住宅取得等資金の贈与税の非課税制度、知っていますか?(1)

住宅取得等資金の贈与税の非課税制度は、ご存じでしょうか?

平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など(直系尊属)からの贈与によって、居住用の自宅の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」とします。)の支払いのための金銭(以下「住宅取得等資金」とします。)を取得した場合に、一定の要件を満たせば、一定の非課税限度額まで贈与税が非課税となる制度です。

 

詳細は以下の国税庁のHPでご確認ください。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/pdf/jutaku27-310630.pdf

 

「No.4508直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4508.htm

 

さて、この非課税制度について特に私が注目しているポイントをあげていきます。

 

一つ目は、この非課税制度を使った後さらに、通常の暦年課税の場合には贈与税の基礎控除 (110万円)を、また相続時精算課税制度を利用している場合には特別控除(2500 万円)をすることができる点です。

 

「消費税8%」の新築等の場合、現在であれば、通常の暦年課税においては、最大1200万円(省エネ等住宅の場合)+110万円(基礎控除)=1310万円まで贈与税が非課税となり、相続時精算課税制度を利用する場合には、最大1200万円(省エネ等住宅の場合)+2500万円(特別控除)=3700万円まで贈与税が非課税となります。

 

「消費税10%」の新築等の場合、通常の暦年課税においては、最大3000万円(省エネ等住宅の場合)+110万円(基礎控除)=3110万円まで贈与税が非課税となり、相続時精算課税制度を利用する場合には、最大3000万円(省エネ等住宅の場合)+2500万円(特別控除)=5500万円まで贈与税が非課税となります。

 

なお、相続時精算課税には特例があり、平成33年12月31日までに、父母又は祖父母から、自分の居住用の自宅の住宅取得等資金について贈与を受けた場合で、一定の要件を満たせば、贈与者がその贈与年の1月1日に60歳未満である場合であっても相続時精算課税を選択することができることになっています(通常の相続時精算課税制度では、贈与年の1月1日において贈与者が60歳以上であることが必要です。)。

 「No.4503相続時精算課税選択の特例」

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4503.htm

 

次回に続きます。

被相続人が固定資産税の数倍の金額を支払っていても使用貸借であるとした裁決

今回は、平成29年1月17日裁決の紹介です。

この裁決は、土地上に建物を有していた被相続人が、その土地の所有者に地代として支払っていた金銭(以下「本件金員」とします。)の額が、その土地の固定資産税等年税額を超えていたものの、被相続人がこの土地上に借地権を有していたとは認めることはできないとして、税務署長の処分を全部取り消したという納税者完全勝訴の裁決です。

 

審判所は、以下のような判断をしました。

・被相続人が昭和56年に本件土地の使用収益を開始した当時は、使用貸借契約に基づくものであったと認められ、平成2年に請求人が本件土地を相続により取得した後、被相続人から請求人に対する本件金員の支払いが開始されたのが平成6年であるから、請求人は平成2年に被相続人の土地に関する使用貸借契約の貸主の地位を承継したものといえる

・本件金員の支払開始に当たり、請求人と被相続人との間で契約書が作成されたなどの事情は見当たらず、証拠を見ても本件金員の支払開始の経緯、動機、本件金員の算定根拠が明らかではないこと、被相続人と請求人は親子であり、本件金員の支払が開始された当時、請求人が未成年者であったことを併せ考慮すると、本件金員の支払が開始されたことをもって、賃貸借契約に変更されたとみることはできない

・本件相続開始時においては、本件金員の年額が、本件土地の固定資産税等年税額の約〇倍であったものの、このような事情のみでは、本件金員が、本件土地の使用収益の対価であると認めるに足りず、被相続人による本件土地の使用収益は使用貸借契約に基づくものであったと認めるのが相当であり、被相続人が本件土地上に借地権を有していたとは認めることはできない。

 

 

さて、元国税審判官の弁護士としては、納税者勝訴事案が増えることは良いことだと思っていますが、本件では、審判所はなかなか思い切った判断をしたように思います。

たしかに、金銭の支払いがされていても土地使用の対価とまで認められなければ、有償の賃貸借契約ではなく無償の使用貸借契約であるというのが法律論なのですが、本件では固定資産税年額の数倍が支払われていたわけですので、なかなか難しい判断だったのではないかなと思います。

過去に遡った事実認定や法律論を重視したところをみると、弁護士が国税審判官(任期付公務員)として関わった事案なのかな?などと憶測しました。

 

いずれにせよ、税務署長(国)はこの裁決を不服として裁判を起こすことができないため、本件はこれで確定となります。

節税目的の養子縁組でも有効ですが税務上は否認されるかもしれません

今回は、もっぱら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、その養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできないとした最高裁判決(平成29年1月31日第三小法廷判決)のご紹介と注意点を記載しました。

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預貯金に関する最高裁の判例変更が過去の遺産分割へ与える影響は?

報道されておりましたとおり、平成28年12月19日に、最高裁が従前の判例を変更して、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権がいずれも遺産分割の対象となるとの初めての判断を示しました。

相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるとの従前の最高裁の判断を変更したものです。

今回の最高裁判例の内容はこちらの最高裁のサイトをご覧ください。

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事業承継に伴う株価対策について(第1回)

所有財産の中に、上場していない同族会社の株式が含まれている会社のオーナーやその相続人にとって、その株式の評価額がいくらになるのかは、相続(相続税)の関係上、非常に重要な問題となることが多くあります。

中小企業、同族会社の非公開株式は、第三者への売却もままならず、換金が容易ではないうえ、実際には手放せないケースも多いにもかかわらず、会社の収益・財務状況によっては非常に多額の評価額がついてしまい、相続税が多額になったり、株式を集中的に相続せざるを得ない会社後継者が現金など株式以外の財産を十分に相続できないという事態が発生してしまうことが多々あるからです。

そこで、相続対策の一環としての非公開株式の株価対策(評価額低下のための方法)にどのようなものがあるのか、次回以降、簡単にご紹介していきたいと思います。

 

今回は、その前提として、まず相続税の世界で、株式評価がどのような方法で行われているのか、簡単にご説明しておきましょう。

非公開株式の相続税実務における評価方法は、相続税の財産評価基本通達(178以降)に詳しく定められています。これは通達ですので、この通達に従った評価額が絶対的に正しいというわけではありませんが、通達に従った評価額であれば税務署からは否認されなくなるため、実務上の基準となっているわけです。

この通達にしたがいますと、株式の評価は、類似業種比準価額方式、純資産価額方式、これらの併用方式、配当還元価額方式のいずれかによることになりますが、一般の事業会社において、株価対策が必要となるような、株主の中で支配的な地位にある株主の株式については、通常、およそ以下のような基準で評価されることになります。

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遺言書があっても、それと異なる内容の遺産分割をすることができます

遺言書がある場合、法定相続人や受遺者らが話し合い、遺言書と異なる内容で遺産分割協議をすることができるのでしょうか。また、相続税以外に贈与税までかかったりしないのでしょうか?

一般的には、自分の権利を譲渡したり放棄することは自由であるため(私的自治の原則)、法定相続人や遺贈を受けた者(受遺者)らが全員同意するのであれば、(遺言にしたがって取得する権利を放棄した上で)改めて遺言書と異なる内容の遺産分割をすることも可能です。税務上も、遺言書による相続とは別の贈与、譲渡、交換などがあったものと認定して、相続税に加えて贈与税や所得税がかけられる可能性は低いといわれています。

ただし、以下のとおり、遺言執行者がいる場合には、状況が若干異なり、税務上も注意が必要となります。

遺言書で指定された遺言執行者が就任し、または家庭裁判所に遺言執行者が選任されると、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権利義務が遺言執行者に帰属します(民法1012条)。また、『遺言執行者がある場合』(※遺言書で執行者として指定を受けた者が「就任を承諾する前」もこれに含まれますが、「就任を承諾しなかった場合」はこれに含まれません。)には、相続人は、相続財産の処分その他遺言執行を妨げる行為ができないとされていますので(民法1013条)。そのため、遺言執行者がいる場合には、相続人らは遺言書と異なる内容の遺産分割協議はできないのではないか(無効となるのではないか)、という点が問題となります。

 

ですが、以下のような場合には有効となると考えられております。

①遺言執行者が遺言書と異なる内容の遺産分割協議について同意、追認した場合

遺言執行者は、遺言書の内容をそのまま実現できない場合やそれが適当でない場合には、遺言の趣旨を害さない範囲で相続人らと協議し、修正した内容で執行することもできるため、遺言執行者が同意、追認した場合には、その遺産分割協議も有効とされています。

②遺言の内容が特定の財産の遺贈(特定遺贈)である場合

特定遺贈については受遺者がいつでも放棄できるので、受遺者の遺贈放棄によって、遺言執行者において特定遺贈の執行ができなくなり、遺贈の対象となった財産は相続人らが共有する遺産に復帰し、改めて相続人らの遺産分割協議の対象となるため、遺言書と異なる内容の遺産分割協議をしているように見えても、遺言執行者の権限を妨げることにならず、有効となります。

(また、以上のような場合でなくとも、そもそも個人間での交換や贈与は当然自由なので、遺言執行者の同意、追認なしに遺産分割協議をしても、③遺言の内容を事後的に変更したものとして、その遺産分割協議が有効になる余地がある、ともいわれているようですが、この点は明確ではありません。)

 

税金面では、以下のように考えられるのではないかと思います。

①の場合、遺言執行者がいない場合(の「遺言書と異なる内容の遺産分割」)と状況があまり異ならないので、相続税に加えて贈与税や所得税がかけられる可能性は高くはないと思われます。

②の場合には、遺贈の放棄後、相続人らの遺産分割協議によって相続人らは遺産を取得したことになるので、相続税以外に贈与税や(譲渡)所得税が課される可能性は低いと思われます。

その他の場合には、税務署が、遺言執行者がいる限り遺言と異なる内容の遺産分割協議はできないので、それは「遺産分割協議」ではなく、遺言による相続後に「別個の交換、贈与」がなされたものと理解して、相続税に加えて、贈与税や所得税がかけられる可能性が理論上あることは否めないのではないかと思われます。税務署には、どのような結果で遺産が分割されることになったとしても、相続税の総額がきちんと支払われるなら厳密な法律論はあえて気にしない、それに加えて贈与税や所得税を重ねてかけたりはしない、という実務感覚があるように思いますが、上記のような課税の可能性が理論上はあることに一応ご注意を!

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相続、事業承継セミナーの講師をします!

10/14,10/28の2日間にわたって、南納税協会主催の相続、事業承継セミナーの講師をつとめさせて頂きます!

場所は大阪社会福祉会館です。


計6時間の長時間ではありますが、私と相続税などの資産税が専門の税理士(国税OBの方です)の二人でやらせて頂くので、なんとか飽きずに聞いて頂けるかと思います。


14日分はレジュメの作成も何とか終了しました。28日分も今から作成しないと! 

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相続預金に使途不明の出金がある場合に、その使途不明金は遺産分割の対象となるのか否か?

遺産分割の対象となる財産は、亡くなった被相続人がその時点で有していた財産のみです。

ですが、相続人が亡くなった被相続人の預金の履歴を調べてみると、生前に、被相続人の生活状況からすると不自然な時期での多額な出金(一般的に「使途不明金」と言われています。)が見つかり、被相続人と同居したり、その看護をしていた一部の相続人が勝手に出金をして懐に入れてしまったのでは?という疑いが発生することが時々あります。

このような場合、他の相続人にとっては、死亡時の預金しか遺産分割の対象とならないとすると不公平であるため、その「使途不明金」も遺産に戻して遺産分割の対象とすべきだ、というような主張がされることになりますが、このような主張は通るのでしょうか?

色々なケースに分けて考えてみましょう。

  1. 前提として、その「使途不明金」について、亡くなった被相続人が自らのために出金していたことが立証された場合には、そのような主張は当然通りません。なお、出金当時、被相続人の判断能力に問題がなかったような場合には、被相続人が自らのために出金した可能性がある以上、遺産分割協議においてそのような主張は通らない可能性が高くなります。

  2. また、その「使途不明金」について、被相続人が一部の相続人から貸りていたお金を返済したものであるとか、立て替え払いをしていた一部の相続人にその支払いをしたものと立証された場合にも、そのような主張は通らないことになります。

  3. 次に、その「使途不明金」が、被相続人が自らの意思で一部の相続人に対して贈与したものと明らかになった場合には、その一部の相続人は「特別受益」を受けたことになりますので、計算上、使途不明金も相続財産に加えて相続人らの相続分を算定した上で、特別受益を受けた一部の相続人はその分について既に遺産の前渡しを受けていたものとして扱われることになります。
    したがいまして、基本的には、他の相続人の主張が通ったのと同じような形になります。
    なお、特別受益の有無について争いがある場合でも、家庭裁判所での遺産分割の調停や審判の中で最終的に解決されることになります。

  4. さらに、その「使途不明金」が、被相続人の意思によらずに、一部の相続人が無断で出金したもの(※被相続人が後に、出金されたお金を相続人のものとすることについて追認した場合には、3.のケースになります。)と明らかになった場合には、被相続人は死亡時点でその相続人に対して、「不法行為に基づく損害賠償請求権」や「不当利得返還請求権」といった金銭の請求権を持っていたことになり、これが被相続人の遺産に含まれていると考えられます。
    ただし、ここで注意をしなければならないのは、最高裁判所の判例では、こういった金銭の請求権は、死亡と同時に相続人らに法律上当然に分割され、相続分に応じて権利承継されることになっているため、原則として遺産分割協議の対象とならないところです。
    ですから、相続人全員が上記の請求権を遺産分割協議の対象とすることに合意した場合には、他の相続人の主張通り遺産分割協議の中で請求権を遺産として分配することが可能となるものの、そうでない場合には、他の相続人は各自、上記の請求権の自分の相続分について、遺産分割協議とは別に、出金をした一部の相続人に対して民事で支払いを求めていくことになり、場合によっては調停や裁判を要することになります。

 

さて、以上がおおまかな整理ですが、実際には、そもそも上記のどのケースに当たるのかの立証自体が困難なケースが多いのではないかと思います。

事実関係を明確にするための証拠が不十分であるのに、「使途不明金」にこだわり続けてしまうと、最終解決までに要する期間が必要以上に長期化してしまいます。最終的には、使途不明金について目をつぶり、死亡時の預金額で遺産分割をせざるを得ないケースもかなりあるのではないでしょうか。

 

「使途不明金」については、冷静に先の展開を予測して判断していく必要がありますので、専門家に相談されると良いでしょう。

当事務所へのご相談を希望される方はこちらからどうぞ!

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限定承認、本当にしますか? まずは法律と税金の専門家にご相談を。

親は財産をある程度残してくれているけど、財産を上回る借金があるかもしれないとか、多額の保証債務があるが将来支払いを請求されるかどうかは分からないというような場合なら、限定承認をすれば良い、そんなアドバイスを聞いたことはありませんか?

もちろん、まちがったアドバイスというわけではありますが、実際に限定承認するかどうかは一度よく考えてからの方が良いかもしれません。限定承認には注意すべき点がいくつもあり、一般の方がイメージする手続きと異なっていたり、専門家の手助けなしに実行するのが簡単ではない場合があるからです。

 

以下は、代表的な注意点です。

  • そもそも共同相続人全員の共同でないと限定承認の申請はできません。
  • 限定承認は、熟慮期間内(相続の開始があったことを知った時から3か月以内、期間の伸長は可能)に財産目録を提出して申出をしなければなりません。
  • 債権者等には相続財産から(債権額の割合に応じて)弁済をしなければならず、本来ならば弁済期がまだ先の債権についても弁済をしなければならなくなります。なお、条件付きや存続期間の不確定な債権については裁判所の専任した鑑定人の評価額によります。
  • 弁済のために相続財産を売却する必要がある場合には原則として競売手続きをしなければなりません(裁判所の選任した鑑定人の評価額を支払えば競売を避けることはできます)!
  • 債権者への誤った弁済などによって相続財産が不足することになり、他の債権者等に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負います!
  • 限定承認の場合には、相続税(※相続財産が基礎控除額以上の場合にかかります。)以外にも、所得税法上、被相続人が相続人に対して遺産を譲渡したものとみなされることになっており、(譲渡)所得税がかかります!
     なお、この所得税の納付義務は、相続税の計算上、債務として相続財産の額から控除ができますので、一定額の相続税が減少することになります。
  • 上記の所得税は、亡くなった被相続人の税金であり、相続人は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をして納付をしなければならないことになっています。通常、死後はとてもバタバタしているものですが、速やかに税理士と相談を開始する必要があることになります!

 

以上のように、限定承認はおいそれと利用をすすめられる制度ではありませんので、皆さん、限定承認を利用するかどうかは、法律・税金の専門家に相談の上で、よく検討しから判断してください。

 

さて、自分では最後まできちんと限定承認の手続きをする自信はないけれど、やはり限定承認をしたいので、専門家に協力してほしいという方は、こちらからご連絡をどうぞ。


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最高裁判決、投資信託の預かり金は一部の相続人による法定相続分の支払請求ができない

最高裁は平成26年12月12日、一部の相続人が、故人の投資信託に関して発生し、故人の証券口座に入金された預かり金(元は収益分配金や元本償還金)について、相続人自身の法定相続分3分の1の払戻しを証券会社に求めた訴訟において、「上記預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の1人は、上記販売会社に対し、自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができない」と判断しました。

最高裁の判断の流れは、以下のようなものです。

共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく(最高裁第三小法廷平成26年2月25日判決)、元本償還金や収益分配金の交付を受ける権利はこの受益権の内容を構成するものなので、共同相続された受益権につき、相続開始後に発生した元本償還金又は収益分配金が預り金として販売会社の被相続人名義の口座に入金された場合にも、預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の1人は、販売会社に対し、自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができない、というものです。

 

この判決が出るまで、投資信託については、法定相続分の解約・払戻しができるか否かなどの点について、証券会社の取扱いや裁判所の判断も別れていたところですが、この判決により、実務上、相続人間で遺産分割について話がつかない場合に、故人の投資信託について、一部の相続人が自己の法定相続分だけの解約金や預かり金の支払を求めても証券会社はこれに応じない、という扱いが一般化するのではないかと思われます。

つまり、投資信託については、預かり金も含めて、相続手続きに全員の合意、遺産分割協議の成立が必要ということになりますね。

なお、今回の判決の事例は委託者指図型投資信託に関するものでしたので、それ以外のタイプの投資信託でも同じ結論となるのかは分かりませんが、今回の判決文の内容からすると、投資信託の種類・内容にはあまり左右されないのではないかとも考えられるところです。

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相続放棄について注意すべきこと

相続放棄について注意すべきことは色々ありますが、以下の点については特にお気をつけ下さい!

  1. 相続放棄をするには必ず家庭裁判所への申立てが必要です。
    関係者に相続放棄の意思を伝えるだけでは相続放棄にならず、負債を相続してしまいますので、ご注意を。
    最悪、遺産分割で資産を全くもらわなかった人が、負債だけを相続してしまうという事態になりかねません。
    なお、相続分皆無証明書の利用にはご注意を(詳しくは以前の「相続分なきことの証明書って何?」の記事をご覧ください)。

  2. 相続放棄の手続前に、相続財産の一部を処分してしまうと、民法上、相続を承認したものとみなされて(法定単純承認)、相続の放棄ができなくなります。相続財産の処分に当たるか否かはときどき問題となります。
     悩ましいのは、故人の預金口座から葬祭費用等を支出するようなケースでしょうか(結論的にはセーフ=相続放棄OKになることが多いと思いますが。)。可能ならば避けた方がよいということにはなりますね。

  3. 相続をするのか、放棄するのかは、原則として、「相続の開始(=死亡)を知った時」から3か月以内の「熟慮期間」にしなければならず、相続放棄をせずに熟慮期間をすぎてしまうと相続を承認したものとして、以後、相続放棄ができなくなってしまいます。そのため、死後3か月以上経ってからする相続放棄の申立てをする場合には、「相続の開始(死亡)を知った時」がいつかが問題となります。

  4. 亡くなった人とは遠く離れて暮らしていたため財産や負債の状況がよく分からず、調査のために時間がかかるような場合、熟慮期間については、家庭裁判所に延長を申し立てることも可能ですので(必ず認められるわけではありませんが。)、熟慮期間が経過する前にこの申立てをすることを検討した方がよい場合があります。

  5. 相続の放棄をした人は最初から相続人ではなかったことになります。
     他の同順位の相続人あるいは次順位の相続人(その相続放棄によって新たに法定相続人となる場合があります。)がいる場合は、その人たちが資産も負債も相続してしまうことになるので、誰も負債を相続しないようにするためには、全ての法定相続人(包括遺贈を受けた人を含みます。)が同時に又は順次、それぞれの熟慮期間内に相続の放棄の手続きを取っていくことが必要となります。
     ですので、その前提として、全ての法定相続人の調査・確定が必要となります。

  6. なお、相続時精算課税制度を利用しても、相続の放棄はできます。

  7. また、未成年者が相続放棄の申立てをする場合などには、特別代理人の選任が必要となるときがあります。

相続放棄でお悩みの方は、当事務所にご相談下さい!

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遺産の調査をしたい!そんなときは

相続人の一人が遺産を全て握っており、他の相続人が遺産の内容を知りたくても教えてくれない、そんなケースが多くあります。典型例は、亡くなった親の実家の近くに住んで親の身の回りの世話をしていた子どもが、家を出て遠方に住んでいる他の兄弟には全く遺産の内容を明かさない、といった場合です。


こんなときに、他の相続人は遺産の開示を求めたいと考えられるわけですが、なかなか応じてもらえないことが多いものです。実は、相続人が他の相続人に対して遺産の内容等を開示する義務を負っている(法律上の開示・報告請求権がある)といえるだけの法律上の根拠も直接的には見当たらないのです。

では、他の相続人はどうすべきでしょうか?

すばり、自分たちで遺産やそのヒントを探していかなければならない!のです。

 

  • 公正証書遺言が存在しているかどうかは、全国どこの公証役場でも探せるはずです。まずはこれを探してみましょう。遺言書には遺産の詳細についても載っていることもあります。
  • 不動産については、固定資産税の納税通知書(固定資産評価証明書)、市町村の名寄帳、法務局の地図・登記簿などから特定していきましょう。
  • 預貯金については、特に死亡時や過去の住居の近くや交通の便のよい場所にある金融機関に問い合せ、戸籍など所定の必要書類を提出して、相続人として口座の残高や履歴、貸金庫の有無などについて開示を求めましょう。
  • 証券会社については、心当たりのある会社に相続人として問合せ(照会)してみましょう。
  • 保険は、預貯金の取引履歴から保険会社を特定して照会するか、保険協会に対する弁護士会照会などの方法で調べましょう。
  • 負債については、信用情報機関(銀行系、消費者金融系、信販会社系)に登録されている信用情報の開示を求めましょう。

    ※車については、ナンバーや車種が分かっていれば、弁護士会照会で車の登録事項証明書は取りつけられます。
    ※退職金については、勤務先への問合せ(照会)をしてみましょう。

以上の作業はある程度、相続人ご本人でもできます。

ですが、手続きのために各所への問合せ、資料の準備・手続などで時間を取られるのを避けたい、調査をより確実に行いたいということであれば、弁護士などの専門家に依頼することも考えられます。

そもそも、遺産の開示を行わない相続人がいるようなケースでは、遺産分割協議でもめる可能性も高いわけですから、遺産調査から引き続いて遺産分割協議、調停、審判までの手続きを一貫して弁護士に委任されることが適切な場合が多いといえるのではないでしょうか。

弁護士の場合、弁護士会照会という調査手法もありますし、遺産分割調停・審判の代理人になることもできます。


当事務所でもお引き受けしておりますので、費用等については「遺産の調査」のページをご覧ください!

 

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生まれる前の胎児も相続できる場合があります

ご存じですか、生まれる前の胎児も相続人となれる場合があります。

民法第886条1項は、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と規定しています。そのため、胎児の親が胎児出生前に死亡した場合であっても、その相続との関連では、胎児は既に生まれた子どもとして取り扱われ、相続人となることができるのです(もっとも、不幸にも生まれてこなかった場合には,当初から相続人ではなかったことになります。)。 これを知らずに(忘れて)、胎児を相続人に含めずに、出生前に遺産分割協議をしてしまった場合、その協議はどうなるのでしょうか。

一部の相続人のみでなされた遺産分割協議は基本的に無効となりますので、胎児を除いてなされた遺産分割協議は、後に胎児が出生した場合には、無効になると一般的には理解されています。そうすると、出生前に遺産分割協議をしても無駄になってしまう可能性があるので、出生前に遺産分割協議をするのは控えた方が無難、ということになります。

とはいえ、相続税の申告期限は、死亡を知った日の翌日から10か月以内ですので、申告の必要がある場合、出生後は速やかに遺産分割協議から申告・納付までを終えなくてはならないことになります(遺産分割協議がまとまらない場合,間に合わない場合には、とりあえず法定相続分で申告・納付をすることになります。)。

考えてみると、過去になされた遺産分割協議でも、専門家が深く関わっていないものなどは、胎児に相続人の資格があることを前提にせずになされてしまっているものが結構存在するのかもしれませんね。


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遺言で同族会社へ自己株式を遺贈する場合の税金関係にはご注意を。

遺言をするとき、保有している同族会社の株式については社外の人間に拡散させたくないという気持ちなどから、その同族会社に遺贈しようとする場合があります。

しかし、株式を法人に対して遺贈する場合には意外な税金負担が発生することがあるため、注意が必要です。

というのは、亡くなった個人については、時価相当額で株式を法人に譲渡し、時価相当額の譲渡収入を得たものとみなされて所得税がかかることになりますし(実際には相続人が納税義務を承継することになります。)、また場合によっては、会社が自己株式を取得したことに伴い、同族会社の他の個人株主の自らの株式の価値が増えたことについて、他の個人株主が亡くなった個人から贈与を受けたものとみなされ、贈与税がかかることもあり得るのです。

なお、会社にとっての自己株式の取得については、現在の会社法や法人税法のもとでは資本取引であるとして益金、法人税は発生しないものと基本的に考えられているわけですが、会社に株式の時価相当額の益金が発生したとして法人税がかかるとの見解も見受けられるところではあり、この点は若干不明確なところがあります。

 

法人への遺贈は、同族株主や相続人への税金上の影響がありますし、株式の時価評価額によってはそれらの税金が多額となることもありますので、法人への遺贈は税負担のこともよく考え、税理士さんと相談してから!ということになります。皆さん、ご注意を。

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特定の相続人に「相続させる」旨の遺言と代襲相続

一定の相続財産を相続人の「○○に相続させる」とする遺言については、最高裁が、特段の事情のない限り、遺産分割の方法が指定されたものと解すべきで、対象となる遺産は、死亡時に何らの行為を要せずに、直ちに相続により一般承継される旨の判断をしており、「遺贈する」とする遺言と比べて、取得者が単独で所有権移転登記ができる、登録免許税が安い、登記前でも取得者は第三者に権利主張ができる、借地権・借家権の承継についても地主・大家の承諾がいらない、などのメリットがあるため、実務上多用されていますが、この「相続させる」遺言をするに当たっては、以下の点に気をつけて頂きたいと思います。

それは、この「相続させる」遺言によって承継することとされた相続人(予定者)が、遺言者よりも先に(同時も含みます。)亡くなっていた場合には、特段の事情がない限り、その相続人(予定者)の子供らに「代襲」相続はされないと最高裁が判断しているという点です。

そのため、このような場合に、相続人(予定者)の子供らに代襲相続をさせたいならば、基本的にはその旨をきちんと遺言書に記載しておく必要があるわけです。

相続人(予定者)が亡くなった時点で、その子供らに(代襲)相続させる旨の遺言書に書き換えれば良いとも考えられますが、書き換える時間や判断能力がない場合に備えて、また書き換えの手間・費用も考慮して、予め遺言書に代襲相続についても記載しておくことをお勧めします。

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意外な課税(1):贈与した側が贈与税を納付しなければならない場合がある!

さて皆さん、贈与税は基本的に贈与を受けた側が支払うもの、ですよね。

ところが、贈与を受けた側が贈与税の納付をしなかった場合には、なんと贈与をした人もその納税義務を負担することになってしまうのです。これを連帯納付義務といいます。

 

相続税法第34条《連帯納付の義務等》第4項は、「財産を贈与した者は、当該贈与により財産を取得した者の当該財産を取得した年分の贈与税額・・・に相当する贈与税について、当該財産の価額に相当する金額を限度として、連帯納付の責めに任ずる。」 と規定しているのです。

税の徴収のためとはいえ、贈与税の連帯納付義務という制度は一般人にはなかなか理解しがたい制度ですよね。しかも、弁護士としては、連帯納付義務については正面切っては争いようがないケースがほとんど、というのが正直なところです。

 

しかも、連帯納付義務の負担には贈与税の延滞税などの附帯税まで含まれてくるので、贈与後長年が経過して、贈与税の額が膨らんだ後に突然税務署から通知があって、贈与者がその全額について連帯納付義務の履行を求められることになりかねません。

ですから、贈与をするときには、贈与を受けた人が確実に納税をしたかをきちんと確認しておいた方が良く、場合によっては贈与時点で代わって納付した方が良い場合すらあります。不動産などの資産を贈与する場合に、納税資金の現金も合わせて贈与する方法をとられる方もおられます。

 

皆さんも、贈与税が発生する贈与をするときは、連帯納付義務についても考慮に入れておいて下さい!

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平成27年から相続税の発生件数が1.5倍に!相続税対策はすんでますか?

  前回の記事に続いて相続税の話題です。

 

  国税庁の「平成24年分の相続税の申告の状況について」というHPによると、この年の死亡者数約 126 万人のうち相続税の課税対象となった人の数は約5万2千人であり(その割合は 4.2%)、死亡者1人当たりの相続財産の価格は2億557万円であるとされています。

 さて、平成27年1月1日以降に開始した相続については、相続税の基礎控除額が従来の6割に大幅減少となります。

たとえば、妻と子供2人が相続人に当たるという場合、従来なら基礎控除額が8000万円だったのに、平成27年からは4800万円しかなくなりますので、相続財産が4800万円~8000万円ほどあるという方は新たに相続税が発生する可能性が発生したことになります。つまり、保有資産が、不動産が2500~3000万円、預貯金や株式などの金融資産が合計3000万円というような「多少生活に余裕のあるご家庭」の方であれば、相続税の負担が発生する可能性があることになってしまったわけです。 

  基礎控除額の大幅減少に伴い、上記の相続税の課税対象となる人の割合が4%から6%ほどに増えるといわれております。以前から比べると50%も増えるわけですが、他方で、全体の2%しか増えないのか、それなら自分は関係ないのではないかとお思いの方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、これまで一人あたりの相続財産の価格が2億円を超えていたということから分かる通り、今まで相続税がかかっていた層の人はいわゆる富裕層の人が多く、税理士さんと相談して相続税対策もそれなりにしてきた人が多く占めていました。

 これに対して、新たに相続税がかることになる方々には、自分たちは富裕層ではないと認識しておられる方や(プライベートでは)税理士さんとの付き合いがないという方が多いため、相続税対策の必要性の有無についてきちんと認識しておられない、あるいはある程度は認識していても実行を後回しにしている方がたくさんいらっしゃるように感じます。

 相続税対策をしておけばさきほどの2%に入らなくてもすむかもしれませんし、入るとしても不要な相続税を払わずにすむかもしれません。後になって後悔することにならないように、また安心して今後の生活を送れるように、相続税対策は急いでしておくべきでしょう。相続税は多分かからないと思うという方でも、税務相談をして確認しておくべきだと思いますし、相続税対策が必要な場合に一定の費用がかかったとしても、それに見合う以上の経済効果が得られるのが通常です。

 

 まずは専門家に相談をしましょう!

 

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相続税の調査はいずれやってくる!

国税庁のHPには「平成24事務年度における相続税の調査の状況」がのっています。

これをみると、「実地調査の件数は12,210件、このうち申告漏れ等の非違があった件数は9,959件で、非違割合は81.6%(平成23事務年度80.9%)となっています。」との記載が。

相続税がかかる件数が年間約50,000件ですから、かなり高い確率(約4分の1)で税務調査が行われ、しかも調査が行われてしまうと8割以上の確率で相続税の追徴が発生することになっていることが分かります!

しかも、このHPには「追徴税額(加算税を含む。)は610億円(平成23事務年度757億円)で、実地調査1件当たりでは500万円(平成23事務年度549万円)となっています。」とも記載されています。

先ほど8割以上の確率で追徴が発生すると書きましたが、その金額は税額にして500万円以上という恐ろしい結果が!

 

今回は特に平成24事務年度をあげて説明していますが、例年その状況はさほど変わらないといって良いと思います。

このような調査の状況からすると、いずれは相続税の税務調査を受けるんだという意識で臨むことが必要です。ですから、許容範囲を超えた極端・危険な相続対策はしないこと、相続財産を漏らさずに適切に申告をしておくこと、そのために予め資料をきちんと整理・保存しておくことが大切だと考えられます。

 

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子どもら名義の預金の取扱いにはご用心

 昔から、親が相続対策の一環?で生前に子どもなどの名義で預金をしておくことがあります(なお、現在は金融機関での本人確認が厳しくなっているので、親が勝手に新たにこのような預金口座を作るのは以前より難しいと思います。)。

しかし、このような方法を取っていても、その預金が親の相続財産から外れるとは限りません。名義は子どもら名義でも実際には未だ親の財産であると税務署から認定され、相続税の対象財産(相続財産)とされることが度々あるからです。

さて、こういったことにならないようにするためには、きちんと子どもらへの贈与という形を取り、子どもらに預金の存在をきちんと知らせて自分のものとの認識を持っておいてもらうことや(税務署の調査があった場合には、親から贈与を受けていると回答してもらう必要があります。)、預金通帳や印鑑などを子どもらに渡しておくことなど、実態としても親の相続財産から外しておくための措置が必要だと考えられます。

 

子どもらの贈与税の観点からは、課税を完全に避けたいのであれば、毎年子供らそれぞれに対して贈与税の基礎控除額110万円の範囲内で贈与(口座への振込)をすることが必要となりますが、あえて多少の贈与税の申告・納付をして公的な証拠を残すという方法も考えられます(将来の相続税の減税という観点からも望ましい場合があります。)。

なお、毎年一定額(たとえば110万円など)の贈与をする場合に注意すべき点としては、最初の年に将来分も含めて贈与があったもので単にその支払いを分割で毎年しているにすぎないというような認定を受けることがないようにしなければなりません。仮にこのような認定を受けると、最初の年に全額の贈与があったものとされるため、税率が高くなってしまいますし、毎年の基礎控除を生かすことができず、子どもらの支払う贈与税が多額になるおそれがあるからです。ですから、毎年毎年、改めて贈与契約を行い、契約書を作成・保存するのが望ましいといわれているわけです。

 

もっとも、相続開始前3年以内の贈与財産については、法律によって相続財産とみなされて相続税が課されることになっていますので、この場合は、相続税の申告漏れに注意して下さい。なお、相続財産とみなされたものについて以前に支払った贈与税があれば、その分は相続税の額から差し引くことができます。

 

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包括遺贈の遺言をする場合の注意点

遺言をこれからしようとする際に、法定相続人が兄弟姉妹だけだと、遺留分(相続人が最低限相続を保障される分)を持つ相続人がいないことになるので、法定相続人以外の人たちに全財産を渡したいというような場合、その人たちに全財産を遺贈する内容の遺言をしておくことによって、死亡後、基本的にはその意思通りの遺贈がされます。遺言が非常に高い効果を発揮するケースだといってよいでしょう。

そういった場合、被相続人は遺贈を受ける人たちに対して、自分の全財産の全て又は2分の1ずつなどの一定割合で包括的に遺贈(包括遺贈)する内容の遺言をすることになるわけですが、包括遺贈については民法994条・995条に注意しなければなりません。

 

というのは、これらの規定によると、被相続人が死亡した時点で、包括遺贈の対象者(包括受遺者)が先に死亡していた場合、その遺贈は効力が生じず、結局、包括遺贈をするはずだった分は法定相続人に相続されることになっているのです。受遺者には代襲相続(法定相続人の代わりにその子孫が財産を取得すること)のような制度もありませんので、包括受遺者の子供たちにも引き継がれることはありません。

兄弟姉妹はいるが疎遠なので、是非とも非常に世話になった知人2名にすべての財産を(2分の1ずつ)遺贈したいというような場合に、遺言者よりも先に一方の受遺者が死亡した場合、その2分の1は他方の受遺者ではなく、法定相続人の兄弟姉妹に引き継がれることになると、遺言者の意思が完全には果たせなくなってしまいます。

 

しかし、そういったときのことも考えて、民法995条には「ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」との但し書きがきちんとありますのでご安心下さい。遺言書に自分が死亡した時点で受遺者の一方が死亡していた場合には、その分は他方の受遺者に帰属するという趣旨の条項をきちんと記載しておけば、想定外に法定相続人に財産が引き継がれることを防ぐことができるのです。また、こうしておくと、自分の生存中に受遺者の一方が亡くなったときにでも、遺言書を書き換えなくても良くなります。

ですので、包括遺贈をする場合には、こういった予備的な条項を遺言書に入れるかどうかについて、きちんと考えておかないといけませんね!

 

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平成26年税制改正大綱に、相続資産の譲渡に関する取得費加算特例の改正が。納税資金確保に影響!

昨年末に定まった平成26年税制改正大綱には、平成27年1月1日以後に開始する相続・遺贈により取得した財産を譲渡した場合の取得費加算特例に関する改正事項が盛り込まれています。

相続により取得した土地等を「相続開始のあった日の翌日」から「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」までの間に譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる租税特別措置法の特例があるのですが(詳細は国税庁の「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」をご覧ください。)、今回の税制改正大綱では、この特例について、取得費に加える金額を、「その者が相続した全ての土地等に対応する相続税相当額」から「その譲渡した土地等に対応する相続税相当額」に改める、とされています。
 つまり、A・Bの土地を相続し、Aのみを譲渡した場合、これまでであればA・Bについて納めた相続税をAの取得費に加算できましたが、改正後は、Aについて納めた相続税のみが取得費に加算されることになります。その結果、従来よりも相続人の譲渡所得及び所得税の額が増えることになります。
 相続人が複数の土地を相続する場合、その中の一部の土地を売却して納税資金を準備することが多いので、この改正が実現すれば相続人の納税資金確保の点では痛手といえるでしょう。

 

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神戸地裁で相続税法違反被告事件に無罪判決が!

 今月の17日、相続税約1億4千万円を脱税したとする相続税法違反の事件(いわゆる脱税事件です)で、神戸地裁が無罪を言い渡す判決が出されました。私の神戸の先輩弁護士が被告人の代理人をされていた事件です。なお、事件の内容については直接お聞きしておりませんので、以下は報道を見ての記事になります。

 無罪判決獲得、努力のたまものですね。弁護士なら一度は経験したいものですが、あいにく私にはまだ経験がありません。そもそも刑事事件はあまりやっていませんので(現在も引き受ける刑事事件は脱税事件くらいです)、当たり前なのですが・・・。

 本題に移ります。報道によると、裁判所は、被告人の誤解などによる過少申告で、不正に免れる意思はなかったとして、無罪を言い渡したようです。裁判所は、申告漏れの多くは夫の名義でない預金口座などにみられ、夫以外の名義の口座などを申告が必要と認識していなかった可能性は否定できないと判断したとのことです。

 本来は課税価格約10億6千万円、相続税額約2億2千万円のところ、被告人は預貯金などを課税価格から除外して、課税価格約7億3千万円、相続税額約8千万円と申告しており、相続税約1億4千万円の支払いを免れたとして起訴されていたようです。

 

 この事件のように、被相続人が生前に他人名義で預金をしている場合に、その預金を相続財産に含めずに申告すると、税務署からその預金は相続財産であるとして相続税の更正処分をされることになり、また他人名義を利用しているため仮装隠ぺい行為によるものであるとして重加算税の処分もされることも多く、さらには不正の行為によるものであるとして刑事事件として起訴されることもあります。

 こういった事件では、相続人が他人名義の口座の作出に関与していたか、預金口座の存在やその預金の原資が被相続人のお金であることを認識していたか、といったことが重要となります。

 

 今回とよく似たケースで、財産が相続人名義になっている例もかなりあります。この場合は、相続の問題なのか贈与の問題なのかかがよく問題になります。被相続人が生前に相続人に贈与したということで相続人名義の預金に振り込んでいるというのであれば、贈与税の問題はともかく、本来は相続税の場面ではないことになります(もっとも、相続・遺贈により財産を取得した人が相続開始前3年以内に受けた贈与財産については結局、相続税の課税財産になることには注意が必要です。)。贈与とされるためには、相続人がその預金口座の存在を明確に認識し、預金は自分のものと認識している、相続人が通帳やキャッシュカードを保有して管理しているといった事実関係が必要となります。

 そういった事実関係がない場合には、相続人名義の預金であっても相続財産に含めて申告しなければならないことになり、これをしてないと、相続税の更正処分のみならず、重加算税の処分、刑事事件の起訴まで受ける可能性があることになります。

 

 ところで、今回の裁判の報道を見て個人的に再認識したこと。それは、この件の被告人の相続財産の申告割合は7割近く(税額ベースの申告割合は36%程度ですが)ありますが、もしこれが逆の3割だったら争うこと自体が難しいのではないか(被相続人は相続税の軽減を狙って明らかに意図的に他人名義を利用しており、当然相続人にもその存在や意図を明らかにしていたはず、相続人も被相続人名義の財産が少なすぎるため調査して知っていたはず、などの推認がとても成り立ちやすくなるので。)、この類の事件では、相当割合以上の相続財産について適正に申告されていたという前提事実がない場合には、特別な事情(被相続人が相続税軽減以外の目的で他人名義を利用していた事実、相続人が被相続人の事情や他人名義の財産をおよそ知り得なかったことなど)がない限り、処分や刑事事件を争って勝つのは難しいのかも、という当たり前のことです。

 

 実例から再認識させられることは多いですね。

 

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相続時精算課税制度を利用すると、相続の放棄はできなくなるのか?

いいえ、相続時精算課税制度を利用した生前贈与を受けていた場合でも、相続の放棄はできます(相続の放棄は被相続人の死亡及び自分が相続人であることを知ったときから、原則3か月以内にしなければならないという期間制限にはご注意下さい)。相続時精算課税制度や相続放棄の関係では、注意すべき点もありますので、以下の記事をご覧下さい。

なお、相続時精算課税制度の概要は、国税庁のページなどをご覧下さい。 

1.相続時精算課税制度を利用した贈与は、ざっくり言えば、相続の一部前倒しであることや、推定相続人(相続が開始した場合に通常相続人となるはずの人のことです。)が被相続人の財産を処分した場合などに、相続を承認したものとみなされ(法定単純承認)、相続の放棄ができなくなることなどから、相続時精算課税制度を利用した生前贈与を受けていた場合に、相続の放棄ができなくなるのではないかとの疑問を持つ方がいらっしゃいます。

しかし、相続時精算課税制度という税制度を利用したからといって民法上の相続の放棄ができなくなるわけではなく、推定相続人が被相続人の生前に贈与(相続時精算課税制度を利用した贈与であっても)を受けていただけでは法定単純承認にもなりませんし、他に特別な法令の規定もありません。

したがって、相続の放棄は可能ということになります。

 

2.相続時精算課税制度を利用した場合には、税法上、贈与財産は相続によって取得したものとみなされ(あるいは贈与財産の価額が相続税の課税価格に加算されることになり)ます。ですので、相続時精算課税制度を利用した贈与をした人の死亡時に、贈与を受けていた推定相続人が相続放棄をした場合、民法上は、その推定相続人は当初から相続人ではなかったことになり、相続によって取得する財産はないのですが、税法上は、その贈与財産は相続によって取得したものとして相続税の計算がされることになります。

 

3.ところで、相続時精算課税制度を利用しておきながら、相続の放棄をすることが債権者を不当に害するので取り消される(詐害行為取消権の行使を受ける)のではないかという疑問を持つ方がおられるかもしれません。

相続の放棄は詐害行為取消権の行使の対象とならないとされております(最高裁昭和49年9月20日判決)ので取り消される心配はないのですが、推定相続人が相続放棄によって被相続人の債務を相続しないことを予定しつつ、唯一ないし重要な財産の生前贈与を受けていたような場合には、そもそも生前贈与自体が詐害行為であるとして取り消される可能性があることには注意が必要です。

 

4.また、相続時精算課税制度を利用した贈与であっても、民法上は、通常の贈与ですから、他の相続人の遺留分を侵害する贈与なのであれば、遺留分減殺請求権の行使を受ける可能性があることには注意しなければなりません。

通常、被相続人から相続人に対する生前贈与は古いものであっても原則として遺留分減殺請求の対象となるとされているのですが(最高裁平成10年3月24日判決)、相続発生後に、推定相続人が相続放棄をすれば、推定相続人は相続人ではなくなるので、民法1030条の規定通り、両当事者が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた贈与でないのであれば、死亡前1年以内になされた贈与でない限り、遺留分減殺請求権の行使の対象とならない、ということになり、遺留分減殺請求を受ける場面は若干少なくなります。

 

5.なお、相続を放棄すると(他に遺言で包括遺贈を受けていない限り)、被相続人の債務を相続税の課税価格から差し引く「債務控除」ができなくなり、相続時精算課税制度の適用を受けた者が相続放棄をした場合でも、包括受遺者に該当しない限り、債務控除ができなくなることに注意が必要です。

 

皆さん、相続時精算課税制度を利用した生前贈与をする際には、贈与をする側も受ける側も一緒に専門家にご相談下さい。

当事務所の「相続の放棄」のページもご覧ください!

 

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遺留分対策ってどうやればいいの?

遺留分対策としてはどのようなことが考えられるでしょうか?

代表例を挙げておきます。

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遺留分って?侵害するとどうなるの?

 「遺留分(いりゅうぶん)」とは、亡くなった方の相続財産について、法定相続人に最低限保証される部分(割合)のことです。

 

 遺留分があるのは、法定相続人のうち兄弟姉妹以外の方です。

 相続人全体としての遺留分は2分の1(相続人が亡くなった方の父母や祖父母のみである場合は3分の1)で、それぞれの相続人の具体的な遺留分は、遺留分全体のうちそれぞれの相続分(相続人が相続財産について有する権利義務の割合)に応じた部分となります。

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相続分なきことの証明書って何?

相続分なきことの証明書(相続分皆無証明書)ってご存じでしょうか?

家庭裁判所に対して相続放棄の手続をしなくても(相続があったことを知った日から3か月を経過したため相続放棄の手続ができない場合であっても)、また正式な遺産分割協議・協議書の作成をしていなくても、不動産について簡便に相続登記ができるようにするために利用されているものです。東京高裁昭和59年9月25日判決でも、この証明書を用いた遺産分割協議の成立を認めています。

 

登記実務上、亡くなった被相続人が所有していた不動産を相続しない相続人が、この証明書と印鑑証明書を添付すれば、不動産を相続する相続人への所有権移転登記が可能となるのです。例えば、相続人が3名の場合に、2名による遺産分割協議書と、1名の相続分なきことの証明書という組み合わせであっても、相続登記の添付資料として認められるとされています。

 そういう意味ではこの証明書は便利なものです。

  

もっとも、本来、相続分なきことの証明書を利用することができるのは、限られた場合だけです。それは、『不動産を相続しない人が、亡くなった方から生前に相続分(以上)の贈与を受けていた(特別受益)ために、民法903条1項2項によって相続分を受け取れない場合』なのですが、実際には生前に贈与を受けておらず、そのような場合には該当しないにもかかわらず、相続登記のための手法としてこの証明書を利用している例も多いようです。

この点、事実に反した内容の証明書だったとしても、直ちに相続登記が無効であるとはいえず、証明書の作成者が自分の相続分を放棄あるいは取得者に対して贈与したものとみることができる場合には、実質的な遺産分割が成立しているとみて相続登記を有効とする考えが一般的なようです。

  

ただ、後になって困る場面もないわけではありません。例えば、実は亡くなった被相続人に借金があったにもかかわらず、それを知らずに、相続財産は被相続人と相続人のうちの一人が一緒に住んでいた不動産だけで、今後はその相続人が不動産を相続して引き続き居住していきたい、証明書に署名押印してくれれば良いだけだから、と聞かされ、納得して証明書に署名押印し、不動産の登記移転に応じてしまった場合に、後に債権者から相続人として借金を返すよう求められ、それに応じざるを得ない場合などがあります(相続放棄には期間制限があるため期間後は相続放棄もできませんし、証明書の作成は相続の単純承認とみなされるので放棄ができなくなるという見解も有力です。)。

証明書の作成は、民法上の相続の放棄ではなく、便宜的なものにすぎませんので、上記のような場合、きちんと借金を含めて財産調査をした上で家庭裁判所に対して相続放棄の手続を取るか、相続放棄はしなくとも借金があることを前提とした遺産分割協議を正式に行うか、いずれかを検討すべきであった(改めて遺産分割協議ができるのは限られた場合のみとなります。)、ということになるのではないかと思われます。

  

なお、国の機関に対して、亡くなった方から相続分以上の生前贈与を受けていたと自ら証明するわけですので、贈与税との関係でも問題が生じる余地があるように思われます。

 

相続分なきことの証明書、使いどころに気をつけましょう! 

 

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最高裁違憲判決の影響

 

9月4日、非嫡出子(婚姻関係にある男女間で生まれた嫡出子でない子)の法定相続分を嫡出子の2分の1する民法900条4号但し書きについて、最高裁の違憲判決が出されたことは、皆さんもご承知のところではないしょうか。
 この最高裁判決が、遅くとも平成13年7月当時においてこの規定が憲法14条1項に違反しているとしながら、他の相続について、この規定を前提としてされた遺産分割の審判その他の裁判、遺産分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない、という判断をしたことは、かなり注目されているところで、これによって、非嫡出子が相続人となっている多くの相続で遺産分割のやり直しが必要となる、という事態は避けられることとなったものと思われますが、この判決の内容からすると、以下の通り、今後もこの規定が違憲であることを理由とする紛争は少なからず起きてくるものと思われます。

 まず、最高裁自身がいうとおり、関係者間の法律関係が裁判、合意等により確定的な段階に至っていない事案については、この規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとすることになります。そうすると、本件と同じような相当古い時期に相続が起きていたが、遺産分割が長期間揉めてまとまらないまま、あるいはきちんと遺産分割をしないで放置したまま今回の最高裁判決を迎えた事案については、非嫡出子は嫡出子と同じ相続分であることを主張できることになります。

 ですので、相続の法律関係が確定的な状態に至っているか否かを巡って争いが生じる、あるいは、遺産分割の合意等の対象として相続財産の一部が除外されている場合などには、相続の一部は処理され確定的な法律関係となっているが、残る部分については確定的なものとなっていないなどとして、非嫡出子が嫡出子と同様の相続分を主張して残部についてのみ争う、といったことも起こってくるのではないでしょうか。

 なお、本件は平成13年の相続事案なのですが、最高裁判決によれば、同じような相当古い相続事案であっても、遺産分割等により既に確定的な処理がなされていれば、本件以外の事案では規定の違憲を理由とする処理のやり直しはきかないのに、遺産分割等をせずにいた場合には規定が違憲であることを前提とした処理が許されるという点においては、不公平な事態が生じることになると思われます。最高裁はそのような不公平よりも過去の法律関係の法的安定性を優先し、不公平な事態の発生はやむを得ないとして容認しているものと考えられます。

 

 また、最高裁は、預金債権のような可分債権(分割可能な債権)に関して、

「相続の開始により法律上当然に法定相続分に応じて分割される可分債権又は可分債務については,・・・相続の開始により直ちに本件規定の定める相続分割合による分割がされたものとして法律関係が確定的なものとなったとみることは相当ではなく,その後の関係者間での裁判の終局,明示又は黙示の合意の成立等により上記規定を改めて適用する必要がない状態となったといえる場合に初めて,法律関係が確定的なものとなったとみるのが相当」としていますので、相続後の関係者間での裁判の終局、明示又は黙示の合意の成立等がない場合には、やはり非嫡出子は嫡出子と同様の相続分までの預金等の引き渡しを請求することが可能となります。

  

 以上のように、今回の最高裁判決の判断内容を踏まえると、本件以外の他の相続について違憲を前提とする紛争が今後も生じてくる余地は十分あるように思われます。

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最高裁で民法900条4号ただし書きに関する違憲判決が出されました

 正直、驚きました。昨日の民法900条4号但し書きに関する最高裁の違憲判決。判決の内容は最高裁のホームページをご覧下さい。

 違憲と判断されたのは予想通りですが、驚いたのは、遅くとも平成13年7月当時において憲法141項に違反しているとしながら、過去の確定的な法律関係には影響を及ぼさない!という判断をした部分ですね。私はこの点がどうなるかに注目しており、先日、過去の法律関係に影響を与える可能性があることを記事にしたところでしたが・・・。こちらの記事で触れていた論説が従来の判例学説に沿う比較的一般的な内容だったように思いますが、本件の最高裁判決はそう言ったものと一線を画す内容となっているといえるでしょう。

 過去の法律関係を覆すと法的安定性を著しく害するという価値判断は最高裁の判断でも明確に示されており、それは非常によく分かるのですが、法的な理屈らしいものが示されていないところに法律家としては違和感があります(補足意見には一定の理屈が記載されてますが、個人的には容易に理解しかねるところです。)。

 これはもう法の判断というよりも新たな立法というべきかもしれませんね。

 理屈はさておいてでも今後の法的安定性を優先したとも思える今回の判断は、最高裁にしかできない離れ技といえそうですが、私にとっては予想外でした。

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民法900条4号ただし書きの合憲性に関する最高裁の決定が9月4日に

 最高裁大法廷が、来る94日、結婚していない男女間に生まれた非嫡出子の相続分を、結婚している夫婦の子(嫡出子)の半分とする民法第9004号ただし書きの規定が、法の下の平等を定めた憲法第14条第1項に違反するかどうかが争われた裁判について、決定を下します。この規定を合憲とした従前の最高裁判例を見直し、違憲判断を示す可能性があります。

 

 さて、問題は、この規定を前提とした今までの判決、調停、協議その他の実務上の処理がどのような影響を受けるかという点です。この点について、以下の論説が参考になると思います。

http://www.j.u-tokyo.ac.jp/sl-lr/07/papers/v07part10(nakamura).pdf

 

この論説の内容が全て正しいということになるのかはともかく、少なくともこの論説の、1.当事者間の遺産分割調停ないし協議は事案により錯誤無効とされる余地があり、また2.相続財産中の可分債権(銀行の預金債権のような分割可能な債権)については消滅時効が完成しない限り当事者間での不当利得返還請求が認められる事態が生じる、という指摘については、十分に留意する必要があるのではないかと思われます。

 

 さて、そうなると、さらなる問題は、これまでに処理された相続税の取扱いです。違憲判決が出された場合、この点の検討も不可欠となると思われます。

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