現在、普及してきている電動キックボードは主に、道交法において「特定小型原動機付自転車」(最高速度時速20km、歩道では時速6km、16歳以上)に該当することとなります。
その他に、車道のみ走行可能な一般原動機付自転車(最高速度は1種で時速30km、要免許、要ヘルメット~いわゆる「原付バイク」のことです。)に該当する電動キックボードもあります。
さて、ときどき電動キックボードの逆走について危険であると話題になっています。
もちろん電動キックボードでも逆走は基本的には道交法違反であり、許されていません。
ただし、例外的に「自転車」「軽車両」ですので、一方通行の標識に「自転車を除く」「軽車両を除く」とある場合は、一方通行道路でも逆走可能です。こういった標識はよく見かけます。
ところが、例外に例外があり、自転車を除くと記載されていても、「特定原付は通行不可」と併記されている場合があるようで、その場合には、特定小型原動機付自転車に該当する電動キックボードでは、やはり逆走ができません。
ややこしいですね。
今後、電動キックボードが関係する交通事故の増加が予想されます。
交通事故の損害賠償請求に関するご相談はクーリエ法律事務所までどうぞ!
損害保険会社によって交通事故の弁護士費用特約の内容が違っていることを皆さんご存じでしょうか。
特約が使える場面や弁護士に支払われる金額などに違いが見えます。
この点について、こちらのHPで記事を書きましたので、クリックしてごらんください!
後ろからゼブラゾーンを走行してきた車と衝突した事故(上の図の右のケース)の過失割合について、ゼブラゾーン走行車側の過失が低すぎるのではないかと疑問に思いましたので、以下のHPに記事を書きましたので、ご覧ください。
https://jiko.osaka-lawyer.net/zebrazonejiko/
12/1から道交法改正が実施され、ブレーキのついていない自転車での走行に対して停止、応急措置、運転中止の命令が可能となり、命令に反すると5万円以下の罰金が課されることになった他、自転車が通行できる路側帯は、道路の左側部分に設けられた路側帯に限ることとなり、路側帯の右側通行(逆走)をした場合は、通行区分違反として3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金が処せられることとなりました。報道でご存じの方も多いことだと思います。
いくつかの点を整理しておきます。
来る9月21日(土)から30日(月)まで秋の全国交通安全運動が実施されます。
さて、以前の記事で自転車故の恐さについて少し触れていたところですが、今年7月4日、自転車と歩行者との衝突事故に関する裁判で、神戸地裁が、自転車を運転していた小学校5年生の少年の母親に約9500万円の賠償金の支払いを命じたことが報じられ、高額賠償であることや、子供の自転車事故をきっかけに自己破産の危険性があることが最近話題になっており、ご存じの方も多いと思います。
そもそも、自転車は法令上も立派な車両で、損害賠償という点では基本的に自転車事故を自動車事故と区別して扱う必要はありませんし、頭蓋骨を骨折した被害者の女性の意識が戻らず、介護を要する状態になっており、一般的に介護を要する方への賠償額は死亡された方への賠償額よりも高額であることなどからすると、高額賠償であることにはさほど違和感はありません。今回の事故や判決については、たまたま報道の対象となっただけで、実際にはこれまでもこのような事例は少なからずあったのではないかと思われます。
自転車事故が生じる原因には、もちろん我が国の法制度や道路状況等にもありますが、直接的には、自転車の危険性や自転車事故の重大性を理解していない運転者(及び運転者に対する指導)にあるといわざるを得ません。
私が働く大阪市内でも、平地が多いためか、暴走ともいえる大変危険な走行を毎日目にしており、事故が起きないかと日常的に危険を感じているところです。事故が起きた場合には、とても不注意では済まされないような暴走(速度が異常に速い、人のすぐ側を速度も落とさずに突っ走る、携帯等をしながらの片手運転等)がいかに多いことか。しかも大人達がそのような危険な運転をしているのが実情です。
自転車事故では、被害に遭うのが高齢の方であることが多く、それほどの衝撃でなくとも骨折に至り、事故が原因で寝たきり(さらには痴呆状態)になってしまうことも稀ではないため、たかが自転車の運転などと思わないで、重大な結果が生じる可能性があることを認識してもっと慎重に運転する必要があると思います。国民にそういった意識を持ってもらうための仕組み・教育が一層求められるところではないでしょうか。
また、自転車事故の損害賠償における問題として、自転車事故の場合、加害者側に損害賠償責任保険があることが少なく、加害者あるいはその親が高額の損害賠償金が支払えないため、最終的に被害者が判決で確定した損害額の賠償を受けられないことが多い、という点にあります。自転車保険や個人賠償責任保険などは、一般的に保険料がそれほど高いものではないので、是非加入すべきものだと考えます。ちなみに、私が以前から加入している個人賠償責任保険の内容を改めて確認したところ、月額120円の保険料で、家族の日常生活での自転車事故について無制限(国外1億円)の賠償責任が補償されるという大変リーズナブルなものとなっていました。自分や家族が自転車に乗る方は是非保険に加入して下さい。
なお、私は、誓って、保険会社の回し者ではありません(念のため。)!
さて、国も自転車事故については問題意識を強く持っており、色々と対策を検討しているようですが、今回の裁判の結果も踏まえて、早急に法制度、道路整備、取締り、交通教育、大々的な自転車事故防止(「撲滅」といいたいところですが。)キャンペーン等を行い、自転車事故が起こりにくい仕組みを整備すると共に、自転車を運転する国民の意識を高めていく必要があると思います。
今回の全国交通安全運動では、自転車運転者への指導にも注力して頂きたいですね。
前回に引き続き、自賠法の話です。
前回の2.の「自賠責保険」については、自動車を持っておられる方には馴染みがあると思いますが、人身事故について前回の1.の運行供用者責任を定めただけでは実際の被害者救済に不十分であるため、自賠法は、その実効性を持たせるために、車の保有者(自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自分のために自動車を運行に使用する者をいいます。)は自賠責保険を付けなければその車を運行に使用してはならないこととし、この自賠責保険によって一定の被害者救済を図ることとしたわけです。
もっとも、自賠責保険の賠償限度額は、一事故当たり一被害者につき、死亡の場合は3000万円・後遺障害の場合は3000~4000万円(後遺障害の等級等によって75万円から4000万円までと大きな幅があります。)・傷害の場合は120万円となっており、一般的には必ずしも十分な金額とはいえません(その他の自賠責保険の概要は、国交省のHPをご覧ください。)
そこで、実際の事故で被害者がこの自賠責保険を使用して損害賠償を受けようとする場合には、その被害者が何個の自賠責保険から損害賠償を受けられるかを考える必要があります。複数の車両による多重事故については、「2自賠」「3自賠」と、複数の自賠責保険が重ねて使用できる場合があり、その場合には、自賠責保険の賠償限度額も2倍、3倍となるわけですから、自賠責保険だけでより多額の損害賠償が受けられる可能性があります。たとえば、車2台の衝突事故であっても、被害者が一方の車の同乗者で、双方の車両の保有者に運行供用者責任があるような例では、その被害者は双方の車両の自賠責保険が使用できますから、死亡の場合は6000万円・後遺障害の場合は8000万円・傷害の場合は240万円が損害賠償を受けられる限度額となります。
さて、前回の3.の政府の自賠保障事業(政府保障事業)については、あまり一般の方には知られていない制度かもしれません。政府保障事業については、自賠法72条で規定されており、自動車による人身事故が生じた場合に、事故を起こした自動車の保有者が明らかでないとき(ひき逃げされた場合などです。)や、運行供用者責任を負う者が自賠責保険に加入していないとき(なお、自賠責保険を付けずに車を運行に使用することは罰則の対象にもなっています。)は、被害者の請求によって、政府が一定金額の限度でその損害をてん補してくれるというものです。
政府保障事業は、上記のように被害者が自賠責保険で損害賠償を受けることができないような場合に、政府が運行供用者に代わって被害者に一定の範囲で損害の補償をしてくれるという被害者にとっては非常にありがたい制度ですが、支払いまでにかなり時間を要する場合もあるようです。
以上で、自賠法の骨子についての説明を終わりたいと思います。
自賠(じばい)といえば、まず自賠責保険を思い浮かべる方が多いでしょうか。その自賠責保険制度などについて定めているのが自動車損害賠償保障法(以下では「自賠法」といいます。)です。
この自賠法は「自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする」もので(自賠法1条)、重要なポイントを簡単にいえば、
1.自動車事故による損害の賠償責任として、民法第709条710条の不法行為責任とは別に「自動車損害賠償責任」(一般に「運行供用者責任」と言われています。)を定めたこと
2.強制加入の保険として自賠責保険制度を創設したこと
3.政府の「自賠保障事業」を設けたこと
の3点にあるといえます。
まず、上記の1.ですが、自賠法3条は、本文で「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」とし、但し書きで「ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。」と規定しています。
一般的な民法第709条710条の不法行為責任による場合は、被害者側がその交通事故について加害者の故意又は過失などを主張立証する責任を負い、これができなければ、被害者は加害者に対して損害賠償責任を追求することができないのですが、自賠法3条の運行供用者責任の場合は、自分のために自動車を運行に供する者(一般に「運行供用者」と言われており、「運転者」以外の者でもこれに当たる場合があります。)は、その運行によって人身事故が発生した場合の人身損害については、但し書きで定められているような極めて例外的な場合に当たることを自らが立証しない限り、被害者に対する賠償責任を負うことになりますので、運行供用者は原則的に損害賠償責任を負うこととなります。
そのため、人身損害の賠償が問題となっている事案では、裁判になっても、運行供用者である被告が「被告に損害賠償責任がある」という点については特に争わず、不要な争いを避けられることが多いと思われます(被告が、損害賠償責任を負うことを前提としつつ「過失相殺」を主張することは多いですが。)。
ところで、運行供用者責任は、物損事故による損害についての賠償責任ではなく、あくまで人身事故による損害についての賠償責任であることには注意してください。物損事故による損害については、民法第709条の不法行為責任を追求して、加害者側から損害賠償を受ける必要があります。
他方で、被害者の人身損害について運行供用者が賠償責任を負う範囲は、上記の2.の自賠責保険の限度額にとどまるものではないことにも注意してください。たとえば、傷害についていえば、被害者は120万円の自賠責保険の限度額を超える部分の傷害による損害についても、運行供用者に対して賠償責任を追求することができるわけです。
以上のように、自賠法の運行供用者責任は、被害者救済という点では非常に重要なものであると思います。
上記の2.3.については、次の機会にふれたいと思います。
交通事故の損害賠償(保険金支払い)の場面で時々問題となることですが、事故の怪我で治療を受ける被害者が「交通事故による怪我には健康保険は使えないと病院で言われたので、健康保険を使わずに治療を受けている」という話が出ることがあります。
通常の交通事故(業務中・通勤中の交通事故で労災保険が使えるような交通事故は除きます。)の怪我の治療に健康保険が使えないというような法令上の規制はないと言って良いと思いますが、上のような話になるのは、保険診療に比べて自由診療の方が単価が高くて治療内容にも制限がなく、また交通事故の加害者側の保険(自賠責保険及び任意保険)があるため、診療費がある程度高額となっても基本的にはその保険で支払われる可能性が高いことから、その病院が交通事故による怪我の治療は自由診療とする経営方針をとっていることによるものです。
自由診療で治療を受けると治療費、ひいては損害額の総額が増えることになりますので、加害者側の負担(賠償額・保険金額)が増えることは勿論なのですが、被害者側としても、被害者に過失があるとして過失相殺の適用を受ける可能性がある場合には、自由診療の治療費のうち被害者の過失に対応する分は加害者側から賠償が受けられず、被害者の自己負担となってしまうおそれがあることや、自賠責保険金の枠(通常の怪我では最高120万円までです。)を治療費で早々に使いきってしまい、被害者が治療費以外の損害について自賠責保険を使用(被害者請求)して保険金の支払いを受けることができなくなる場合があることなどに気をつけなければなりません。
感情的に「事故の被害者なのになぜ自分の保険を使わないといけないのか」と仰る被害者の方もおられると思いますが、特に過失相殺の適用を受ける可能性があると見込まれる場合(被害者の過失割合が高い場合や治療費が非常に高額に上る可能性が高い場合はなおさらです。)には、以後の加害者側の保険会社との交渉のことも考えて、既に自由診療で治療を受けている場合であっても健康保険への切り替えを考えたほうが良い(損害額の総額は抑えられることになったとしても、最終的に被害者自身が賠償を受ける金額が増える結果となる)場面が多いのではないかと思います。
みなさんもご承知かとは思いますが、自転車は道路交通法上は「軽車両」に該当し、様々な交通ルールに従って運転する必要があります。
街中では、老若男女を問わず危険な運転が目につくところですが、一旦自転車事故が起きれば、自転車事故による被害でも相当重症化することもありますし、自転車事故が補填対象となる損害保険に加害者が加入していない例が多く、賠償問題がこじれるケースもありますので、社会を挙げて真剣に事故防止に取り組む必要があると思います。
自転車事故には、自転車と歩行者、自転車と自転車、自転車と自動車などの形態がありますが、高齢者の増加や日本の道路事情もあって、現在は自転車事故の発生可能性が非常に高い状況になっていると思われますので、加害者にも被害者にもならないように十分に気をつける必要があります。
以下の点は、法令上の交通ルールで、事故防止の観点からも十分意識しておく必要があると思われます。仮に事故が発生した時、これらのルールを守っていない場合は、被害者であれば過失相殺の対象となって賠償額が減額される可能性があり、加害者であれば過失がある(あるいは過失割合が高い)と判断される可能性が高いと思いますので、留意していただきたいと思います。