のうちそれぞれの相続分(相続人が相続財産について有する権利義務の割合)に応じた部分となります。

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相続分なきことの証明書って何?

相続分なきことの証明書(相続分皆無証明書)ってご存じでしょうか?

家庭裁判所に対して相続放棄の手続をしなくても(相続があったことを知った日から3か月を経過したため相続放棄の手続ができない場合であっても)、また正式な遺産分割協議・協議書の作成をしていなくても、不動産について簡便に相続登記ができるようにするために利用されているものです。東京高裁昭和59年9月25日判決でも、この証明書を用いた遺産分割協議の成立を認めています。

 

登記実務上、亡くなった被相続人が所有していた不動産を相続しない相続人が、この証明書と印鑑証明書を添付すれば、不動産を相続する相続人への所有権移転登記が可能となるのです。例えば、相続人が3名の場合に、2名による遺産分割協議書と、1名の相続分なきことの証明書という組み合わせであっても、相続登記の添付資料として認められるとされています。

 そういう意味ではこの証明書は便利なものです。

  

もっとも、本来、相続分なきことの証明書を利用することができるのは、限られた場合だけです。それは、『不動産を相続しない人が、亡くなった方から生前に相続分(以上)の贈与を受けていた(特別受益)ために、民法903条1項2項によって相続分を受け取れない場合』なのですが、実際には生前に贈与を受けておらず、そのような場合には該当しないにもかかわらず、相続登記のための手法としてこの証明書を利用している例も多いようです。

この点、事実に反した内容の証明書だったとしても、直ちに相続登記が無効であるとはいえず、証明書の作成者が自分の相続分を放棄あるいは取得者に対して贈与したものとみることができる場合には、実質的な遺産分割が成立しているとみて相続登記を有効とする考えが一般的なようです。

  

ただ、後になって困る場面もないわけではありません。例えば、実は亡くなった被相続人に借金があったにもかかわらず、それを知らずに、相続財産は被相続人と相続人のうちの一人が一緒に住んでいた不動産だけで、今後はその相続人が不動産を相続して引き続き居住していきたい、証明書に署名押印してくれれば良いだけだから、と聞かされ、納得して証明書に署名押印し、不動産の登記移転に応じてしまった場合に、後に債権者から相続人として借金を返すよう求められ、それに応じざるを得ない場合などがあります(相続放棄には期間制限があるため期間後は相続放棄もできませんし、証明書の作成は相続の単純承認とみなされるので放棄ができなくなるという見解も有力です。)。

証明書の作成は、民法上の相続の放棄ではなく、便宜的なものにすぎませんので、上記のような場合、きちんと借金を含めて財産調査をした上で家庭裁判所に対して相続放棄の手続を取るか、相続放棄はしなくとも借金があることを前提とした遺産分割協議を正式に行うか、いずれかを検討すべきであった(改めて遺産分割協議ができるのは限られた場合のみとなります。)、ということになるのではないかと思われます。

  

なお、国の機関に対して、亡くなった方から相続分以上の生前贈与を受けていたと自ら証明するわけですので、贈与税との関係でも問題が生じる余地があるように思われます。

 

相続分なきことの証明書、使いどころに気をつけましょう! 

 

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最高裁違憲判決の影響

 

9月4日、非嫡出子(婚姻関係にある男女間で生まれた嫡出子でない子)の法定相続分を嫡出子の2分の1する民法900条4号但し書きについて、最高裁の違憲判決が出されたことは、皆さんもご承知のところではないしょうか。
 この最高裁判決が、遅くとも平成13年7月当時においてこの規定が憲法14条1項に違反しているとしながら、他の相続について、この規定を前提としてされた遺産分割の審判その他の裁判、遺産分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない、という判断をしたことは、かなり注目されているところで、これによって、非嫡出子が相続人となっている多くの相続で遺産分割のやり直しが必要となる、という事態は避けられることとなったものと思われますが、この判決の内容からすると、以下の通り、今後もこの規定が違憲であることを理由とする紛争は少なからず起きてくるものと思われます。

 まず、最高裁自身がいうとおり、関係者間の法律関係が裁判、合意等により確定的な段階に至っていない事案については、この規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとすることになります。そうすると、本件と同じような相当古い時期に相続が起きていたが、遺産分割が長期間揉めてまとまらないまま、あるいはきちんと遺産分割をしないで放置したまま今回の最高裁判決を迎えた事案については、非嫡出子は嫡出子と同じ相続分であることを主張できることになります。

 ですので、相続の法律関係が確定的な状態に至っているか否かを巡って争いが生じる、あるいは、遺産分割の合意等の対象として相続財産の一部が除外されている場合などには、相続の一部は処理され確定的な法律関係となっているが、残る部分については確定的なものとなっていないなどとして、非嫡出子が嫡出子と同様の相続分を主張して残部についてのみ争う、といったことも起こってくるのではないでしょうか。

 なお、本件は平成13年の相続事案なのですが、最高裁判決によれば、同じような相当古い相続事案であっても、遺産分割等により既に確定的な処理がなされていれば、本件以外の事案では規定の違憲を理由とする処理のやり直しはきかないのに、遺産分割等をせずにいた場合には規定が違憲であることを前提とした処理が許されるという点においては、不公平な事態が生じることになると思われます。最高裁はそのような不公平よりも過去の法律関係の法的安定性を優先し、不公平な事態の発生はやむを得ないとして容認しているものと考えられます。

 

 また、最高裁は、預金債権のような可分債権(分割可能な債権)に関して、

「相続の開始により法律上当然に法定相続分に応じて分割される可分債権又は可分債務については,・・・相続の開始により直ちに本件規定の定める相続分割合による分割がされたものとして法律関係が確定的なものとなったとみることは相当ではなく,その後の関係者間での裁判の終局,明示又は黙示の合意の成立等により上記規定を改めて適用する必要がない状態となったといえる場合に初めて,法律関係が確定的なものとなったとみるのが相当」としていますので、相続後の関係者間での裁判の終局、明示又は黙示の合意の成立等がない場合には、やはり非嫡出子は嫡出子と同様の相続分までの預金等の引き渡しを請求することが可能となります。

  

 以上のように、今回の最高裁判決の判断内容を踏まえると、本件以外の他の相続について違憲を前提とする紛争が今後も生じてくる余地は十分あるように思われます。

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最高裁で民法900条4号ただし書きに関する違憲判決が出されました

 正直、驚きました。昨日の民法900条4号但し書きに関する最高裁の違憲判決。判決の内容は最高裁のホームページをご覧下さい。

 違憲と判断されたのは予想通りですが、驚いたのは、遅くとも平成13年7月当時において憲法141項に違反しているとしながら、過去の確定的な法律関係には影響を及ぼさない!という判断をした部分ですね。私はこの点がどうなるかに注目しており、先日、過去の法律関係に影響を与える可能性があることを記事にしたところでしたが・・・。こちらの記事で触れていた論説が従来の判例学説に沿う比較的一般的な内容だったように思いますが、本件の最高裁判決はそう言ったものと一線を画す内容となっているといえるでしょう。

 過去の法律関係を覆すと法的安定性を著しく害するという価値判断は最高裁の判断でも明確に示されており、それは非常によく分かるのですが、法的な理屈らしいものが示されていないところに法律家としては違和感があります(補足意見には一定の理屈が記載されてますが、個人的には容易に理解しかねるところです。)。

 これはもう法の判断というよりも新たな立法というべきかもしれませんね。

 理屈はさておいてでも今後の法的安定性を優先したとも思える今回の判断は、最高裁にしかできない離れ技といえそうですが、私にとっては予想外でした。

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民法900条4号ただし書きの合憲性に関する最高裁の決定が9月4日に

 最高裁大法廷が、来る94日、結婚していない男女間に生まれた非嫡出子の相続分を、結婚している夫婦の子(嫡出子)の半分とする民法第9004号ただし書きの規定が、法の下の平等を定めた憲法第14条第1項に違反するかどうかが争われた裁判について、決定を下します。この規定を合憲とした従前の最高裁判例を見直し、違憲判断を示す可能性があります。

 

 さて、問題は、この規定を前提とした今までの判決、調停、協議その他の実務上の処理がどのような影響を受けるかという点です。この点について、以下の論説が参考になると思います。

http://www.j.u-tokyo.ac.jp/sl-lr/07/papers/v07part10(nakamura).pdf

 

この論説の内容が全て正しいということになるのかはともかく、少なくともこの論説の、1.当事者間の遺産分割調停ないし協議は事案により錯誤無効とされる余地があり、また2.相続財産中の可分債権(銀行の預金債権のような分割可能な債権)については消滅時効が完成しない限り当事者間での不当利得返還請求が認められる事態が生じる、という指摘については、十分に留意する必要があるのではないかと思われます。

 

 さて、そうなると、さらなる問題は、これまでに処理された相続税の取扱いです。違憲判決が出された場合、この点の検討も不可欠となると思われます。

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