相続法制の改正〜自筆遺言証書の保管制度がつくられました

今回の民法の相続法改正を期に、自筆証書遺言を法務局に保管する制度が開始されます。

平成30年7月6日、法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立し(同年7月13日公布)、施行日は令和2年7月10日と定められました。

 

施行前は、自筆証書遺言は、遺言書本人や親族が保管するか、弁護士などに預ける必要があり、公正証書遺言のように公証役場で保管してもらえないため、自筆証書遺言については紛失、隠匿あるいは死後に気付かれないままになるなどの問題がありましたが、施行後は、自筆証書遺言を法務局に保管してもらえるようになり、遺言書の紛失や隠匿等の防止になり、また遺言書の存在の把握が容易になります。

 

遺言書の保管制度の概要は、以下のとおりです。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

 

・遺言者は、法務局(遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局)に、自筆遺言書(封をしていないものに限る。)の保管を申請することができます。

 

・法務局は、その遺言書が民法が定める方式に適合しているかを外形的に確認し、また、遺言書は画像情報化して保存し、他の法務局からアクセスできるようにします。

 

・遺言者は、遺言書を保管している法務局に対し、遺言書の返還又は閲覧を請求することができます。なお、遺言者の生存中は、遺言者以外の人は、遺言書の閲覧等を行うことはできません。

 

・これらの申請及び請求は、遺言者が自ら法務局に出頭して行わなければなりません。

 

・遺言者の死後は、誰でも、自己(請求者)が相続人、受遺者等となっている遺言書(関係遺言書)が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求することができます。

 

・遺言者の相続人、受遺者等は,遺言者の死亡後、遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求や遺言書原本の閲覧請求をすることができます。

 

・法務局は、これらの閲覧や書面の交付をしたときは、遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者に対して、遺言書を保管している旨を通知しなければなりません。

 

・法務局に保管されている遺言書については、裁判所の検認が必要とされません。

 

なお、施行日前には、法務局に対して遺言書の保管を申請することはできませんので、ご注意ください。

 

自筆証書遺言については、死後に家庭裁判所で行う「検認」の手続き(裁判所で遺言書の状況、内容等を確認する手続きです。)が必要ですが、法務局に保管する場合にはこの「検認」が不要になる点は実務上大きなメリットです。

 

しかも、法務局で、故人が死後に自筆の遺言書を残してないか相続人が検索することが可能となります。

 

公正証書遺言の長所(公証役場に保管してもらえる、検認手続きが不要、死後は相続人が検索可能など)を一部取り入れた制度ともいえるでしょう。

 

自筆証書遺言には、作成自体の費用や証人が不要という利点がありましたが、他方で、紛失してしまったり、死後に見つけられず、あるいは破棄されてしまうなどのおそれがありました。

 

今回の改正でこれらの欠点がだいぶ改善されることになると思われます。

 

 もちろん、自筆遺言証書については、本人が自筆するものであるため、無効なもの、法的には意味がよく分からないもの、内容がきちんと特定されていないものになりやすい、という根本的なリスクがあることに変わりありませんが、自筆遺言制度の使い勝手は大きく増すことになるでしょう。

 

 

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