「説明不足理由に課税を取り消し」東京国税不服審判所の裁決

東京国税不服審判所(平成26年11月18日裁決)が、相続財産の申告漏れを指摘して国税局が行った課税について、「課税理由を説明しておらず、違法だとして、約2億5千万円の追徴課税を取り消していたことが分かった」、「説明不足が原因で課税が取り消されるのは極めて異例だ」との新聞報道が先月あったのですが、皆さんご承知でしょうか。

課税理由の説明については、(1)不利益処分をする際に納税者にその理由を書面にて提示しなければならないという「理由付記」(なお、平成23年の国税通則法改正によって不利益処分一般に理由付記が求められるようになりました。)と、(2)調査の終了時に、調査の担当者は、更正決定等をすべきと認める場合には、納税者に調査結果の内容(金額及びその理由)を説明しなければならないという「調査結果の内容説明」(平成23年の国税通則法改正によって新設された国税通則法74条の11・2項)、の2つの制度があります。

前者の「理由付記」については、書面でなされ、裁判実務上、これを欠くと違法な処分として取り消されることとなっておりました。実際、これまでに理由付記を欠いた処分が取り消された裁判例、裁決例はいくつかあります。

他方、後者の「調査結果の内容説明」については、必ずしも書面でなされるとは限らず、むしろ税務署側は原則として口頭での説明としており、また、これを欠いた場合に裁判で処分が違法として取り消されるのか、それとも単なる手続的違法であって処分が取り消されることはないとされるのか、あるいはごく例外的な場合に限って処分が取り消されることになるのか、がまだ明確ではないという状況にあると思われます。なお、この点については、以前「税務調査終了時の調査結果の内容の説明が不足だったら処分は違法になるのか?」という関連記事を書いております。

 

詳しい内容は裁決の内容を見れていないのでよく分かりませんし、今回の報道では、この事案が上記の「理由付記」が問題となったものなのか、「調査結果の内容説明」も問題となったものなのかなどが必ずしも明確ではないですが、いずれにせよ、今回の裁決で課税の処分が取り消されたとしても、国税局は再度理由を説明した上で改めて課税の処分を打ち直せば良いということになってしまうのではないかと考えられます。

結局のところ、この裁決は、上記のような国税通則法の平成23年改正の趣旨を踏まえて、審判所が課税の現場に向けて改めて警鐘を鳴らしたところに意味があるのではないかと思います。