遺言執行中に遺留分侵害額請求がされた場合 の遺言執行者の対応

 

民法改正により、遺留分減殺請求権が遺留分侵害額請求権となり、完全な金銭請求権となったことは皆さん既にご存じでしょうか?

さて、今回は、その関連で、遺言執行者の立場で、遺留分減殺請求が遺留分侵害額請求になったことによって受ける影響について、ご説明します。

 

具体的には、遺言者が亡くなり、遺言執行者が遺言を執行しているときに、ある相続人から他の相続人に遺留分侵害額請求がされた場合にどうなるのかという点に、改正の影響がでます。

 

というのは、改正前は、遺留分減殺請求権を行使すると、遺留分を侵害する遺贈等の効力が遺留分を侵害している限度で失われ、その部分の所有権等は遺留分減殺請求者に帰属することになっていました。

そのため、ある不動産を遺贈する遺言などについては、遺留分減殺請求がされると、遺言執行者が遺言を執行できなくなる部分が発生していました。

 

もっとも、具体的に遺贈等をされた遺産のどの程度の割合が遺留分侵害となっているのかは、相続人の特別受益の額がどの程度あるかなどの点によって変わり、遺留分減殺請求をする相続人(権利者)と、請求を受ける者(義務者)との間で協議、確定され、最終的には裁判官が判断する性質の事柄であるため、遺言執行者の立場では容易に判断できませんでした。

 

そのため、実務上は、遺言執行者が権利者と義務者の間の調整を図ってもなお合意に至らない場合は、遺言執行をいったん停止するか、遺言どおりに執行をしてしまうか(最終的には裁判等を通じて是正される場合もありますが。)、難しい選択を迫られていました(いったん停止するケースが多かったのではないかと思います。)。

 

さて、改正後はどうなったかというと、極めて単純な話になりました。

 

遺留分侵害額請求権は金銭債権となり、行使をされても遺産(の帰属、取得割合)には影響が出ないため、遺言執行者は遺言どおりに遺贈等の執行をすればよいということになったと考えられます。

 

もちろん、それとは別に、遺留分の権利者と義務者との間では、遺留分侵害額について協議、確定し、最終的には裁判官に判断してもらったうえで、義務者が権利者に対して遺留分侵害額の金銭を支払うことになりますが。

 

以上のとおり、遺言執行者の立場で、遺留分減殺請求が遺留分侵害額請求になったことによって受ける影響について、ご説明しました。

 

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