戸籍の広域交付制度が3月から始まります(注意点を記載しました)

今年の3月からは、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになります(これを広域交付といいます)。

ほしい戸籍の本籍地が全国各地にあっても、1か所の市区町村の窓口でまとめて請求できるようになるわけです。

以前はこれができず、本籍地ごとに手続きをする必要がありましたので、便利になったことは確実でしょう。

 

もっとも、例えば、相続手続きの前提として亡くなった方の出生から死亡までの戸籍一式などが必要となる場合、窓口となる役所から本籍地の役所への問合せなどが必要となり、その場では交付してもらえない場合もあるようです。

 

また、そもそも、役所の窓口では、誰が法定相続人であるかといった判断、どこまでの戸籍を取りつける必要があるかといった判断までしてくれるわけではありません。

(事実上助言をしてもらえることはあるかもしれませんが、責任を持って職務として行ってくれるわけではありません。)

従来どおり、専門家の助言を受けることが必要となるケースも多いでしょう。

 

また、広域交付制度でとれるのは、本人、配偶者、父母・祖父母など(直系尊属)、子・孫など(直系卑属)の戸籍証明書等となっており、兄弟姉妹などの戸籍は対象外ですので、要注意です。

そうすると、「相続人に兄弟姉妹が含まれる場合」には、事案にもよりますが、従来どおり、専門家に兄弟姉妹のそれぞれの本籍地ごとに手続きをして戸籍の取付をしてもらう必要があるということになるでしょう。

故人に子も直系尊属(父母、祖父母等)もおらず、兄弟姉妹(死亡している場合にはその子供、故人からすれば甥姪を含む。)が生存している場合が、「相続人に兄弟姉妹が含まれる場合」になります。

 

さらに、請求する人は、本人が市区町村の戸籍担当窓口に直接出向いて請求する必要があり(郵送)、代理人による請求はできません。

そのため、弁護士などの専門家は代理でこの制度を利用することができず、従来どおり本籍地の役所ごとに手続きをする必要があります。

 

その結果、相続の案件を弁護士に依頼する場合でも、スピードだけ見れば、まずは相続人が自分で最寄りの役所で可能な範囲の戸籍一式を取り付けて、それを弁護士に交付し、それでは不足が生じる部分を弁護士に追加で取ってもらうのが一番早いというケースが多くなるでしょう。

もっとも時間の余裕が多少あるのであれば、面倒なことは全て専門家に任せたい、専門家に任せた方が確実だという考えもあるでしょうから、最初から弁護士に自分以外の戸籍は全て取付を任せるという選択ももちろんあるでしょう。

戸籍取付の進め方については、弁護士と相談の上で決定するとよいでしょう。

 

将来的には、窓口一つで申請すれば、相続手続きに必要となる戸籍一式の取付から、法定相続人の確定~法定相続情報証明書(法務局にて発行)の取付までの一連の作業が可能になれば、大変便利だろうとは思いますが、役所も違いますし、そこまで実現するのはまだまだ先かもしれません。

まずは今回の戸籍の広域交付制度が国民の利便性向上につながっていることが実際に確認されれば、今後も期待できるかもしれませんね。