金融円滑化法がもうすぐ終了します。

 「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(以下「円滑化法」といいます。)の適用が今年の3月31日まで延長されていましたが、ついに来月末で最終期限が到来し、円滑化法は失効することになります。

 さて、円滑化法は、当時の亀井静香大臣が強力に推し進めて作られた法律で、昨今の経済・金融情勢や雇用環境を考慮して、中小企業者と住宅ローンの借手に対する金融の円滑化を図るために、金融機関に対して、できる限り、柔軟に中小企業者に対する貸付け(信用供与)を行い、また中小企業者や住宅ローンの借手からの申出があれば、貸付条件の変更等の負担軽減のための適切な措置を取るよう務める対応をするよう、努力義務を課したものです。

 ただし、努力義務といっても、円滑化法は、金融機関に対して、そのための方針策定、体制整備及びそれらの開示を義務付け、また対応の実施状況について行政庁への報告を義務付け(約半年に一回実施状況の概要は公表されることにもなります。)、虚偽報告等に対しては1年以下の懲役又は300万円以下の罰金の罰則まで設け、また行政庁の金融機関に対する監督及び検査の際にも円滑化法の趣旨を尊重しなければならないこととしております。実際、金融庁の定める「金融検査マニュアル」や「監督指針」は改定され、各金融機関が円滑化法を守っているかについて、金融庁や財務局が定期的(監督)又は不定期(検査)に実際にチェックしています。

 このような円滑化法の規定・制度の下で金融機関が実際にこれらの対応に取り組んだ結果、多くの金融機関の貸付けについて、期限延長等の措置が取られているのではないかと思われ、円滑化法が失効した後、円滑化法のもとで定められた返済条件に従って返済を履行できなくなった借手がどんどん破綻し、倒産件数が一気に増加するのではないかと言われているようです。

 結局のところ、円滑化法は基盤の弱い中小企業者等の倒産を先延ばしにしただけだったという評価もあるかもしれませんが、仮に円滑化法が本来の最終目的を達しなかったとすれば、むしろ円滑化法の期限内に景気を上向きにすることができなかったことによるものではないかと思われます。

 個人的には、今回の円滑化法は、金融機関の(信用)リスク管理よりも、金融機関の持つ金融仲介機能(金融機関は、預金者から預金を集め、それを原資として、資金を必要としている人に融資することによって、仲介機能を果たしているという意味です。)により着目したものという点において、独自の存在意義を持った法律ではなかったかと思っています。