競馬所得に関する後続の別件の判決! 東京地裁H27.5.14

本日は、東京地方裁判所平成27年5月14日判決のご紹介です。


さて、「当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得か雑所得か」、「外れ馬券の購入代金が必要経費に該当するか否か」が刑事事件及び民事事件で問題となり、最高裁が刑事事件についてH27.3.10に判決を出したのは、記憶に新しいところだと思います。今回の東京地裁の判決もこの最高裁の事案と争点はほぼ同じですが、全く別の当事者の事案に関するものです。

先例である最高裁H27.3.10判決は、馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定等に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして、当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げるなどしていた本件事実関係の下では、払戻金は所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たり、外れ馬券の購入代金は,雑所得である当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができる、などと判断をしていました。

今回の東京地裁の判決は、この最高裁の事案と争点こそほぼ同じですが、要約すると以下のとおり認定、判断しており、結論も棄却(納税者の主張が認められない)、と最高裁の事案とは異なった結果となっている点が注目されます。

 

(東京地裁の判決の骨子)

  • 原告は、数年間にわたり、各節当たり数百万円から数千万円の馬券を継続的に購入していたところ、多いときには1億円を超えており、平成17年から平成22年までの総額は約72億円、払戻金の総額は約78億円、総額5億円超の利益を得ていた。
  • 原告は具体的な馬券の購入を裏付ける資料を保存していないため、原告が陳述する方法で馬券を購入していたかについては、客観的な証拠がなく、認めることができない。
  • 原告の主張によれば、原告はコンピュータソフトを使用して自動的に馬券を購入していたわけではなく、規模の点を別にすれば、その馬券購入態様は、一般的な競馬愛好家による馬券購入の態様と質的に大きな差があるものとは認められない。
  • 競馬は公営賭博で、そもそも馬券購入は営利を目的とする行為とはなり難い性質のものであるところ、原告が数年間にわたって各節に継続して相当多額の馬券を購入し、結果的に多額の利益を得ていたことのみをもって直ちに、本件競馬所得が営利を目的とする継続的行為から生じた所得(※雑所得)に該当するものと認めることはできない。
  • 以上のとおりであるか、本件競馬所得は、一時所得に該当する。

 

 

予想されていたことではありますが、競馬所得の事件については、事案の事実関係によってやはり結論が大きく異なってくるということがいえるでしょう。また、かえって最高裁H27.3.10判決の事案は非常に特殊な事件であったこともよく分かると思います。