遺言で会社に対する株式などの遺贈を考えているひとは税金に注意を(1)

会社の代表者、オーナーが、重要な財産を同族会社に貸しているような場合(よくあるのは会社の本社ビルが建っている土地が個人所有になっているケースです。)などには、自分が亡くなったときに、遺言で会社へその財産を遺贈したいと考える場合もあるでしょう。

あるいは、保有している会社の株式について相続させる適切なひとが思い当たらない場合に、とりあえず保有株式(の一部)をその会社に遺贈しようとする場合もあるでしょう。

 

しかし、遺言で会社に対して財産を遺贈する場合には、意外な税金の負担が発生することがあるため、注意が必要です。

 

1.まず、会社に不動産など一般的な財産を遺贈する場合について、説明します。

 

ⅰ)会社の税負担について

遺贈により、会社は利益を受けることになるため、法人税等が課されることは当然です(例外的に、「持分の定めのない会社」の場合には、法人であるにもかかわらず相続税がかかることがあります。)。

 

ⅱ)故人の税負担について

次に、亡くなった故人については、遺贈により、その財産を時価相当額で(相続税評価額ではないためより高額になる場合があります)会社に譲渡したものとみなされ、取得時からの値上がり益がある場合には、その譲渡所得について所得税がかかることになります。

実際には相続人がその所得税の納税義務を承継することになるのですが、相続人は、相続開始を知った日から4か月以内に、準確定申告をして税金を納付する必要があるのです。

相続人は、被相続人の死後バタバタしている時期に、短期間で、場合によっては多額の納税をしなければならないわけです。

予め相続人が遺言の内容を知らなければ、あるいは予め納税資金の準備ができている場合でない限り、相続人にとっては大きな負担となるかもしれません。

 

ⅲ)他の株主の税負担について

さらに、場合によっては、会社の他の個人株主について、会社が遺贈を受けたことに伴い、自らの所有株式の価値も増えたことについて、亡くなった故人から贈与(遺贈)を受けたものとみなされ、相続税がかかることもあり得るのです。

 

次回に続きます。