遺産分割後の遺留分侵害額請求の可否について

 

前回、遺留分侵害額は、実際にどのように遺産分割をするかには関係なく、また遺産分割協議が成立する前か後かにも関係なく計算されることになり、遺留分侵害額請求は、基本的に遺産分割の影響を受けないことについて、説明しました。

 

もっとも、共同相続人が遺産分割協議を成立させた場合、その後に改めて遺留分侵害額請求をすることはそもそも認められるのか?という点に疑問を持たれる方がおられると思いますので、今回はこの点について書きます。

 

この点についてインターネット上で検索してみると、否定的な意見も見られるかと思います。

 

たしかに、相続人らが、取得額が遺留分以下となる相続人が、一部の相続人に対する多額の生前贈与(特別受益)があることを認識しつつ(※特別受益を持ち戻して具体的相続分を算定したうえで遺産分割協議を成立させたようなときには、その認識があったと考えられるかもしれません。)、遺産分割とは別に遺留分侵害額の請求をすることもなかった場合には、他の相続人の立場からするとこれで相続に関する一切の紛争、協議は全て終了したという認識、期待を持つことでしょう(遺産分割の内容によると思われますが。)。

 

この点、遺産分割協議書などに、相続人間に(相続に関して)一切の債権債務がないことや、相続・遺産に関する紛争が全て終了したことを確認する「清算条項」が入っているようなケースでは、当然、その後の遺留分侵害額請求もできなくなっていると考えるべきでしょう。

(また、相続人間にこれで相続・遺産に関する紛争が全て終了したものとするという暗黙の合意が成立したと認定できるケースも同様でしょう。立証の問題はありますが。)

 

もっとも、これらのケースに該当しないのであれば、遺産分割後の遺留分侵害額請求を否定的に考える法律上の根拠は見当たらないでしょう。

 

したがって、遺産分割の際に遺留分侵害額請求権を放棄したといえるような事情(清算条項はその最たるものでしょう)がないのであれば、遺留分侵害請求は遺産分割後でも可能、と考えざるを得ないでしょう。

 

とはいうものの、遺留分を侵害されている相続人が、遺留分侵害額請求の意図を明確にしないまま、遺産分割協議だけを先行して成立させることについては、新たな紛争の元となるおそれがあり、できるだけ避けた方がよいと思いますので、皆さん、この点には気をつけてください!

 

※以上は、令和元年7月1日以降に発生した相続について、記載しています。

 

遺留分について相談があるかたはクーリエ法律事務所までどうぞ!