記帳や帳簿・書類の保存をしていなかったら重加算税がかけられてしまうのか??

個人事業者の皆さん、記帳や帳簿書類の保存、きちんとしていますか?

今年の平成26年1月から、事業所得、不動産所得又は山林所得が生じる業務をしている全ての方(白色申告者を含む)に、記帳と帳簿書類の保存義務を負わせる改正の適用が始まっています。
 これまで記帳・帳簿書類保存の義務があるのは、青色申告者と、白色申告者のうち前年分あるいは前々年分の事業所得等の金額の合計額が300万円を超えた人でした。記帳・保存制度の内容は、国税庁の「個人で事業を行っている方の帳簿の記載・記録の保存について」をご覧ください。

 

記帳は正式な複式簿記ではなく「簡易な方法」によるものであってもよいとされておりますが、正式な帳簿は原則7年、それ以外の書類は5年の保存義務があるとされています。  

所得税の申告の必要がない場合であっても、これらの義務がありますので、この点お間違えないように。また、消費税について、仕入れの消費税を控除して税額を計算する「仕入税額控除」の適用を受けるために、もともと帳簿と請求書等を保存している方も多かったとは思いますが、今年からは、所得金額の大小や、消費税の仕入税額控除の適用を受けるか否かにかかわらず、事業者は記帳・帳簿書類保存をしておかなければならないということになります。

 

今回の改正の影響について一言。

 

まず、今回の改正にともなって、これらの義務違反自体について新たに罰則がもうけられたわけではありませんので、改正後も刑事罰を受けるおそれはありません(もちろん、悪質な場合に、その点も考慮され、不正な行為により税金を免れたとして脱税事件になる場合はあるでしょうが)。

 

しかし、今回の改正で、事業者は個人であっても所得金額の大小にかかわらず記帳や帳簿書類保存の義務があるという建前が強固なものになったわけで、今後、これらの義務を果たしていなかった場合に、従来よりも悪く評価される可能性があるのかもしれません。

例えば、事実関係を仮装又は隠ぺいすることによって税金を納めていなかった人には、本来の税金に加算して重加算税という重い税金が課されることがありますが、平成26年以降は、記帳や帳簿書類保存の義務を果たしていなかったことが隠ぺいに当たる可能性が一層強くなっていることを示唆する学者さんが実際にいらっしゃいます。

今後、重加算税について、はたして本当にそういった判断をする裁判例が増えてくるのかはまだ分かりませんが、重加算税の処分を争う立場の弁護士としては気になるところです。

 

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