もうすぐ配偶者居住権等の民法改正が施行されます。
これを機会に、民法の相続法の改正の施行状況を押さえておきましょう。
1.まずは、民法の相続法の改正の施行日の確認をしておきましょう。
原則的な施行日は、令和元年(2019年)7月1日となっており(自筆証書遺言の方式を緩和する方策については、2019年1月13日)、既に昨年中に施行されています。
他方で、配偶者居住権・配偶者短期居住権については今年(令和2年・2020年)4月1日、法務局における遺言書の保管等に関する法律は今年の7月10日が施行日となっており、いずれももうすぐ施行されることになります。
2.以上を前提として、次に、具体的にその案件、その場面において、改正後の民法の規定が適用されるのか、改正前の規定が適用されるのかをどのように判断したらよいかという点について、整理します。
原則的には、相続開始時を基準として、改正法は施行日後に開始した相続について適用されることになっているため、施行日前に開始した相続については、旧法が適用されることになります。
ですが、以下のとおり、例外や注意点が色々あります。
・配偶者の居住の権利については、(相続開始が施行日以後であっても)施行日前にされた配偶者居住権の遺贈は無効とされます。
(配偶者居住権を遺贈する遺言は、来月4月1日以降にする必要があります。)
・自筆証書遺言の方式緩和に関する新法の規定(第968条)は、施行日後に作成された遺言についてのみ適用されます。
(相続開始が施行日以後であっても、施行日前にされた遺言については適用されません。)
・遺産分割前の預貯金の払戻し制度については、相続開始が施行日前であっても、改正法が適用されます。
・夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する新法の規定(第903条第4項)は、施行日後に行われた贈与等についてのみ適用されます。
(相続開始が施行日以後であっても、施行日前にされた贈与等については適用されません。)
・権利の承継の対抗要件について受益相続人による通知を認める特例(第899条の2)は、施行日前に開始した相続について(施行日後に遺産分割により承継が行われる場合に)も、適用されます。
例外や注意点は色々とあって複雑ですが、基本的な考え方は押さえておきましょう。
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