前回からの流れで、相続放棄の効力を後から争うことができるのかどうかについて説明します。
この点については、相続の放棄に法律上無効原因がある場合には、後日訴訟においてこれを主張することは妨げられないとの判断をした最高裁判例(昭和29年12月24日)があり、争うことができるという結論になります。
したがって、相続放棄の申述が家庭裁判所に受理されたとしても、それで完全に安心できる(相続放棄が絶対的に有効となる)わけではないということになります。
そもそも、相続放棄の申請に対して家庭裁判所では申述を受理する旨の審判をしますが、この審判は申述がなされたという事実を公証しているにすぎず、家庭裁判所ではあまり厳格な要件の審査はできないため、厳密にいえば相続放棄の要件を満たしていないのに受理されてしまっている場合もありますし、相続放棄の申述は有効に受理されたものの、その後の行為が原因で相続放棄が無効となっている場合もあり得ます。
次に、第三者が相続放棄の効力を争うための手続きについて、ご説明します。
まず、相続放棄の申述が受理されたことについて、第三者が相続放棄の申述を受理した家庭裁判所に対して直接、不服申立て(抗告)をすることはできません。
ではどうするかというと、たとえば、被相続人に対してお金を貸していた債権者は、相続放棄の申述をした者に対して、(相続放棄は法律上無効であることを前提に)貸付金の返還義務を相続しているとして、貸金返還請求訴訟を起こすことになります。
この場合、この裁判の中で相続放棄の有効性について争われることになり、裁判官が最終的に有効性を判断することになります。
それでは最後に、相続の放棄に法律上無効原因がある場合というのはどのような場合かという点について、ご説明します。
まずは、前回にふれた法定単純承認の事由がある場合です。
相続放棄の申述は家庭裁判所で受理されているものの、実際には申述者が相続放棄「前」に相続財産を「処分」していた場合(民法第921条1号。家庭裁判所が当該事実を把握していなかった場合)とか、相続放棄の申述が受理された「後」であっても(受理される前はもちろんのこと)、相続財産を「隠匿」し、あるいは「自分のために消費」していたような場合(民法第921条1号)には、相続を承認したものとみなされ、相続放棄について法律上の無効原因があると主張することができます。
その他にも、相続放棄が熟慮期間内になされていないとか、真意でなされたものではなかったという場合にも、相続放棄について法律上無効となる場合があり得ます。
以上、相続放棄について後から効力を争うことができるのかどうかなどについて、ご説明しました。
お分かり頂けたでしょうか?
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