限定承認、本当にしますか? まずは法律と税金の専門家にご相談を。

親は財産をある程度残してくれているけど、財産を上回る借金があるかもしれないとか、多額の保証債務があるが将来支払いを請求されるかどうかは分からないというような場合なら、限定承認をすれば良い、そんなアドバイスを聞いたことはありませんか?

もちろん、まちがったアドバイスというわけではありますが、実際に限定承認するかどうかは一度よく考えてからの方が良いかもしれません。限定承認には注意すべき点がいくつもあり、一般の方がイメージする手続きと異なっていたり、専門家の手助けなしに実行するのが簡単ではない場合があるからです。

 

以下は、代表的な注意点です。

  • そもそも共同相続人全員の共同でないと限定承認の申請はできません。
  • 限定承認は、熟慮期間内(相続の開始があったことを知った時から3か月以内、期間の伸長は可能)に財産目録を提出して申出をしなければなりません。
  • 債権者等には相続財産から(債権額の割合に応じて)弁済をしなければならず、本来ならば弁済期がまだ先の債権についても弁済をしなければならなくなります。なお、条件付きや存続期間の不確定な債権については裁判所の専任した鑑定人の評価額によります。
  • 弁済のために相続財産を売却する必要がある場合には原則として競売手続きをしなければなりません(裁判所の選任した鑑定人の評価額を支払えば競売を避けることはできます)!
  • 債権者への誤った弁済などによって相続財産が不足することになり、他の債権者等に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負います!
  • 限定承認の場合には、所得税法上、被相続人が相続人に対して遺産を譲渡したものとみなされることになっており、(譲渡)所得税がかかります!親族間の譲渡であるため、居住用財産を売却した場合の特別控除(3000万円控除)軽減税率の特例も使えません。なお、結果として相続した財産(資産・負債の合計)がプラスになるのであれば、相続税が発生することになります。上記の所得税の納付義務は、相続税の計算上、債務として相続財産の額から控除ができます。
  • 上記の所得税は、亡くなった被相続人の税金であり、相続人は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をして納付をしなければならないことになっています。通常、死後はとてもバタバタしているものですが、速やかに税理士と相談を開始する必要があることになります!
  •    しかも、相続の承認又は放棄の期間(原則相続の開始があったことを知った時から3ヵ月)を伸長したとしても、所得税の準確定申告の期限に変更はありません。

 

以上のように、限定承認はおいそれと利用をすすめられる制度ではありませんので、皆さん、限定承認を利用するかどうかは、法律・税金の専門家に相談の上で、よく検討しから判断してください。

 

さて、自分では最後まできちんと限定承認の手続きをする自信はないけれど、やはり限定承認をしたいので、専門家に協力してほしいという方は、こちらからご連絡をどうぞ。